作者の代表作『朝霧の巫女』(100夜100漫第56夜)の外伝(というか自己パロディ?)が収録されている、というのが恐らく一番の話題であろう短編集『おるたな 宇河弘樹短編集Ⅱ』が発売されました。「~短編集Ⅱ」とされているのは、2000年に出た『妖の寄る家』が短編集……
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【一会】『月光条例 29(完)』……そして、物語は円環する
「ヒジョーにメイワクな話をしよう」から始まった、おとぎ話(というか全ての物語)を巻き込んだ、ある意味で傲岸不遜、ある意味では史上最後の物語『月光条例』も、遂に語り終えられる時が来ました。最終巻だけに、頭の中を整理してから書きたいことも色々ありますが、あまり時間をおくのも何なので、ひとまず書いてしまいます。
もう今巻は、一言で云えばラストバトルで大団円です。天童が明かす月光との荒っぽい友情の始まりなんてエピソードも挟まれますが、やはり主役は月光とエンゲキブでしょう。
『うしおととら』(100夜100漫第64夜)の潮ととら、『からくりサーカス』の(100夜100漫第27夜)勝と鳴海と、主役たちの“コンビであること”が強調されるのが藤田漫画のラストバトルの特徴ですが、今回はそれが月光とエンゲキブによって担われます。
エンゲキブが月光と一緒に命を懸けようとするシーンを読みながら自分の脳裏に唐突に思い出されたのが、TYPE-MOONのビジュアルノベルゲームとして出発し、今秋2度目のアニメ化が決まっている『Fate/stay night』の主題歌「disillusion」の「誰かの為に生きて/この一瞬(とき)が全てでいいでしょう」という一節でした。不死という永い時を独り歩いてきた彼女の命が、本当の意味で燃え上がった一瞬だったと思います。
それに先だって、戦いの場では長らく月光とコンビを組んできたハチカヅキの「きっと…/お勝ち下さいまし」という言葉と、初めて描かれたその眼差しもまた、読者の心を震わせます。彼女もまた、最後まで使命を貫いた誇り高い条例執行者です。
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