「プラスの電荷を持つナトリウムイオンとマイナスの電荷を持つ塩化物イオンは静電気の力でお互いに近づいて……/引き合って結合する」「結合……」「うん」「そして……/白いものができる」「まあ……」「塩だ」「塩? 塩を出してどうすんのよ/ああもう! ムードもへったくれも!」 ……
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第207夜 北の学府の、優雅な騒動は人獣共通…『動物のお医者さん』
「うちの大学を受けるのか/その顔は~~/理系!/ワタシにはキミの未来が見える/キミは将来~~/獣医になる!!/このカシオミニを賭けてもいい」「……」「キミが賭けるのはこの仔犬だ」
『動物のお医者さん』佐々木倫子 作、白泉社『花とゆめ』掲載(1987年12月~1993年11月)
H大学獣医学部の敷地を、高校から帰る近道として利用していた西根公輝(にしね・まさき、通称ハムテルまたはキミテル)と友人の二階堂昭夫(にかいどう・あきお)。ある日2人は、そこで般若のような顔をしたシベリアンハスキーの仔犬と、それを追って現れたアフリカ民族っぽい格好をした年配の男――H大獣医学部付属病院の教授・漆原信(うるしはら・まこと)と出会う。
漆原はハムテルが獣医になると予言し、仔犬を押し付ける。しかし、西根家には既に、なぜか関西弁で近所の女ボスとして君臨する三毛猫のミケ、西根家最強の生物と呼び声の高い白色レグホンのヒヨちゃんといった動物たちが住んでいた。そこに、顔は怖いが温厚なその仔犬チョビ、更にはスナネズミたちまで引き取ることになり、ハムテルは自分で治療できた方が楽だし安上りだと判断し、H大学獣医学部に入学することに。
かくして、ネズミ恐怖症なのになぜか獣医学部に進んでしまった二階堂、公衆衛生学講座のヘンな院生・菱沼聖子(ひしぬま・せいこ)らと共に、ハムテルは獣医学生ライフを送る。実験や実習、学内外の動物に関する行事などに加え、漆原教授の傍若無人な奇行や、家の動物たちや祖母タカによる騒動に巻き込まれる日々は、騒々しくもおっとりと優雅に過ぎていく。