「天下とって♥」 『SWEET三国志』片山まさゆき 作、講談社『ヤングマガジン増刊海賊版』掲載(1992年~1995年) ワンス・アポン・ア・タイム、イン・中国、漢の国。劉備玄徳(りゅうび・げんとく)は豪傑の関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)と桃園に……
「 パロディ 」 一覧
第87夜 パロディ、ジェラシー、満載の空騒ぎ…『太臓もて王サーガ』
「みなのもの!/出合え出合えー!!/美女はオレと出会え出会えー!!」
『太臓もて王サーガ』大亜門 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(2005年7月~2007年5月)
現実と幻想の狭間にある世界、“間界(まかい)”の王子、百手太臓(ももて・たいぞう)が人間界にやってきた。彼の目的は国民全員が自分の嫁で構成されている“ハーレムランド”を作ること。
お供の安骸寺悠(あんがいじ・ゆう)とともに私立ドキドキ学園高等学校に潜り込み、野望成就に向けて活動を開始する太臓だが、基本的に下品で見た目もおにぎり的なので、彼女の1人もできそうにない。それでも持ち前の傍若無人さで、太臓は嫁探しを続ける。
そんな彼の周りには、いつのまにか人間・間界人を問わず変人が集まっていき、毎度ややこしいことになるのである。クラスの“太臓係”を押し付けられた不良少年、阿久津宏海(あくつ・こうみ)のツッコミが追いつかないほどに…。
愛あるパロディとゴシック体のツッコミ
画期的なギャグ漫画である。いや、話の構成自体は、従来からの形を踏襲したドタバタ(一部ラブコメディ)のため、特に型破りということはない。
問題は演出の方である。パロディネタの嵐なのだ。比較的読み込んだと思う自分にしても、いまだによく判らないネタが多々ある。パロディの対象となるのは主に掲載試のジャンプ作品で、そのうちで特に別格なのが作者が愛して止まない『ジョジョ』(第21夜、第70夜)ネタである。少し読んだだけでジョジョマニアを語るにわか者は、本作の溢れんばかりのジョジョネタをみれば少し謙虚になるかもしれない。と言うぐらい、密度の濃い、愛情のこもったネタを投入してくる。
これに対するは、不良高校生である阿久津宏海による、往年の柴田亜美的な突っ込みである(あくつこうみ、という名前には“つっこみ”役の意味があったのだろうか)。この切れ味も鋭い。ゴシックにした台詞でツッコミを現すテクニックは誰が発明したのか不明だが、結果として本作のギャグの爆発力を大いに向上させていると云えそうだ。
この2者が組み合わさった破壊力は半端ではない。公共の場で本作を読むのはよく考えてからにした方がよいだろう。
空騒ぎが終わったら
『はじめてのあく』や『ラブひな』(第19夜)といった純然たるラブコメを読んだあとに本作を読むと、その品の無さ、男臭さに思わず笑ってしまう。しかし、現実の男子高校生の生活に近いのは、本作の方ではないかと思う。もちろん程度は比べ物にならないながらも、友人たちとのバカ騒ぎがあって、ツッコミがあって、下ネタがあってという、何の変哲も無い学生生活を、実のところ本作は過剰に描いているだけなのではないだろうか。
学園を舞台とし、時間経過の概念がある以上、いずれは彼らも離れ離れになる。本作の狂言回しである宏海は、太臓以下マイペースな人々のおかげで気苦労が絶えないのだが、それもこれも、大切な思い出になってしまうのだと、久しぶりに本作を読み返した自分は思ったのだった。
本作のラストは残念ながら打ち切りに等しい幕切れである。しかし、限られた紙面の中で、作者は最大限の誠意を作品に注ぎ込んだといえるラストである。空騒ぎの終わりを見届けて欲しい。
*書誌情報*
☆通常版……新書判(17.6 x 11.4cm)、全8巻。電子書籍化済み(紙媒体は絶版)。
広告
-
第36夜 踊りましょう、ご一緒に、最後まで…『さよなら絶望先生』
「♪ね――こ――の毛皮着る――/貴婦人のつくるスウプウウ―/お――ば――あさんの/いなくなぁた/住宅――街――に肉――」 『さよなら絶望先生』久米田康治 作、講談社『週刊少年マガジン』掲載(2005年4月~2012年6月) 名前からして敗北感に溢れている高校教師……
-
第19夜 ドタバタラブコメの舞台で、彼らは未来を掴む…『ラブひな』
「浪人したって/遭難したって/どんなひどい目に遭ったって/全部全部幸せだった!!」 『ラブひな』赤松健 作、講談社『週刊少年マガジン掲載(1998年10月~2001年10月) 大学受験に失敗し、あえなく二浪目に突入した浦島景太郎。勉強はだめ、運動もだめ、外見は冴……