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【一会】『七つの大罪 18』……死ねなくなった“狐”の肖像

      2018/07/20

七つの大罪(18) (講談社コミックス)

 ブリタニアの存亡をかけ、騎士団“七つの大罪”や聖騎士達と、“十戒”を筆頭とする魔神族との大きな戦いが始まらんとしている『七つの大罪』。先日18巻が刊行となりました。
 今回の限定版付録は、昨年12月刊行の12巻の時と同様カレンダーです。去年は日めくりでしたが今年は月ごとの卓上カレンダーで、自分としてはこちらの方が使いやすいかもしれません。

 それはそうと内容について書きましょう。
 ドルイドの聖地イスタールで鍛錬に臨んだメリオダスたち。ひとまず一段落ついたみたいですが、なんかすごく見かけが変わっちゃった人もいます(豚のホークなんか半分ドラゴン風です)。力を取り戻したメリオダスが考えたのは、一カ所にまとまった状態の〈十戒〉と戦うのではなく、分散させて各個撃破していこうというもの。前巻ラストでの〈十戒〉への“挨拶”は、そういう意図だったようです。
 メリオダスの考え通り、〈十戒〉は各自別行動に入り、各地に災厄を振りまきに散っていきます。さし当たってメリオダスたちは〈七つの大罪〉最後の1人である傲慢の罪(ライオン・シン)のエスカノールを探すことになりそうです。
 …が、彼らの出番は今巻はここまで。メリオダスたち以外にも、彼らを送り出したザネリたちや、魔神フラウドリンに憑依されたままのドレファスVS聖騎士長補佐デンゼル率いる〈蒼天の六連星〉のデルドレー、アーデン、ワイーヨの対決なども描かれますが、今巻のメインは強欲の罪(フォックス・シン)のバンのエピソードです。

 メリオダスたち〈七つの大罪〉と袂を分かち、最愛のエレインを蘇らせる方法を探す彼ですが、“押しかけ道連れ”になったジェリコとの旅路は続きます。「死人が生き返った」という噂を聞いてやってきたのは盗賊都市レイヴンズ。「Raven」とはワタリガラスのことだそうですが、“あやしい人”を指す語でもあるようで、うさん臭さが漂います。しかもバンはこの街が初めてではない様子。
 宿屋の近くに逃げてきた狐男(ウェアフォックス)を助けた2人でしたが、彼の昔語りとザッピングする形で、バンの幼少時のエピソードが明かされていきます。
 ジバゴという盗賊に拾われた日々と、その別れについての物語ですが、ただ思い出話というだけではなく、今のバンのにとって何がしかのアドバイスになる、そんな話だと自分は読みました。
 かけがえのない大切なものが2つあって、どちらかを選ばなければならない、ということは、割とよくある話です。往年の某霊界探偵の主題歌のように2つ丸を付けて大人を気取りたいところですが、なかなかそうもいかないのが世の中の常。それじゃあどうするのか、選択したことに後悔があったらどうするのか、ということへの一つの答えを、狐男とバンの会話は示していると思います。

 そんなバンたちのもとにも、〈十戒〉の手は伸びてきます。〈十戒〉の一角、「信仰」のメラスキュラのやり方は、バンにとっては(というか、ほとんどの人にとってはそうでしょう)不快だったに違いありません。
 ひと時にせよエレインと話すことが出来たことは、不幸であり幸福だったのかもしれません。が、仮初めの復活を果たしたエレインの言葉は、そういう呪法であるとはいえ、ストレートな生への恨みが込められていて心がえぐられます。
 しかし、これに対したジェリコの叱咤がなかなか熱いです。バンへの想いを爆発させながらも、それが叶わないと知っている云い方が、これまた心に響きます。生者と死者という立場の違いも含め、この2人の対比はドラマティックです。

 そして始まる「真実」のガラン、「信仰」のメラスキュラとバンによる2対1の戦い。とりあえず序盤はバンの優勢のようですが、どうなるか――といったところで今巻はおしまいです。
 次回19巻は来年2月17日刊行予定、限定版には汎用スマホケースが付くとのことです。末尾の番外編「エレインの憂鬱」に、ちょっとばかりきゅんとさせられながら楽しみに待ちたいと思います。

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