【一会】『七つの大罪 8』……その者の名前、マーリン
2018/07/20
祝アニメ化、ということで徐々に出版社も力を入れ始めている気がする『七つの大罪』。単行本の刊行ペースは2か月に1巻のようですね。
今回の8巻で、なんとなーく、メリオダスたちが罪を着せられている10年前の王国転覆疑惑事件の手がかりらしきものが示されてきました。メリオダスたちの敵役である聖騎士陣営で量産される新世代の聖騎士たちと、その背景にある野望とか。奪われた欠けた剣の柄に隠されていた祭器「常闇の棺」と、封印された魔神とか。
幾人かの人物の視点でその辺りが色々と描かれながらも、やはり読者の目を引くのは、前巻ラストから登場の色欲の罪(ゴート・シン)ことゴウセルでしょう。
頭脳明晰ポーカーフェイス系ボケキャラとして、ほぼ1話まるまる使って他の団員たちを振り回してくれてます。衒学的な喋り方に、眼鏡で小柄の優男というビジュアルもあいまって、少なくない固定ファンが付きそうな予感。
感情が無いかのように振る舞う彼ですが、お世話になっていた少年との別れ際の態度や、巻末の番外編で物語に興味があるのが示されるところなど、十分ウェットなものを持ち合わせているようです。何となく、観測者として振る舞うものの感情が芽生えていく、谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズの対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイス、長門有希を連想します。
それと、かつてのメリオダスと、その恋人リズのエピソードも見逃せません。飄々とした団長メリオダスですが、その奥底にはこんな記憶が沈んでいます。その後リズがどうなったか、今は語られていないと思いますが、語り手の「…全ては みな/遠い日の風景じゃ」という言葉が寂しいですね。それでも覚悟を決めて、メリオダスは進みます。
そして、残り2人の団員の名前が明らかになりました。暴食の罪(ボア・シン)マーリン。そして傲慢の罪(ライオン・シン)エスカノール。
マーリンという名前は、アーサー王伝説で、アーサーの手助けをした偉大なる魔法使いの名前ですよね(この漫画でのマーリンは女性のようですが、伝説ではお爺さんとして描かれることが多いと思います)。
今巻のラストでついにキャメロットの新王としてアーサーその人も登場し、“鈴木版アーサー王伝説”は本編に入ったと云えるのかもしれません。しかし現状、メリオダスたち、聖騎士、アーサーと、三つ巴の構図を呈している本作。この先どんな展開が待っているのでしょうか。
アニメ化に流されず、作者の思い描いた物語を語り終えられますように。騎士道物語を詠う吟遊詩人さながらにそんな祈りを捧げながら、次巻を待ちたいと思います。