「なんでハルオもまたアイス買ってんの?/さっき食べたじゃん」「オトナは1日にアイス2本食べてもいいんだよ」「いいなぁ〜/オトナ……」「そうでもねーよ」 『たまりば』しおやてるこ 作、エンターブレイン『Fellows!』掲載(2008年10月~2012年2月) 「……
「 青春 」 一覧
第165夜 かつてこの国が経験した、凄絶な季節に…『夏のあらし!』
「それでも/夏の間だけでも/生きて再びこの世界に居られることを感謝したいわ/だから精一杯/楽しく生きるわ/命短し/恋せよ乙女/紅き唇/褪せぬ間に…ってね/生きてるあなたは/恋をしなよ!」
『夏のあらし!』小林尽 作、スクウェア・エニックス『月刊ガンガンウイング』→『月刊ガンガンJOKER』掲載(2006年8月~2010年10月)
八坂一(やさか・はじめ)は、チビで眼鏡ながら科学への愛と男気に溢れた中学1年生。実家がある広島の呉から、夏休みを利用して横浜の祖父の家に遊びに来た。炎天下を歩き疲れ、涼みに入った喫茶店「箱船(はこぶね)」で、古風な雰囲気とたおやかな黒髪をもった年上のウェイトレス、嵐山小夜子(あらしやま・さよこ)に一目惚れする。
ふとしたトラブルで2人が触れ合った瞬間、電流のような衝撃が走り、「通じた」と叫んだあらしは一の手を引き外へと飛び出す。裏山を駆け抜けると、そこには60年前、大東亜戦争真っただ中の横浜が広がっていた。驚く一。あらしは、60年前の横浜大空襲で命を落とし、以来、毎年の夏だけを過ごしている幽霊で、特定の人物と「通じ」、手を繋ぐことで過去へと「飛ぶ」能力があるのだ。
厄介ごとを嫌う「箱舟」のマスター(実は稀代の女詐欺師)はあらしをクビにしようとする。あらしを「箱船」に置いてもらうためマスターと勝負し敗れた一は、居合わせた中1の上賀茂潤(かみがも・じゅん)共々、「箱舟」のウェイターとして働くことに。その一方で、あらしが過去へ飛び、当時の人々を戦禍から救うのを手伝う決心をするのだった。
そして、ほどなく波乱は訪れる。あらしと同じ女学校の生徒として空襲に遭い、幽霊となって現世に留まっているカヤ・バーグマン、伏見やよゐ(ふしみ・――)、山崎加奈子(やまざき・かなこ)。彼女らの登場により、過去と現在は交錯の度合いを強めていく。
彼女たちがいちばん綺麗だったとき、全ての人を襲った酷烈さは、友情も恋心も家族への想いも、全ての希望を赤黒く塗りつぶした。
その時と同じ夏の暑さを感じながらも、一も潤も、まだそのことを実感してはいなかった――。
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第163夜 菌と人間、遠いけれども楽しい学びの道…『もやしもん』
「この学校はスゴいよ/いろんな人がいろんな意志で支えあってみんなで遊んでるんだね」 『もやしもん』石川雅之 作、講談社『イブニング』→同『月刊モーニングtwo』掲載(2004年7月~2014年1月) この春、晴れて東京の某農業大学(これが正式名称)に入学した沢木……
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【一会】『銀の匙 Silver Spoon 11』……年度終わりと、愛すべきシビアさ
長いようでやっぱり長かった、エゾノーでの1年が終わろうとしています。と云っても、ここでは初めて言及する漫画ですね。少し説明を加えましょう。『銀の匙 Silver Spoon』は、ガリ勉タイプだった少年・八軒勇吾(はちけん・ゆうご)が、進学先の大蝦夷農業高校で、それまでと……
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第157夜 芸術も友情も、無条件だからいい…『ぼくらのフンカ祭』
「なあ…/オレ多分、一生忘れねーわ。/この光景。/ありがとな桜島。/オレをさそってくれて。」 『ぼくらのフンカ祭』真造圭伍 作、小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』掲載(2012年3月~同7月) 地元の東金松(かねまつ)高校に入学した富山剛士(とやま・たけし)……
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第151夜 「楽しさ」を原動力に、痛くっても、進め…『ハックス!』
「「もうね/この人/頭おかしいんじゃないかってくらい」/「楽しいことだけ考えたらいいんですよ」「大変ですけど/それでアニメはうんと楽しくなります」」「やりましょう/こうしてう…/お/いる場合ではないですよ私たち!」 『ハックス!』今井哲也 作、講談社『月刊アフタヌー……
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第150夜 京言葉が語るボケとツッコミ、小さな絆…『京洛れぎおん』
「奴らと戦う力を持っていても小学生だよ/本気の力をモロに受ければ壊れてしまう/体もまだ未熟なのに/使命だから行くんだ/えらい子なんだよね」「別のイミで俺がえらいんですけど!?」 『京洛れぎおん』浅野りん 作、マッグガーデン『コミックブレイドBROWNIE』→『月刊コ……
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第149夜 中学教師と生徒達、全身全霊でぶつかります…『鈴木先生』
「問題児にも/カミサマにも/手のかからないいい子にも囲まれて−−−−/回想モードは終了だ!!/今日も/こいつらに/全力で教えよう/めいっぱい クールに…/せいいっぱい 真摯に-−−−」 『鈴木先生』武富健治 作、双葉社『漫画アクション』掲載(2005年5月~2011……
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【一会】『夜とコンクリート』……自然と人工物を並べる美しさ
標題作。不眠気味の建築士の、少し疲れてやがて眠れる一夜。 「夏休みの町」。暇暇な大学生たちと、丘の上の戦闘機とお爺さん。からの、反転。 「青いサイダー」。つんけんした母親に色々言われながらも、空想に遊ぶ僕少女。と、屋上のおじさん。 「発泡酒」。その時の“本当……
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第147夜 ぐちゃぐちゃな、自意識と外界の間で…『空が灰色だから』
「物心も付いてない頃/家族で出かけた遠い町 太陽光を浴び黄金色に燃えていた麦畑に今度は私が連れていくから/火が鎮まるまでお話しよう/その後は一緒に流れ星を探そう/古旅館の頼りない窓を優しく開けてせーので見上げた夜空には/星なんてひとつもなくて」 『空が灰色だから』阿……