100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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「 人生 」 一覧

第162夜 憎しみと受容と愛をもって全天を仰げ…『ほしにねがいを』

「私達みんなひとつだったんです」「あ! もしかして……ビッグバンの前の事?」「今もひとつです/私達みんな違うけどひとつ−−/ここの宇宙もその他の宇宙も/草木も虫も/鳥も魚も海も土も/マグマも時間も/空間も暗黒も/私も輝くんも/有るのはみんなひとつ−−/ただ/それを言葉で分けているだけなんです!」


ほしにねがいを (アフタヌーンKC)

ほしにねがいを中川貴賀 作、講談社『アフタヌーン』掲載(2013年2月~同年5月)

 無差別殺傷犯、叶(かのう)の起こした事件によって父を亡くし、癌で母も亡くした双子の兄妹、藤木輝(ふじき・ひかる)と香夜(かぐや)。高校2年生の夏休み、2人は父方の祖父オキナに呼ばれ、その家でひと夏を過ごすこととなる。
 そんな2人を迎えに来たのは、自らを「田中くん」と呼称する不思議な青年。彼の奇妙な言動に半ば閉口しながら、2人はオキナの家へ向かうのだった。
 オキナが2人を呼んだのは、1200年ぶりに発生する“ある天文的現象”と、それに先駆けて“星を人に変える”仕事を2人にさせるためだ。地球に落下してきた「落ちたてほやほや」の隕石の「情熱」を人に変える。それは、古今東西の多くの星追い人が行なってきた仕事。星は、自分を人にした者の“願い事”をひとつだけ叶えてくれるのだという。
 自ら名前をつけた星たちと、双子と祖父との共同生活が始まる。それは、2人の願い事を探す日々、そして同時に、命の広がり、宇宙の繋がりを感じ取る日々でもあった。

(さらに…)

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第159夜 ともあれ、二人、生きていくのだ…『娚(おとこ)の一生』

「……私は……昔…」「もうええわ/君の過去のなんのは/つまらん/幸せの話をすると君は下を向くんや/過去には戻れへんのに/どうして目の前のぼくを見いひんのや?」 『娚の一生』西炯子 作、小学館『月刊フラワーズ』→『フラワーズ増刊 凛花』(スピンオフ)掲載(2008年7……

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第154夜 状況の千変万化に踊らず信念を貫け…『絶園のテンペスト』

「愛花が殺されたのは不合理だ/魔法も不合理だ/なら二つをぶつければ辻褄が合う/愛花を殺したやつを/この手で殺してやれる」 『絶園のテンペスト』城平京 原作、左有秀 構成、彩崎廉 作画、スクウェア・エニックス『月刊少年ガンガン』掲載(2009年7月~2013年3月) ……

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第153夜 全ては、街の中で過ぎていく…『今日も渋谷のはじっこで』

「わたしはちょっと東京に染まりすぎたのかな/戻れないんだよ/わたしはもう/きっと/地元の習慣は合わない/……/いいね/きみにはまだ/帰れるところがある/夏休みが終われば帰れるんでしょ/わたしには/終わりなんてないけど」 『今日も渋谷のはじっこで』平尾アウリ 作、祥伝……

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第152夜 その追憶は、貴方を縛るものではなくて…『マイガール』

「コ…コハル…/ママを大好きな人と一緒にいたい…」「ぼ…僕には/陽子さんと離れて生きていける方法なんて…/分かりません…/けど…/君がこれから送ろうとしている日々を…/僕は知ってる…/同じ気持ちを持ってるなら…/探す手伝いが出来るかもしれない…/じ…自信はないけど…/い…一緒に………

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第149夜 中学教師と生徒達、全身全霊でぶつかります…『鈴木先生』

「問題児にも/カミサマにも/手のかからないいい子にも囲まれて−−−−/回想モードは終了だ!!/今日も/こいつらに/全力で教えよう/めいっぱい クールに…/せいいっぱい 真摯に-−−−」 『鈴木先生』武富健治 作、双葉社『漫画アクション』掲載(2005年5月~2011……

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第143夜 直し治される、仏心の導きか…『壊れた仏像直しマス。』

「ここを守りたいのは―/お前だけじゃないってことさ……潰させねぇよ/この工房も/お前の夢も」 『壊れた仏像直しマス。』芳家圭三 作、芳文社『週刊漫画TIMES』掲載(2011年7月~2013年8月)  仏師、英道吉(はなぶさ・どうきち)。仏像の製作と修復に抜きん出……

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第138夜 2人の日々は、あのスイングとともに…『坂道のアポロン』

「んふっ/相棒?/いやですよこんなの」「最高じゃないか/一緒にバカやれる友達なんて/大事にしろよ/恋愛と違って/友情ってのは一生もんだからな」 『坂道のアポロン』小玉ユキ 作、小学館『flowers』掲載(2007年9月~2012年7月)  船乗りである父の仕事の……

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第137夜 波乱の刻を咲き誇った、幾つもの魂…『ベルサイユのばら』

「神の愛にむくいる術ももたないほど小さな存在ではあるけれど…/自己の真実のみにしたがい/一瞬たりとも悔いなくあたえられた生をいきた/人間としてそれ以上のよろこびがあるだろうか」 『ベルサイユのばら』池田理代子 作、集英社『週刊マーガレット』掲載(1972年4月~19……

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第135夜 白い囲いの中で、我慢の日々…『失踪日記2 アル中病棟』

「恐ろしい/なんか恐ろしいね/恐ろしいと頭で考える自分の声すらも恐ろしいんだよね」 『失踪日記2 アル中病棟』吾妻ひでお 作、イースト・プレス刊行、書き下ろし(2013年10月)  1998年12月28日、かつて失踪した漫画家は、今度は家族の手によって病院に担ぎ込……

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