100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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第17夜 二次ヲタにだって二次ヲタなりの家族愛…『おたくの娘さん』

「あのお父さん…/ひとつ聞いていい?/お父さんって…/『おたく』なの?」「ごめんね」


おたくの娘さん(1): 第1集 (ドラゴンコミックスエイジ)

おたくの娘さんすたひろ 作、作者Webサイト上掲載(2005年2月23日~)→富士見書房『月刊ドラゴンエイジ』掲載(2006年11月~2011年10月)

 守崎耕太(もりさき・こうた)は同人作家と漫画家アシスタントを掛け持ちするオタク青年。二次元趣味に邁進する毎日である。
 ある日、彼の住処兼仕事場にしてオタクの巣窟であるアパート“彼岸荘”に、9歳の少女、雪村叶(ゆきむら・かなう)が訪ねてくる。叶によると、彼女は耕太の実の娘だという。
 高校時代、先輩の雪村望(のぞみ)と一度だけ過ちを犯したことを思い出した耕太は、破産して不如意になっている望の願いを受け、叶と暮らすことを決意する。オタクの父親とフツーの娘、アパートのクセモノ住人たちをも巻き込んで、奇妙で大騒ぎな親子生活が始まるのだった。

変則子育て漫画
 「こんな自分に、もしも子どもができたりしたら、まともに育てられるのだろうか」と思うことがある。コミケの隆盛ぶりなど鑑みると、その参加者には子どものある人もいるだろうし、その子ども達はどんな人間になるのだろう、と、少し怖いような興味深いような不可思議な気持ちになる。
 恐らく、そうした時代だからこそ、本作のような作品が出現してきたのだと思う。作者も自分と同じような、子どもがいておかしくない年頃のオタクなのだろう。
 いきなり子持ち(しかも女の子)の境遇に置かれることになった主人公の物語は、上記のような疑問に対するシミュレートという意味で興味深い。オタグッズをどうするかという形而下的なことから、9歳の女の子をどう扱うべきなのか、そして、親としてどう接するべきなのかという、この上なくシリアスなことまで。
 コメディタッチで描かれながらも、要所要所では、主人公と読者に、子どもと一緒に暮らす、育てるというのはどういうことか、鮮烈に問うているように感じる。変則的子育て漫画といってもいいのかもしれない。

家族の行方
 一方で、物語の後半はまた趣きが変わってくる。詳細な表現は避けるが、単に親子だけでなく、家族の今後について、主人公は難しい選択を突きつけられることになる。同時に、主人公親子以外にもサブキャラクターたちそれぞれの家族の形も描かれていく。この辺りは、当初想定されていた、「『ジョジョ』のように主人公が代替わりしていく」という展開の構想が、不完全ながら生かされている。
 家族というと、どうしても重苦しい展開になってしまうことが多く、じっさい本作もかなり痛烈なシーンもあるのだが、どうにか序盤と同じコミカル路線を保っていられるのは、オタク的ギャグがたびたび挿入されるためだろう。純粋に物語に浸りたいという読者には不評を買うかもしれないが、これによって作品の根底が明るく保たれている点を評価したい。バランスの絶妙な1作である。

*書誌情報*
☆通常版…B6判(18 x 12.8cm)、全11巻。電子書籍化済み。
☆パイロット版…作者ウェブサイトにて14話まで公開中。→終了の模様

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第16夜 少女の言葉はふわふわと人の営みを映す…『ともだちパズル』

「もうヒミツなんか/どっちでもええわ/わたしみゆきちゃんやっぱりすき/だいだいだいすき」 『ともだちパズル』おーなり由子 作、集英社『りぼんオリジナル』掲載(1988年12月~1990年3月)  矢野ようこは関西で暮らす小学3年生の女の子。仲良しはみゆきちゃん。空……

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第15夜 日本の工場を担う“蟻んこ”の誇りに笑って咽け…『工場虫』

 2013/05/19  100夜100漫, ,

「オレたちの手で今の世の中ひっくり返してやるんだよ!」 『工場虫』見ル野栄司 作、e Book Japan『KATANA』掲載(2009年4月~10月)  株式会社アリンコハイテック横浜工場(といっても山の中)に勤める原成守(はらなり・まもる)は、製造部での仕事の……

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第14夜 個人VS個人、その最高水準の衝突…『グラップラー刃牙』

 2013/05/18  100夜100漫,

「強くあろうとする姿は――――かくも美しい!!!」 『グラップラー刃牙』板垣恵介 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(1991年9月~1999年6月)  東京ドームの地下には闘技場がある。そしてそこでは、各々の世界で現役を担っている格闘家たちが、夜な夜な真剣……

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第13夜 下衆な博士と幼女なロボの妙味…『無敵鉄姫スピンちゃん』

「まてよ…てことは…/エロボットのボディーが完成したら…/スピンがエッチな事するって事!?」 『無敵鉄姫スピンちゃん』大亜門 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(2004年3月~6月)  ロボットが社会に浸透しつつある21世紀。実家から離れたお嬢様女子高に進学……

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第12夜 欠ける月の下、優しい死とピアノの調べは歌う…『下弦の月』

「あの月が欠けてゆく2週間があたし達に定められた運命なら/あの夜見た月が満ちる事は永遠にないだろう」 『下弦の月』矢沢あい 作、集英社『りぼん』掲載(1998年3月~1999年5月)  女子高生の望月美月(もちづき・みづき)は、街中でギターを弾く不思議な白人、アダムと……

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第11夜 いにしえの倭国で、二人の視る夢は続く…『邪馬台幻想記』

「…そうだ/オレは伊予を高天の都へ連れていく……/倭国を統一するために…/そしてオレは見てみたい…/伊予が造る理想の国を…」 『邪馬台幻想記(やまとげんそうき)』矢吹健太朗 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1999年2月~6月)  幻想の時代――紀元3世紀。倭……

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第10夜 超古代遺跡を護る闘いに見い出す人の偉大さ…『スプリガン』

「どーせ死ぬなら最後まで納得いくまで戦って死んでやる!!/自分の行動に後悔だけはしたくねー!!」 『スプリガン』たかしげ宙 原作、皆川亮二 作画、小学館『週刊少年サンデー』→『週刊少年サンデー増刊号』掲載(1989年2月~1996年1月)  かつて地球上にはいくつ……

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第9夜 巨大になった世界をたゆとう、その翼で…『カブのイサキ』

 2013/05/13  100夜100漫, ,

「うちのカブに乗る時は/目的地とか…二の次だからね」 『カブのイサキ』芦奈野ひとし 作、講談社『月刊アフタヌーン』掲載(2008年2月~2012年11月)  何だか分からないけれど「地面が10倍」になった世界。隣町より遠くへ行くなら、空を飛ぶものでないと追っつかな……

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第8夜 弟が愛し憎悪する姉は血と鋼に身を固める…『シリウスの痕』

 2013/05/12  100夜100漫, ,

「さて最後のお別れをしなさい/自分の生身の肉体に」 『シリウスの痕(きずあと)』高田慎一郎 作、角川書店『月刊少年エース』掲載(1999年5月~2001年10月)  脳以外を機械化した人間を殺し合わせる闘犬(ドッグファイト)。犬たちには既に闘争本能しか残されていな……

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