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【一会】『ダンジョン飯 4』……決戦の果て、癒やしのひと時と暗雲

      2017/06/18

ダンジョン飯 4巻 (HARTA COMIX)

  コンピューターRPGを思わせるダンジョンの中、その深層でドラゴンに喰われた仲間を救うため、生息するモンスターを調理して栄養補給しつつ冒険を進める一行を描いた『ダンジョン飯』。4巻が出たのも2月の話になってしまいましたが、改めてその概要と感想を記したいと思います。
 ちなみに過日、本作の作者である九井諒子氏の作品全般についてのコラムも書きましたので、一応お知らせまで(外部サイト:現実的であるほど、幻想は深まる――九井諒子氏とその漫画 – シミルボン)。

 今巻最初のエピソードである22話の扉で、ライオス達が冒険しているダンジョンがあるのが「島」であることがさりげなく示されつつ、幕開けは前巻で登場したドワーフの女戦士ナマリたち一行がダンジョンから帰還したところから。一行の主であるノームのタンスが、一息つくまもなく出かけた先は、この「島」の領主と思しき「島主」の館でした。

 どうもタンスは、この島主の依頼でダンジョンを探索し、迷宮の主と目される「狂乱の魔術師」の描いた魔方陣を模写しているようです。ライオス達の当面の目的は炎龍(レッドドラゴン)に食べられてしまった彼の妹ファリンを助け出すことですが、ダンジョンを彷徨ううち、このラスボス的存在に出くわすことにもなるのでしょうか。
 また、人間である島主と、エルフやドワーフといった種族とはあまり友好的でない様子で、特にエルフ達との政治的な攻防も示唆されています。物語はダンジョンの中だけで展開していくわけではなさそうです。
 ダンジョンと云うと、自然発生的に出来上がって冒険者を待っているものと思われそうが、少なくとも本作においては、その土地を所有している者にとってのある種の資産とも云えそうです。ただ、それがプラスとなるかマイナスとなるかは、いかに運用(運営?)するかにかかっているとも云えそうで、島主にはなかなか悩みどころのようです。

 陰ながらファリンを案じるナマリは、飲み屋にキキとカカを誘い、ダンジョンにおいて恐怖を持ち続けることの大切さを教え諭します。死んでも生き返れるダンジョンというシステムは、やはり異常なものと云えましょう。
 それにしても、こういうファンタジックな世界観での居酒屋で飲んで食べて…というのは、自分の長年の夢です。もちろん、この漫画に出てくるモンスター料理を食べるのと同じく、それは完全には叶わない夢なのですが、どこかで近いお店に遭遇できることを願っています。秋葉原の「The Granvania(ザ・グランヴァニア)」なんか良いかもしれませんが、同店は半分メイド喫茶のようですね。それも悪くはないので一度は入ってみようと思いますが、他にファンタジーに全振りしたお店があれば行ってみたいです。

「Wiz5」こと「Heart of the Maelstrom」
あたりがモデルなのかも

 場面は変わってダンジョンの中。諸々の苦難(一部は自分たち自身で招いたりもしていますが)をかいくぐって、ライオスたちは地下5階に到達しました。地下5階は、かつての城下町が沈み込む形で構成されている階層です。
 そんな構造に奇異な印象を抱く方もあると思いますが、従来あった施設が取り込まれる形でダンジョンの一部になっているというのは、やはり古典的RPGである『ウィザードリィ』等では定番かと思います。
 少し前まではオークたちが住んでいたこの階を、いま闊歩しているのは炎龍。かつてライオス達を全滅寸前まで追い込み、そしてファリンを飲み込んだ個体に違いありません。
 ただでさえ当時のパーティより少ない人数で、本当に炎龍に勝てるのか? ファリンがもう消化されていたら――等々、不安がつのりますが、ここはやるしかありません。幸いライオスは魔物マニアですし、プランを練って、腹ごしらえをして、あとは全力でかかるのみです。
 ゲンを担いでセンシが作ってくれた大ガエルのもも肉のカツレツは普通に美味しそう。現実世界でもカエルは食べなくはないですし、これは是非とも味わってみたいところです。数年前に某居酒屋チェーンの「半○衛」でカエル肉を食べた気がしますが、今もメニューにあるでしょうか?
 それはそうと、相変わらずライオスが空気を読めてないところは、ちょっと心配が残ります…。

 準備万端ととのうまでの暇はなく、炎龍との戦闘開始。とりあえずプラン通りに頑張ってみますが、何事にせよ計画通りにいく方が珍しいというもの。当初の作戦から変更を余儀なくされます。
 土壇場になれば、珍しく「腹をくくれ!」と檄したセンシの云うとおり、覚悟を決めて戦うしかありません。敗れれば命が無いのは炎龍も同じこと、倒すか倒されるか、崇高さすら漂うボス戦が展開されます。
 センシも奮戦しますが、自分が目を奪われたのはチルチャックの活躍でした。ハーフフットの鍵師である彼は、スキル的にも性格的にも戦闘向きではありません。その彼が放った一矢は、戦いの行方を決定付けるものだったかと思います。「俺の仕事はここまで来るのを手伝うだけだ」と語ってドライな印象だったチルチャックの咄嗟の攻撃は、炎龍の意表を突いたクリティカルヒットであったと同時に、彼の仲間思いなところを示した場面として、自分の印象に残りました。
 そして、仲間達の支援を受けて最後を決めたのは、やはりライオス。「肉を切らせて骨を断つ」どころか「骨を断たせて命を絶つ」な戦い方は、深く傷ついても回復できるからこそ出来た戦術でしょう。

 さて、勝ったはいいけれど、ファリンとの再会は叶うのでしょうか。遺体が残っていれば、蘇生術で生き返ることができますが、長く活動していた炎龍の体内からは、やっと彼女の遺骨が発見できただけでした。「あの状態から生き返るのか……?」というセンシの疑いには自分も同感です。
 骨格の復元(いつもの魔物料理のレシピ風に描かれているのがおかしいですが)など、幾つかの条件を踏まえた上で、ファリン蘇生の望みはマルシルに託されます。3巻の回想でもそう思いましたが、マルシルって単なる冒険者というよりは少しマッドな研究者な感じがします。しかし、セオリーから外れた手段だとしても、リスクよりも可能性が上回るのなら、やってみる価値はあるというものでしょう。
 果たして、ファリンとの再会は叶いました。マルシルと2人で浴場に入っている場面は、安心感も伴って読んでいる方もじんわり癒やされます。それに、炎龍の肉を使った料理も、勝利の晩餐に華を添えるというものでしょう。ライオスの口ぶりからは、龍マニア界の闇が垣間見えたりもしますが…。
 ライオスたちの当初の目的は果たされ、物語は大団円に思われます。が、しかし、気がかりなことも残っていたり。炎龍の血肉を依り代にして復活したファリンの身体には魔力が満ち溢れている様子ですが、そんな彼女は本当に、かつてライオス達と一緒に冒険していたファリンと同一人物なのでしょうか? 死を許されないダンジョン内とはいえ、自分は何かちょっと違和感を覚えました。これは杞憂かもしれませんけど。
 そして、そのファリン曰く「よくない物」であるところのマルシルの魔方陣は、やはり何か、きな臭い展開をもたらしそうな感じでもあり――というところで、お話は次巻へと続きます。

 次巻5巻の発行日は、今年8月あたりでしょうか。これまでの物語を総括しつつ、現実世界でファンタジーな飲食店を探しながら待ちたいと思います。

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