100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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第186夜 善悪の彼岸すら超えて、貫け…『ジキルとハイドと裁判員』

「正義とはルール。悪とはルールを犯すこと。そうダロ?/だとしたら――/お前も悪ダナ。/適正な手続きで判決を下すルールを、犯した。」「……/は…はは…何言ってんだ、僕が悪だなんて…/ルールが正義とか、世の中ってそんな単純なもんじゃないよ。」「…………」「僕が悪だって…?/そんな…/そんなこと、あるもんか…」


ジキルとハイドと裁判員 1 (ビッグコミックス)

ジキルとハイドと裁判員森田崇 漫画、北原雅紀 脚本、法律監修 今井秀智、小学館『ビッグコミックスペリオール』掲載(2008年12月~2010年9月)

 2009年8月。東京地方裁判所で、裁判員制度の施行に基づいた初の公判が行われた。
 東京地裁の判事補(つまりは駆け出し裁判官)、辺見直留(へんみ・じきる)は、毎月の新件受理数が既決事件数を超えてしまう赤字っぷりから“赤のジキル”と揶揄されるほど丁寧な仕事で知られていた。そんな彼は、上司の裁判長、金丸正一(かねまる・しょういち)と先輩にあたる判事の薬師寺大(やくしじ・まさる)の3人で、初めての裁判員裁判を担当することとなる。
 上司たちの助けもあり無難に公判初日をやり過ごしたジキルの前に、突然現れたのはハイドと名乗る異形の者。ハイドの力により、ほとんどの人間の背後に憑依している“トントン”と呼ばれる存在から、自らの寿命32日分をもとに生成される“グゥ”と引き換えに、その人物の「行動の記録」を聞き出せるようになったジキルは、一足飛びに事件の真相を知ることができるようになる。
 しかしそれは、ジキルの孤独な戦いの始まりだった。自己犠牲や単なる保身から真実を云わない被告人。状況に安易に左右される裁判員たち。傲慢さと出世欲を隠し切れない裁判長。あくまで誠実な裁判を追い求める先輩判事。
 自身だけが知る真実に基づいた判決を求め、裁判員たちを時に欺瞞し、時に脅し、ジキルの裁判員裁判は続いていく。人に許された因果を超えて真実を知るジキルの所業は、やがて彼がほのかな想いを寄せる小嶋菜々子(こじま・ななこ)の父親にまつわる過去の事件と、最凶の犯罪者をめぐる裁きの場を招来するのだった。

(さらに…)

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【一会】『銀の匙 Silver Spoon 12』……それが怖くないって凄いことだよ

 遅くなりましたが『銀の匙 Silver Spoon』12巻を読了したので書き留めておきます。  まさかのハチ(八軒)の下宿爆発からスタートの12巻。てっきり下宿を追い出されるかと思いきや、そこは大丈夫だった様子。  それはともかくとして、今巻では各人の視点がザッピン……

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第185夜 責任=自覚×選択…『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』

「空木宗也、キミは知らないようだから言っておくが――/人に使命感を抱かせしめるものは主義などではない。/誰かの期待だ。」 『時坂さんは僕と地球に厳しすぎる。』田中ほさな 作、小学館『ゲッサン』掲載(2011年9月~2014年1月)  何事においても「ちゃんとしたい……

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【探訪】コミティア109参加記録…ゆるゆると参加、嬉しい出会いも

 2014/09/01  漫事探訪

 コミティアへの記事も今回で5回目。初めての記事が昨年8月のものなので、はや1年皆勤で参加し続けていることに。 それはまあそれとして、今回も記録を残しておこう(ちなみに過去の記録は下のリンクから)。 【探訪】コミティア108参加記録…午前から参加は初めて 【探訪……

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【一会】『まるせい 2』……真摯にエロスを追い求めるということ

 成年漫画に青春をかける、作者の経験(色々な意味で)と創作を混濁させて生み出された青年、花比野Q一朗(はなびの・キューいちろう)の物語『まるせい』も、無事2巻の刊行を迎えました。前巻の最終盤で大変かわいそうなことになったQ一朗ですが、どうにか持ち直して仕事(成年漫画の執筆……

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【一会】『七つの大罪 10』……彼らの因縁と彼の罪状

 お盆休み明けと共に刊行された『七つの大罪』の10巻。今巻では前巻に引き続き、“七つの大罪”が侵入した王都でのキングVSヘルブラム、アーサー(&メリオダス)VSヘンドリクセン&ギルサンダーという2つの戦いが繰り広げられています。  しかし、なんといっても今回の主役は……

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【探訪】コミケ86三日目…おそい時間でも大盛況

 2014/08/17  漫事探訪

会場着~西~中央  家での用事に手間取り、やっぱりきょうも到着は13時過ぎだった。最終日はサークルの撤収も早いところが多いので、急いで各所をめぐることに。今日の主要ジャンルは、男性向け創作・アニメ・ゲーム、評論・情報、創作(少年)、ギャルゲーなど。知人のサークルを中心に……

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【探訪】コミケ86二日目…数年ぶりの雨雲に一息

 2014/08/16  漫事探訪

 引き続き、コミケ二日目にも参加してきた。とはいえ、今日は昼過ぎにのんびり会場入り。今日の主なジャンルは、ジャンプ系、少女/BL創作、ヘタリア、東方projectといったところ。  ※初日、三日目は以下のリンクをどうぞ。  【探訪】コミケ86一日目…やっぱり快晴、……

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【探訪】コミケ86一日目…やっぱり快晴、祭り開幕

 2014/08/15  漫事探訪

 お盆ではあるが、時間をとって夏のコミケに参加してきた。初日の今日の主なジャンルは、『艦これ』その他ゲーム系、ガンダムおよびサンライズ系アニメ、スポーツ・芸能・特撮・ファンタジー・SF・メカミリ・歴史・文芸など。  ※二日目以降は以下のリンクをどうぞ。  【探訪】……

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【一会】『せっかち伯爵と時間どろぼう 3』……他人の悪夢が残すのは

 刊行からちょっと遅れましたが、『せっかち伯爵と時間どろぼう』の3巻について書いておきます。  「“海賊王”に!!!! ならないからっ!!!」と帯にも大書されている『ワンピース』を皮切りに、○ィズニーに北朝○に放射能と、相変わらず“怖いものなど何もない”系風刺ネタ(下ネ……

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