【一会】『魔法陣グルグル2 8』……人間いろいろ、魔法もいろいろ
2018/07/20
今夏より三度アニメも放映中の、色モノ(「じゃないとは言わない」と今巻でニケ自身も云ってたりする)RPG風ファンタジー漫画、『魔法陣グルグル2』の8巻が6月下旬に刊行されました。相変わらず遅いですが、概要と思ったことなどを書き連ねたいと思います。
今巻のニケとククリ達の足取りは、エボルの町の「怒りのダンジョン」を攻略し、南東にあるフルリ村、次いでその北、謎の秘宝「マキニカ」があると云われるズックニィへと向かう…といったところ。以下、自分がぐっときたポイントを中心に振り返ってみます。
魔王の正体に迫りつつ描かれた「怒りのダンジョン」での冒険ですが、終わってみればそれは、魔王となった存在の魔力の強大さを示す一方で、その精神の“普通さ”を補強するものでした。好きな人に贈ろうとしていた「プレゼント」のセンスこそ独特かもしれませんが(でも、このRPG的世界観ならアリと云えばアリかも)、三角関係に端を発した、やるせない怒りを留め置いたその方法には、魔王なりの優しさを感じました。
「怒りのダンジョン」をクリアしたニケたちは、エボルの町で使われているフリル防具の生産地であり、ミグミグ族の情報もあると云われるフルリ村へ。モンスターとの戦闘あり、フリルの精霊フルリラ様との邂逅ありのフルリ村でのエピソードですが、最も自分の印象に残ったのは、単なる手品のおじさんなのか、偉大な魔術師なのか、いまいち解らないボロクでした。
ボロクがやってることは、ぱっと見はマギー司郎的な多少うさん臭い手品なのですが、そのタネは紛れもない奇跡。ある意味でグルグル以上におかしな魔術スタイルだけに、再登場が望まれます。
一方、魔王陣営の実状もだんだんと明らかになってきた感があります。「怒りのダンジョン」で明らかになったように、魔王と云っても割と普通の女の子っぽいので、その生の声で怒られても別段こわくもありません。強面の部下たちにとっても微妙にご褒美みたいになっているようで。。その辺りを見る限り、ククリの感じた通り魔王はそんなに悪い存在ではないのかもしれません。
そんなことを思っていたら、フリルの精霊フルリラ様にお仕えしているメイネさん45歳から、本当の敵は魔王ではないとの爆弾発言が。復活のために魔王をも利用しようとしている邪神、その名も…いや、そこは本編でお楽しみ下さい。
魔王軍が探しているという、なんだか強大そうな秘宝「マキニカ」。これを奪取されないよう、ニケ達はその在処とされるズックニィを目指すことに。
しかしアッタノカに並ぶ秘境と目されるズックニィへの途次には、トリッキーな仕掛けや敵があって、なかなか手強い感じ。しかも、マキニカを狙い、各国から冒険者たちがズックニィに殺到しているようでもあります。
魔王軍はおろか、大人の冒険者たちにも先を越されそうなニケたちですが、「お友達召喚」のグルグルで力強い仲間を喚び出すことに成功。初代『魔法陣グルグル』でもお馴染みの魔技師トマです。…まぁ、トマ(魔技師)とトマ(胸毛)でひと騒動あった上でのことなのですが(確かに「トマ」って名前からは、睫毛バタバタな濃い顔立ちを連想したりしますけど)、それはともかく。
頭脳派トマを加えたものの、お金を食べて旅のヒントを教えるという石像のようなモンスター、アケメレに翻弄されたり、地面から伸びる謎のラッパ状のものに「尻使い」呼ばわりされるなど、ズックニィへの道のりはまだ半ば。引き続きのへっぽこ具合で、本編は次巻へと続きます。
本編の後ろには、ココルデに弟子入りする前のデキルコを描いた外伝「デキルコのトランク」が収録されています。田舎からの旅立ちや魔法学校での出来事を追いつつ、彼女が“場の空気を扱う魔法”すなわち気体魔法を研究するようになった切っ掛けも描いた26ページの短編ですが、なかなかの名品だと思います。
ククリのグルグルは“魔方陣”という概念が重要ですが、デキルコの場合は“トランクの中の空気”。ボロクは“手品”ですし、魔術は個々人によってスタイルが異なるということかもしれません。気体魔法の研究者エモールや魔法学校の優等生ルーミュも、それぞれ独自のスタイルで本編に登場したくれたら楽しそうです。
ところで気になるのは、ルーミュの台詞から類推すると、魔力の強い人間は割と簡単に魔王になる(なれる)という点ではないでしょうか。本編の魔王は、元は普通の女の子であることが明らかになりましたが、初代『グルグル』の魔王ギリもまた、そういう来歴があったのでしょうか。今後の展開を示唆する言葉のようでもあって、気になります。
ラストの「オマケマンガ」での「グルグルファンの集い」の件や小ネタ集でまったりとしつつ、次巻を待ちたいと思います。次巻9巻は年末くらいになるでしょうか。冒険の続き、楽しみにしています。