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【一会】『七つの大罪 26』……彼が心を棄てた理由

      2018/07/20

七つの大罪(26) (講談社コミックス)

 様々な種族から成る騎士団〈七つの大罪〉と、魔神王に従う〈十戒〉。両者の戦いを描きつつ、背景には各種族の思惑が描かれた”円卓の騎士”的バトルファンタジー漫画『七つの大罪』。引き続き周回遅れ気味(既に27巻も刊行済み)ですが、5月刊行の26巻について書きたいと思います。
 今巻の限定版は特製ノート2冊&下敷きでした。学校の制服なコスプレをしたメリオダスたちがあしらわれたノートは、メモ帳として使ったらなかなかいいかも。ただ、そうすると下敷きは、なかなか使い所がないような気も。。

 それはそうと本編です。引き続き、〈怠惰の罪(グリズリー・シン)〉キングと〈嫉妬の罪(サーペント・シン)〉ディアンヌの試練が続きます。3000年前の世界に精神だけ飛ばされ、それぞれ妖精王グロキシニアと巨人王ドロールの肉体に入ってしまった2人。いま2人の眼前で繰り広げられているのは、3000年前の〈四大天使〉と〈十戒〉の戦いです。
 劣勢となった〈十戒〉の「純潔」のデリエリと「沈黙」のモンスピートは、奥の手と思われる“破壊の権化”「インデュラ」への変身を遂げて襲いかかってきます。
 これを止めたのは、現在のエリザベスと瓜二つの、3000年前のエリザベスでした。そして、独善的なリュドシエルとは反対に、命あるもの全てを救おうとする彼女に心動かされたのは、3000年前のメリオダスだけではなかったようです。
 エリザベスと彼女に協力する者たちの活躍により、「インデュラ」化した〈十戒〉の2体は無力化。「インデュラ」化は不可逆的な変化と思われましたが、それもエリザベスの力で元通りになったようです。デリエリの主観で云えば、3000年前のエリザベスにだまされたということになり、このまま現在のエリザベスと対峙する(23巻)まで、彼女の中でエリザベスに対する恨みはつのっていくということかと思います。

 一方、反魔神族の連合〈光の聖痕(スティグマ)〉の本部「恩寵の光」では、リュドシエルに〈天界〉の門から増援を呼ぶよう命じられた女神族のネロバスタが敵の侵入を許していました。侵入者は、当時〈十戒〉の一角であった3000年前のゴウセルと、「信仰」のメラスキュラの2人。どうやらメラスキュラには、〈天界〉の門を〈魔界〉の門に変えてしまう力があるようです。
 さらに「恩寵の光」では、妖精族でグロキシニアの妹でもあるゲラード達にも波乱がありました。前巻、キングたちに協力を申し出てきた人間ロウに、自分が抱いた印象は正しかったと云えそうです。
 異変を感じたキングとディアンヌは「恩寵の光」に向かいますが、その道中で彼らの前に立ったのは、彼らの接近を予期していたゴウセルでした。キングとディアンヌの精神が入り込んでいるドロール・グロキシニアと、3000年前は〈十戒〉の一角だった彼は敵対関係にあるわけですが、どうも緊張感のないこの「無欲」の戒言の持ち主に、キングとディアンヌは自分たちの来歴を明かします。
 ここから今巻の物語は、ゴウセルにクローズアップしていきます。メラスキュラの〈魔界〉の門を開く力を使って現れたのは、「ゴウセル」を名乗る見知らぬ男。彼が云うには、彼こそが本当のゴウセルであり、その「無欲」の戒言ゆえに魔神王に自由を奪われていたとのこと。その間、外界と接するために用いられてきた人形が、我々の知るゴウセルだった、ということのようです。
 ここに挿入されるエピソードが、外伝「人形は愛を乞う」。人形ゴウセルの過去(今巻の大半は、この外伝以前の時代を描いているんですが、物語の本線から見れば過去ですね)を描いた短編です。「無欲」の戒言の持ち主が、なぜ「色欲」の罪を受けることとなったのか、その経緯が明らかにされています。
 ロボットやそれに類する存在が、スペックの限界に悩まされながらも感情を知り、人を愛していくような物語に、自分は涙が出るほど惹かれるのですが、人形ゴウセルもまた、そうした物語の演者だったように思います。「無欲」であった人形が、心を持ったが故に「色欲」の罪に問われ、心を失ったが故に弁明もしない。文章にすれば当然のように読めますが、咎人に甘んじる彼の無表情には哀しみが滲んでいるように思えます。

 さて、ゴウセル(本体)は、自らの目的を語ります。それは、自由の身となって聖戦を集結させること。彼の言によれば、自らの命と引き替えに戦いを終わらせることができるようですが、戒言に関わる能力なのでしょうか。
 ともあれ、上記の外伝で既に示されているように、人形ゴウセルと本体との別離の時が近いようです。涙を流す人形ゴウセルを慮り、本体のゴウセルはディアンヌに一期一会の友人として何らかの贈り物を託した様子。現在に戻った時、その意味が分かるのでしょう。
 一方、ゴウセルたちの話に業を煮やしたキングは、ゲラード達の居る「恩寵の光」に急行します。そこで見たのは、自らの過去の再演とも云うべき光景でした。ゲラードとロウ、そしてキングを苛むのは、復讐の因果とでも云う巡り合わせです。終わりなど無いように思えるこの繰り返しを、如何に終わらせるのか。それこそが、グロキシニアがキングに課した試練だったのではないでしょうか――。

 と云ったところで本編はお開き。ドルイドの洞窟での修行で小さくなってしまったグリアモール、兄グスタフを亡くしたジェリコのそれぞれのその後や、何だかんだでマーリンに遊ばれるホークを描いた3つの掌編を添えて、今巻はおしまいです。
 既に7月に刊行されている27巻では、ディアンヌ・キングたちの過去への旅の続きに加え、現在のメリオダスたちの物語も進展するよう。急ぎ次巻も手に取りたいと思います。

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