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【一会】『七つの大罪 32』……「沈黙」と「慈愛」に纏わる諸事情

      2019/02/17

七つの大罪(32) (講談社コミックス)

 前巻31巻にて、リオネス王国を中心とする聖騎士と騎士団〈七つの大罪〉を始めとする人間たち、彼らと当座の同盟関係にある女神族、これに対する魔神族による戦いの火ぶたが切って落とされた『七つの大罪』。戦いの序盤を描いた、昨年6月刊行の32巻を、引き続き読み進めます。

「沈黙」の告白

 前巻の編成会議にて、人間・女神族連合軍は、防衛部隊・掃討部隊・強襲部隊の3部隊に分けて戦うことを決めましたが、今巻で描かれるのは掃討部隊。魔神族と正面きって戦いを繰り広げる、もっとも戦力を割いた部隊の戦いです。
 女神族の中でも最上位と思われる〈四大天使〉の一角リュドシエルの“祝福の息吹(ブレス・オブ・ブレス)”により、聖騎士の相当数はハイテンション。中でも〈蒼天の六連星〉の面々は常軌を逸した活躍を見せます。しかし、それは己が身を代償としたものなのでしょう。もちろん〈七つの大罪〉のキングやディアンヌも久々に大活躍しますし、〈四大天使〉のサリエルとタルミエルも流石の強さを見せてきます。

 ところで、〈十戒〉でありながら、魔神族陣営に参戦せずにいる2人がありました。「純血」のデリエリと「沈黙」のモンスピートです。先の戦いで感じるところがあったのか、どうも彼らは戦に疲れたようで、デリエリは自ら戒禁をゼルドリスに返しに行くと口にします。
 意外と魔神族以外もいた〈十戒〉の中で、インデュラ化したこの2人は魔神族に違いないとは思うのですが、割と人間的な感情がある様子。デリエリの意向にモンスピートもまんざらでないようです。が、戒禁を奪いにきた〈十戒〉の一角にしてメリオダスの弟、「慈愛」のエスタロッサが台無しにしてくれました。
 衝突するモンスピートとエスタロッサ。対象を“入れ替え”る魔力で巧みに立ち回るモンスピートが、戦いながらエスタロッサの素性を口にします。どうもエスタロッサの実態は、見た目のイメージとは少し違ったものだったようです。
 モンスピート優勢と思われた肉弾戦でしたが、デリエリが近づいた一瞬の隙を突かれる形で形成は逆転。彼がデリエリに伝えたかった言葉はその戒禁「沈黙」の通り、伝えられぬままで終わりを迎えました。

 さて、掃討部隊は、まず魔神族の第一波を撃退に成功していました。臨時で聖騎士長となったハウザーですが、なかなか長らしい差配を振るっています。
 〈蒼天の六連星〉のリーダー格デスピアスが、リュドシエルの力で相変わらず調子に乗っていますが、実際はエリザベスの広範囲に及ぶ治癒の魔力がなければ戦闘不能になっていたことでしょう。
 意外だったのは、〈四大天使〉のサリエルとタルミエルが、デスピアスをたしなめる側に回ったこと。彼らにとってリュドシエルは仲間のはずですが、戦いについての考え方には温度差があるのかもしれません。
 一息つく陣営に飛来してきたのは、モンスピートに突き飛ばされる形でエスタロッサの元を逃れてきたデリエリでした。〈蒼天の六連星〉の長デンゼルの仇討ちにいきり立ったデスピアスが突撃しますが、失意のデリエリは戦おうともしません(ダメージもゼロのようですが)。ついで降り立ったのは、デリエリの戒禁を狙って追ってきたエスタロッサ。強烈な魔力に聖騎士たちの陣は崩壊するものの、エリザベスが、さらにサリエルとタルミエルが対抗します。

「慈愛」狂乱

 〈四大天使〉にとって、3000年前にマエルを殺したエスタロッサは許すことのできない仇です。サリエルは「竜巻」、タルミエルは「大海」と、それぞれ最高神から受けた「恩寵」を駆使してエスタロッサに挑みます。
 〈四大天使〉1人は〈十戒〉2人の実力があるとのことで、普通であればサリエル・タルミエルの優位は動きません。実際、2人の「恩寵」の力は凄まじく、合わせ技“エンリルの天罰”はエスタロッサを再生不能な分子レベルにまで分解したかに思われました。
 しかし、やはりそう簡単にはいきません。モンスピートを失って困惑するデリエリにエリザベスが対話を試みる中、エスタロッサは「恩寵」による空間から立ち戻ってきて見せます。ガランを殺して奪った「真実」の戒禁を取り込んだ彼の闘級は跳ね上がりましたが、表情には明らかに狂気が宿っていました。ゴウセルによれば「歪められた精神が更に捻れてしまった」とのこと。ただ、その強さは〈四大天使〉に匹敵するものとなり、サリエルとタルミエルも手を焼きます。
 ところで、例えばガランの「真実」ならば「その戒禁を前に嘘をついた者は石化する」というように、戒禁にはそれぞれ特性のようなものがありましたが、それを取り込んだエスタロッサはそれを用いようとしません。どうも単純に取り込んだだけでは戒禁の特性までは奪取できないようです。あるいは劇中で本人が云うように(p.80)、最高神の加護により戒禁が効かない〈四大天使〉を相手にしているからなのかもしれませんが。
 エスタロッサはさらに、モンスピートから奪った「沈黙」の戒禁までも取り込みます。圧倒的な力を手にした彼は、なぜか自らを「メリオダス」と名乗るのでした。複数の戒禁を取り込んだ彼の中では、エリザベスへの執着と兄メリオダスへの憧れが屈折し、自我が混濁したものとみえます。
 聖騎士ギーラ、ディアンヌとキング、サリエルとタルミエルが果敢に攻撃を加えますが、ことごとく無効。エスタロッサに見覚えがあると感じたエリザベスは、自らを差し出すことで攻撃を止めさせ、彼とともに何処かへと飛び去っていくのでした。

 その頃、ドレファスを始めとする防衛部隊の奮戦で、リオネス城はどうにか守り切られていました。ひとまず最悪の事態は避けられたようです。
 エリザベスがさらわれてしまった掃討部隊では、サリエルとタルミエルが人間の肉体から元の身体に戻り、エスタロッサを追うことに(それにしてもサリエルが借りていた身体の変貌ぶりにはびっくりどっきりしました)。エスタロッサに軽くやられてしまった彼らですが、マエルのためにも退けない様子。切り札の1つや2つは持っていると考えるべきでしょう。
 一方、依然として自我が混濁気味のエスタロッサがエリザベスを連れて行ったのは、かつてメリオダスとエリザベスが忍んで会っていた場所。降りる前から苦しみだしたエスタロッサは、ついにエリザベスの首に手をかけ――というところで、本編は次巻へと続きます。

 次なる33巻も既に入手済み。「番外編/祭壇の王」が段々と現在の謎に絡んできたのを見届け、またそれ以外の番外編3編でリラックスしつつ、次巻へと読み進めるとします。

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