【一会】『七つの大罪 10』……彼らの因縁と彼の罪状
2018/07/20
お盆休み明けと共に刊行された『七つの大罪』の10巻。今巻では前巻に引き続き、“七つの大罪”が侵入した王都でのキングVSヘルブラム、アーサー(&メリオダス)VSヘンドリクセン&ギルサンダーという2つの戦いが繰り広げられています。
しかし、なんといっても今回の主役は怠惰の罪(グリズリー・シン)のキングです。それは外伝エピソード「まちぼうけの妖精王」が挿入されていることからも明らかでしょう。この外伝を含んだ一連の話が、痛々しいです。
初登場の時こそバンに対する激情にかられていましたが、日常的な部分では割と楽天的な感じだったキング。ところが、妹のエレインとバンがらみのことだけでなく、更にこんな辛い事情もあるとは思いませんでした。
瀕死のディアンヌのもとに駆け付けたキングが対峙するのは、王国ヘンドリクセン派の実力者ヘルブラム。単純に好きな娘の大ピンチに駆け付けたヒーローという構図だけなら熱い展開必至なところですが、意外にもキングとヘルブラムの間には過去の因縁が。更に、単純な淡い恋心だとばかり思ってたキングのディアンヌへの思いも、実はこんなにも切実なものだったとは。
かつて『バキ』(『グラップラー刃牙』[100夜100漫第14夜]の次のシリーズ)を連載してた頃に作者の板垣恵介氏が、何巻かの袖コメントで「ダンディズムとは、常に矢面に立つ気概を忘れず、同時にそれを生涯表に出すことがないということ」(現物がいま手元にないので細かいところが違うかもしれないです)と云っていましたが、そういう意味で「ダンディ」という言葉を使うのなら、今巻のキングはまさにダンディ。心と体にやるせない痛みを抱えながらも「……きっと 夢を見ていたんだよ」と微笑む彼に、“怠惰”という罪状は余りに似合いません。それでも全て呑み込んで罪を背負う彼は、やっぱり伝説の騎士団の一角を担う人物です。思えばメリオダスもバンも、何気に愛する者のために戦ってますし、そういう意味では、さすが団員と云うべきかもしれません。
一方、キング以外の面々にも色々なことが起こっています。まずはメリオダスとアーサー。第三勢力として登場したアーサーですが、少なくともしばらくは“七つの大罪”と敵対はしない様子。アーサーから見ればメリオダスは伝説の人物なわけで、憧れの人と話すようなアーサーが微笑ましいです。一時共闘ということになりそうな聖騎士長ドレファスたちとも呼応して、ヘンドリクセン達と渡り合っていくことになるのでしょうか。
そして、ホークとバンが見出した王国の祭器「ケルヌンノスの角笛」。女神族と交信するためのものとのことですが、ケルヌンノスはケルト神話の狩猟と豊穣と冥府の神のようで、「冥府」という言葉の通り、何やら不穏な空気が漂い始めています。
メリオダスの、バンの、ヘンドリクセンの、アーサーの、人物それぞれの思惑が交じり合いながら、王都での戦いは終わりへと加速していきます。戦いの幕切れを楽しみに、次巻を待ちます。