【一会】『進撃の巨人 20』……今、まさに死力を尽くす時
2018/07/21
前巻の予告通りの発刊となった『進撃の巨人』20巻。さっそく読んで思ったことなど書いていきたいと思います。
ちなみに、今巻の限定版付録は文章によるサイドストーリーを収録した小冊子。スマホ・タブレット向けサイトに掲載されたものの再録のようですが、「著者 諌山創」とありますので、語られている内容はオフィシャルなものと云っていいのではないでしょうか。収録された27編は、「雨宿りの情景」と「眠りと夢のはなし」に大別され、どれも本編の挿話として、描かれなかった登場人物たちの言動が収められています。
付録の話はその辺りにして、本編のお話をしましょう。
ウォール・マリア奪還作戦を敢行し、シガンシナ区に至った調査兵団ですが、そこに現れたのはジーク戦士長(=「獣の巨人」)を頭とした巨人たち。出城のようなシガンシナ区ではエレンやミカサたちリヴァイ班(リヴァイを除く)&ハンジ班VSライナー(=「鎧の巨人」)&ベルトルド(=「超大型巨人」)、その背後のウォールマリア周辺では、団長エルヴィンやリヴァイ達と「獣の巨人」達という2つの戦いが並行しています。
前巻ラストでベルトルドが「超大型巨人」となり、その爆風でシガンシナ区にいた調査兵団の多くが生死不明となりました。残された人員で、「鎧の巨人」「超大型巨人」を倒さなければなりません。ウォール・マリアの内側でも「獣の巨人」による遠隔攻撃が開始されたことで兵士の損耗は激しく、エルヴィンたちも窮地に立たされます。
さあ、どうする!? という局面ですが、残された選択肢は、それほど多くはありません。逃げるか、それが叶わなければ、何かを犠牲にして切り抜けることです。このギリギリ感、今巻はこの漫画の原点に回帰したと云える気がします。
そんな今巻、自分がとりわけ目を引かれたのは、まずエルヴィンです。個人的な欲求と組織の長としての責任の間での葛藤は、多くの人が経験することだと思いますが、彼の場合は相当に苛烈です。
それでも、決断を下すことができたのは、リヴァイという男がそばに居たからに他ならないでしょう。立ち直り、絶望的な作戦について説明する彼は決然としています。その少し前に、彼は「一流の詐欺師のように体のいい方弁を並べなくてはならない」などと云っていますが、「戦え!!」の叫びに連なる彼の言葉と表情は嘘とは思えません。思わず目頭が熱くなりました。
エルヴィンに応えたリヴァイの働きも見逃せません。練達の戦士であろう「獣の巨人」を相手に、数秒の間に幾度も斬撃を叩き込む様子は、鬼気迫るの一言です。
エルヴィンとリヴァイ、そして多くの名も無き兵士たちの働きで、どうにかウォールマリア内の戦いは収まりつつありますが、シガンシナ側はどうでしょう。エレンもミカサもジャンもコニーもサシャも、持てる力を振り絞っての戦いぶりですが、これはやはり、アルミンの戦いだと云っていいかと思います。
ベルトルドの意図を読み違え、しばらくの間は自信を喪失していたアルミンですが、持ち直してからの作戦立案、そして実施までの一部始終は、まさに凄絶。エルヴィンもそうですが、目的遂行にあたって代償として自分の生命が必要であれば、それも辞さない意志の強さが垣間見られます。
もっと云えば、エルヴィンは団長という立場に半ば引っ張られるということがあり得ますが、アルミンにはそれもありません。彼にあるのは、外の世界への憧れと、それをエレンに託そうという思いのみ。そんなアルミンの戦いが描かれたエピソードのサブタイトル「勇者」は、彼の強靭な精神力とひたむきさに捧げられた言葉なのでしょう。
まだ油断はできませんが、無傷な者は殆どいない状況ながら、どうやら戦闘終結が見え始めたところで今巻は幕。12月9日刊行予定の21巻に続きます。巻末のウソ予告って、もしかして本編の内容と微妙にリンクしているのかも、などと考えながら、調査兵団の被害を確認しつつ、次巻を待ちたいと思います。