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漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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「 月別アーカイブ:2014年03月 」 一覧

第165夜 かつてこの国が経験した、凄絶な季節に…『夏のあらし!』

「それでも/夏の間だけでも/生きて再びこの世界に居られることを感謝したいわ/だから精一杯/楽しく生きるわ/命短し/恋せよ乙女/紅き唇/褪せぬ間に…ってね/生きてるあなたは/恋をしなよ!」


夏のあらし! 1 (ガンガンWINGコミックス)

夏のあらし!小林尽 作、スクウェア・エニックス『月刊ガンガンウイング』→『月刊ガンガンJOKER』掲載(2006年8月~2010年10月)

 八坂一(やさか・はじめ)は、チビで眼鏡ながら科学への愛と男気に溢れた中学1年生。実家がある広島の呉から、夏休みを利用して横浜の祖父の家に遊びに来た。炎天下を歩き疲れ、涼みに入った喫茶店「箱船(はこぶね)」で、古風な雰囲気とたおやかな黒髪をもった年上のウェイトレス、嵐山小夜子(あらしやま・さよこ)に一目惚れする。
 ふとしたトラブルで2人が触れ合った瞬間、電流のような衝撃が走り、「通じた」と叫んだあらしは一の手を引き外へと飛び出す。裏山を駆け抜けると、そこには60年前、大東亜戦争真っただ中の横浜が広がっていた。驚く一。あらしは、60年前の横浜大空襲で命を落とし、以来、毎年の夏だけを過ごしている幽霊で、特定の人物と「通じ」、手を繋ぐことで過去へと「飛ぶ」能力があるのだ。
 厄介ごとを嫌う「箱舟」のマスター(実は稀代の女詐欺師)はあらしをクビにしようとする。あらしを「箱船」に置いてもらうためマスターと勝負し敗れた一は、居合わせた中1の上賀茂潤(かみがも・じゅん)共々、「箱舟」のウェイターとして働くことに。その一方で、あらしが過去へ飛び、当時の人々を戦禍から救うのを手伝う決心をするのだった。
 そして、ほどなく波乱は訪れる。あらしと同じ女学校の生徒として空襲に遭い、幽霊となって現世に留まっているカヤ・バーグマン、伏見やよゐ(ふしみ・――)、山崎加奈子(やまざき・かなこ)。彼女らの登場により、過去と現在は交錯の度合いを強めていく。
 彼女たちがいちばん綺麗だったとき、全ての人を襲った酷烈さは、友情も恋心も家族への想いも、全ての希望を赤黒く塗りつぶした。
 その時と同じ夏の暑さを感じながらも、一も潤も、まだそのことを実感してはいなかった――。

(さらに…)

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第164夜 10代は背伸びし、20代は首をすくめる…『たまりば』

「なんでハルオもまたアイス買ってんの?/さっき食べたじゃん」「オトナは1日にアイス2本食べてもいいんだよ」「いいなぁ〜/オトナ……」「そうでもねーよ」 『たまりば』しおやてるこ 作、エンターブレイン『Fellows!』掲載(2008年10月~2012年2月)  「……

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【随想】卒業シーズンに、“卒業”を描いた漫画を想う

 2014/03/27  随意散漫

 3月も25日を過ぎて、そろそろ卒業式シーズンも終わろうかというところですかね。  自分もそれなりの数の卒業式を経験してきましたが、どうにもあの雰囲気には弱いです。つい涙腺が緩んでしまう、といいますか。それはともかく、そんな季節に合わせて今回は“卒業”のある……

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第163夜 菌と人間、遠いけれども楽しい学びの道…『もやしもん』

「この学校はスゴいよ/いろんな人がいろんな意志で支えあってみんなで遊んでるんだね」 『もやしもん』石川雅之 作、講談社『イブニング』→同『月刊モーニングtwo』掲載(2004年7月~2014年1月)  この春、晴れて東京の某農業大学(これが正式名称)に入学した沢木……

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第162夜 憎しみと受容と愛をもって全天を仰げ…『ほしにねがいを』

「私達みんなひとつだったんです」「あ! もしかして……ビッグバンの前の事?」「今もひとつです/私達みんな違うけどひとつ−−/ここの宇宙もその他の宇宙も/草木も虫も/鳥も魚も海も土も/マグマも時間も/空間も暗黒も/私も輝くんも/有るのはみんなひとつ−−/ただ/それを言葉で分けている……

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【一会】『月光条例 28』……いまはまだ、泣くべき刻じゃないぜ

 26巻から毎月連続刊行されている『月光条例』。今巻で28巻となりました。このまま最終巻まで行くのでしょうか。 (さらに…)……

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第161夜 ネタの嵐がもたらす奇妙な詩情…『平成義民伝説 代表人』

「魚権(ウォーケン)は自分に誓った/イガラシのために命をかけて「シャクレル」と/そして/イノキとイノチは/ちょっと似ている/と思った」 『平成義民伝説 代表人』木多康昭 作、講談社『週刊少年マガジン』掲載(2002年2月~同5月)  国民的男性アイドルユニットIG……

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第160夜 少女の帰還を導くのは、凄惨な楽園の幻視…『クーの世界』

「今日もまた/クーの世界で目覚めるんだろうなあ/どうせ夢がつづくなら/ずっとクーの村で暮らしたいなあ/家捜しの旅なんて無駄だよって/夢の中の私に言ってあげられたら……」 『クーの世界』小田ひで次 作、講談社『月刊アフタヌーン』掲載(1999年11月~2000年11月……

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第159夜 ともあれ、二人、生きていくのだ…『娚(おとこ)の一生』

「……私は……昔…」「もうええわ/君の過去のなんのは/つまらん/幸せの話をすると君は下を向くんや/過去には戻れへんのに/どうして目の前のぼくを見いひんのや?」 『娚の一生』西炯子 作、小学館『月刊フラワーズ』→『フラワーズ増刊 凛花』(スピンオフ)掲載(2008年7……

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第158夜 狂わざれば、その時代を生きること能わず…『シグルイ』

「士(さむらい)の命は/士の命ならず/主君のもの/なれば/主君のために死場所を得ることこそ/武門の誉れ/封建社会の完成形は/少数のサディストと多数のマゾヒストによって構成されるのだ」 『シグルイ』南條範夫 原作、山口貴由 作画、秋田書店『月刊チャンピオンRED』掲載……

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