100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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「 人生 」 一覧

第188夜 独りで穏やかに生きていける、つもりだった…『ヒミズ』

「ねぇ・・・・何かないの? ・・・・有名になりたいとか/お金持ちになりたいとか・・・・若者らしいフレッシュなヤツは」「ないね」「オレはモグラのようにひっそりと暮らすんだ・・・・・・・・」


ヒミズ(1)

ヒミズ古谷実 作、講談社『ヤングマガジン』掲載(2001年1月~2002年3月)

 ろくでなしの父親は蒸発し、母親と2人で川沿いの貸ボート屋を営んで暮らす中学3年生の住田(すみだ)のモットーは「普通最高」。漫画家になりたいと夢を語る赤田健一(あかだ・けんいち)や小野田きいち(おのだ・きいち)を、バカにしたり凄いと思ったりしつつ、自分は誰にも迷惑をかけず、誰にも迷惑をかえられたくないと念じている。
 親友だがスリの常習犯の夜野正造(よるの・しょうぞう)や、図らずも話すようになったクラスメイトの茶沢景子(ちゃざわ・けいこ)とのローテンションな住田の日常は、しかし、ふとした切っ掛けで少しずつ「特別」になっていく。
 取り返しのつかない罪を犯した住田は、ついに「普通」の人生を諦め、夜の街を彷徨う。もはや「オマケ人生」を生きる彼の考えることは1つ。
 「社会のために悪い奴を殺す」。
 救い難い世界の只中で、荒んだ住田の心はどこに至ろうとするのか。景子が差し伸べる手は、届くか。

(さらに…)

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第181夜 人生の何気ない1コマに微笑せよ…『雲の上のキスケさん』

「いつもなら目にもとめないチラシの ありふれた一行が/今夜は あたしたちの胸を打つ/“出会いがすべて”/「会えてよかったね」/他に言葉がみつからない/そんな夜」 『雲の上のキスケさん』鴨居まさね 作、集英社『ヤングユー』掲載(1997年年5月~2003年12月) ……

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【一会】『いぬやしき 1』……最終兵器っぽくなった初老の男性の行く先は?

 気が付けば『GANTZ』の終了からはや1年近くが過ぎた先月下旬に、奥浩哉先生の新作である『いぬやしき』1巻が刊行となりました。  事前情報ではお爺さんが主人公ということだけが明かされていたので、前作から一転して日常を描いたものになるのかなー、と何となく思っておりました……

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第176夜 夢現と血まみれの刃の向こう、優しさの咲く…『竹光侍』

「要するに、今の某(それがし)に刀は無用。」「大事な子を一人忘れておいでだよ、お前様」「ん……/見慣れぬ子だな……」「覗いてごらんな、ふふふふふ…」 『竹光侍』永福一成 原作、松本大洋 作、小学館『ビッグコミックスピリッツ』掲載(2006年8月~2010年3月) ……

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【一会】『月影ベイベ 3』……大人の感傷と若者の幻滅

 1巻以来、楽しみに読んでいますが、ここで言及するのは初めてです。『月影ベイベ』3巻。現状では月影にもbabyにもあまり関係がありませんが、それは作者の前作『坂道のアポロン』(100夜100漫第138夜)でもそうで、それでも全編語られ終わった時にはほんのりと意味が薫るとい……

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第170夜 千々に乱れる世界にその死を想え…『さよならもいわずに』

「昨日現像に出した写真を取りに行く/いつもの道/いつもの駅前/何故……/一体 何故/何故キホが!?/何故 あなたではなく………」 『さよならもいわずに』上野顕太郎 作、エンターブレイン『月刊コミックビーム』掲載(2009年7月~2010年4月)  「ヒマだからな!……

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第167夜 誰もが旅人で、だから帰る処が必要だ…『ホテルポパン』

「客室は10/でも1日に予約をいれるのは8組まで/夫婦かカップル/女性同士のみ/そんなんでもやっていけた時代の話だ」 『ホテルポパン』有間しのぶ作、竹書房『まんがくらぶ』掲載2003年12月~2008年11月)+書き下ろし  スキー客すら寄り付かない山奥に建つ小さ……

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第166夜 ひと皿ひと皿に込められた、“本当の私”…『寿司ガール』

「寿司ごときに私の生き方が変えられるなんて/認めたくないけどね!!」 『寿司ガール』安田弘之 作、新潮社『月刊コミック@バンチ』掲載(2011年1月~2012年5月)  深夜の回転寿司で、ふと入った寿司屋で、行きつけの店のカウンターで。それぞれの人生を抱えつつも、……

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第164夜 10代は背伸びし、20代は首をすくめる…『たまりば』

「なんでハルオもまたアイス買ってんの?/さっき食べたじゃん」「オトナは1日にアイス2本食べてもいいんだよ」「いいなぁ〜/オトナ……」「そうでもねーよ」 『たまりば』しおやてるこ 作、エンターブレイン『Fellows!』掲載(2008年10月~2012年2月)  「……

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第163夜 菌と人間、遠いけれども楽しい学びの道…『もやしもん』

「この学校はスゴいよ/いろんな人がいろんな意志で支えあってみんなで遊んでるんだね」 『もやしもん』石川雅之 作、講談社『イブニング』→同『月刊モーニングtwo』掲載(2004年7月~2014年1月)  この春、晴れて東京の某農業大学(これが正式名称)に入学した沢木……

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