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【一会】『七つの大罪 31』……英雄不在の聖戦へ

      2019/01/27

七つの大罪(31) (講談社コミックス)

 闇の魔神族、光の女神族、そして騎士団〈七つの大罪〉と人間たちという3つの勢力による戦いがクローズアップされてきた『七つの大罪』。先日に引き続き、昨年4月刊行の31巻を読みたいと思います。

神と人との盟約

 前巻ラストにて、女神族の〈四大天使〉の一角リュドシエル(王女マーガレットの肉体に憑依中)の一撃が〈十戒〉の一員の魔神族ゼルドリスを襲いましたが、それで斃れるわけもなく。ただ、時間稼ぎにはなりました。マーリンの主導で、「敬神」の戒禁を解かれた人々のキャメロットからリオネスへの移送が突貫作業で行われます。
 そのさなか、メリオダスの元から立ち去ってきたエリザベスが合流しますが、チャンドラーによる攻撃を受けて手傷を受けることに。…ただこれは、彼女の前髪にまつわるエピソードを説明するためのトリガーだったようです。
 エリザベスは、呪いによって残り2日ちょっとしか生きられません。それでも彼女が〈七つの大罪〉に頼むのは、メリオダスの魔神王化を止めるという1点のみ。彼女自身はもう覚悟しているのかもしれませんが、やはり悲壮この上なく思えます。
 ただ、メリオダスとバンを欠き、ゴウセルは大破している〈七つの大罪〉は、戦力としてはほぼ半減。マーリン、エスカノール、キング、ディアンヌの4人だけでエリザベスの願いを完遂するのは厳しいでしょう。
 不安が残る中、人々が移送されたリオネス城に、エリザベスと〈七つの大罪〉、ギルサンダーを含む聖騎士達、そしてリュドシエルら〈四大天使〉が集結します。リュドシエルから持ちかけられた提案は、戦力不足のエリザベスたちにとって是非もないもの。女神族への疑念は根深いですが、ひとまずここに〈七つの大罪〉および人間たちと女神族〈光の聖痕(スティグマ)〉との間に同盟関係が結ばれることとなりました。

 エリザベスとリオネス王バルトラの親子、ドレファスとグリアモールの聖騎士親子、ハウザーとギルサンダーの幼馴染み同士らによる語らいの夜が紡がれる一方で、「聖戦」の開始と周囲を煽るリュドシエルに、〈蒼天の六連星〉の聖騎士の面々が話しかけてきました。彼らの長デンゼルは、今のマーガレットと同じように女神族の神兵長ネロバスタの依り代となり、直後に〈十戒〉の一角「純潔」のデリエリに殺されてしまったのでした(23巻)。そういう経緯から、彼らは女神族に云い難い感情を持っているわけですが、リュドシエルは巧いこと六連星の面々を丸め込みます(それでも自分としては不審を拭えませんけれど)。
 また、ここでリュドシエルは1つ重要な情報を明らかにしてもいます。それは、〈四大天使〉と称する割に3人しかいない彼らのもう1人、マエルという大天使は、既に〈十戒〉――画からは多分エスタロッサ――に殺されたということ。エスタロッサと対峙した時にその詳細が語られることと思われます。

 エリザベスの呪いが発動するまで、あと2日となった朝。キングはディアンヌとエレインの面倒をみ、マーリンはゴウセルの修理を試みます。マーリンの師に当たる者が作った人形ゴウセルの出来は素晴らしく、更なる改良は難しいようですが、ゴウセルのリクエストで新たな何かが仕込まれたよう。マーリンの様子から、あまり良いものではなさそうですが、どうでしょうか。
 買い出しなのか散歩なのか、ホークとエスカノールは街をそぞろ歩きながらおしゃべり。そこに闖入してきたのは、前日からずっと飲んでいたらしいリュドシエルでした(というか女神族ってお酒とか飲むんですね…。まぁ〈十戒〉のガランとメラスキュラも飲んでましたけど)。
 エスカノールと小競り合いを繰り広げつつ説明するリュドシエルによれば、〈十戒〉が魔神王から「戒禁」をもらったのと同じように、〈四大天使〉も最高神から賜った力、「恩寵」を持っているとのこと。そして、死んだとされるマエルの「恩寵」は、エスカノールの有する「太陽」だったと云います。
 マエルの「恩寵」がどうにかしてエスカノールに備わったのだと考えるリュドシエルは、エスカノールに「恩寵」を返すように迫りますが、当のエスカノールは、自分の力は生まれながらのものだと譲りません。とりあえずその場は収まりましたが、ただの人間とは思えないエスカノールの力には自分も疑問を抱いていましたし、この件はもう少し波乱がありそうな予感がします。

