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【一会】『乙嫁語り 7』……湯気の中に見つけた無二の人

      2015/02/26

乙嫁語り 7巻 (ビームコミックス)

 6巻から1年と1か月という時間をおいて発刊された『乙嫁語り』7巻。今巻では前巻の「あとがきちゃんちゃらマンガ」での予告通り、フィールドワーカーのスミスさんとその案内人アリが登場します。
 とは云っても、冒頭で出てくるのは、まだあどけなさが残る、さっぱり美人アニス。ペルシアの富豪の妻である彼女と、ふと知り合った女性シーリーンが中心となって、今巻の物語は紡がれていきます。

 今巻の「あとがき……」で触れられていますが、このアニスを始めとするペルシアの人々は、いつもの森先生の画風よりも少しあっさり目に描かれているようです。表紙を見た時に感じた“いつもの『乙嫁』となんか違う”感は、そういうことだったのか、と納得。
 それはそうと内容ですが、ペルシアの公衆浴場(の女湯)を主な舞台としているのがまずポイントでしょう。森先生による女性の曲線美は前作『エマ』(100夜100漫第60夜)でも散見されましたが、今回はそれを上回る大盤振る舞い。当時(時代的にガージャール朝イランでいいんでしょうか?)のペルシアがどのような状況であったか、手元に文献もないし、ましてや想像なんか自分にはつきもしないのですが、荘厳な建造物と花と水が織り成す閑雅な風景、アニスの夫のつぶやく四行詩(ルバーイイ)調の言葉の絢爛さとともに、湯殿の様相は読者にペルシアの優雅なひと時を味わわせてくれるでしょう。

 アニスのぼんやりとした不安を解く手だてとして物語に登場する姉妹妻(しまいづま、あるいは縁組姉妹(ハーハル・ハーンデ)とも)なる風習は、森先生の解説によれば17~19世紀頃(?)まで実在したとされているようです。それがどんなもので、どうやってなされるのかについては、この風習を題材に奇妙だけど麗しい愛の形を描いた本編をお読み頂くのがいいでしょう。それにしてもこの風習、スミスたちを客人としてもてなす歓待の文化が男たちのものであるのなら、その相当物として女性たちの間に育まれたものなんじゃないかな、と自分はぼんやり感じたりもしました。

 ともあれ、ペルシアでの物語は1つの転機を迎えたところで今巻は幕。第1の乙嫁アミルの夫カルルクのご両親の(というか父上の)、粗にして野だけどこれはこれで麗しい夫婦愛を描いた番外編「熱」がありつつ、あとがきへと移っていきます。
 およそ1年後と予想される次巻は、笑顔が苦手な例のパリヤさんやアミル、カルルクといったお馴染みの面々が登場とのことですが、ちょっと気だるく雅な味わいのこのペルシア編もまた、何巻後かに描かれると楽しそう。と、希望を抱きつつ次巻を待ちたいと思います。

 - 一画一会, 随意散漫 , , ,

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