奮戦のアーサー

 メリオダスとゼルドリスが動向を話し合い、エスタロッサがガランが持つ「強欲」の戒禁を回収した頃、彼らの根城となったキャメロットには、若き王アーサーが侵入を試みていました。目当ては城内に安置されている聖剣です。
 彼にくっついている、猫か或いはカバー袖に登場する作者の自画像みたいな生き物キャスの不思議な活躍もあり、首尾良く城内に入ったアーサーでしたが、ゼルドリスとその師キューザックに囲まれ窮地に。キャスが助けてくれようとしますが、さらにメリオダスもやってきて大ピンチです。
 辛くも聖剣を抜いたアーサーは、チャンドラーも加えた最上位の魔神族4体を相手に戦います。あまりに有名なその聖剣・エクスカリバーは、その内に歴代の使い手である英雄たちの魂と剣技を蓄積し、扱う者に与えるという奇跡のような剣。その力は凄まじく、アーサーは魔神族を圧倒します。
 が、まだまだ未熟で魔力も覚醒していないアーサーが振るっても、その力は不十分だったようです。すんでの所でマーリンが助けに入りましたが、時すでに遅し。キューザックの魔力“共鳴(レゾナント)”により、アーサーは自らの身体に剣を突き立てることとなりました。

 この漫画が“作者的解釈によるアーサー王物語”だとすれば、このままアーサーが退場するとは考えにくいのですが、ともかく今のところアーサーは死んだとしか表現できないでしょう。マーリンの失意はひとかたでなく、アーサーの秘めたる力に惹かれていたらしいキャスの悲しみも尋常ではありません(若干、禍々しいようにも見えるのは気のせいでしょうか)。
 エリザベスに慰められ、マーリンは意気を取り戻します。が、これまでの彼女にはない張り詰めた雰囲気が気になります。一方、彼女に想いを寄せていたエスカノールにとって、このマーリンの変調は痛打に他ならず。体調も悪いようですし、彼の今後も気になるところです。

聖戦へ

 ともあれ、マーリンの主導により、キャメロットの魔神族に対する戦いの編成会議が開かれます。防衛・掃討・強襲の3部隊に戦力を分けて戦おうというわけですが、リュドシエルやギルサンダーの要望で編成には若干の変更が。直接キャメロットに突入し決戦を仕掛ける強襲部隊は、マーリン・エスカノール・リュドシエル・ヘンドリクセン・ギルサンダーの5人と決まりました。
 魔神族陣営も着々と戦闘準備を整える一方、修理を終えたゴウセルを加えた〈七つの大罪〉の5人も意気軒昂。リュドシエルの“祝福の息吹(ブレス・オブ・ブレス)”で殺気だつ聖騎士たちが気になりますが、もはや引き返すわけにもいきません。
 彼方から魔神族の軍勢が現れ、いざ突撃――というところで、今巻は幕。32巻へと続きます。

 各話の間の「番外編/祭壇の王」を読み「これ結末まで出揃ったところで最初から再読しないと分からないかも…」と思ったり、巻末の読者投稿イラストコーナー「〈お絵かき騎士団〉の間」でちょっとほっこりしたりしつつ。既に入手済みの32巻へと読み進みます。

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