100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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「 熱い 」 一覧

第201夜 槌音が背を押す、それぞれの決意…『誰がために鋼は鳴る』

「ケンちゃんさんの打つ音は/とてもキレイです/私 あの音を聞くと/がんばれるって思えるんです」「  そっか……」


誰が為に鋼は鳴る

誰がために鋼は鳴る天乃タカ 作、エンターブレイン『Fellows!』掲載(2009年2月~2010年6月)

 神戸の北西、山裾に広がる三木市は打刃物の伝統が残る町。しかし今やその伝統は廃れ、鋼を鍛える槌の音は、ほとんど聞こえなくなっていた。
 そんな中、青年ケンは、事故で急死した師匠が営んでいた石田鍛冶屋に残り、未熟ながらも刃物を作り続けていた。彼が鋼を鍛える音は、古くから土地に住み鍛冶場の炎を司ってきたキツネ神を久方ぶりに呼び起こし、やがて1人の少女、みっちゃんの興味を引く。彼女は、シングルマザーでデザイナーをしている母親の都合で横浜から預けられてきたのだった。
 少女と、青年と、神。三者の出会いはめぐる町の季節の中、静かに波紋を広げていく。
 少女は、神と戯れ、青年の綺麗な槌音に惹かれ、美しく成長するに及んで進む道を決意する。
 青年は、少女と神とに見守られて鋼を鍛え続け、少女の母親サチの助力も得て、やがて土地の伝統を守ろうと決意する。
 そして神は、自らは傍観者であることを受け入れつつ、それでも2人を思い、最後にすべきことを決意する。
 交錯する三者の決意は何を生み、何を失ったのか。トンテンカンの響きは、それでも弛まず鳴っていた――。

(さらに…)

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第200夜 かつての罪と命の重さ、抱えてなお歩け…『鋼の錬金術師』

「目に見えない大きな流れ――/それを「世界」と言うのか「宇宙」と言うのかわかんないけど/オレもアルもその大きい流れの中のほんの小さなひとつ/全の中の一/だけどその一が集まって全が存在する/この世は想像もつかない大きな法則に従って流れている/その流れを知り/分解して再構築する…/そ……

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第199夜 決意も、後悔も、伝えなくちゃいけない…『花もて語れ』

「朗読にとって大事なのは聴き手の人数じゃない。/たとえ聴き手がたったひとりでも、それは読み手にとって大切な大切なお客さんだ。/舞台は、別に本物の舞台でなくたって構わない。/聴き手は友達だっていい。家族だっていい。/本当に聴いてほしかったら、舞台は他人に用意してもらうものじゃなく、……

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【一会】『七つの大罪 12』……絶大なり、漆黒の力

 アニメの人気が盛り上がっていますが、漫画本編の物語も一つのクライマックスと思われる『七つの大罪』、前巻から2か月おいての12巻刊行となりました。ちなみに限定版には、全キャラ誕生日付き2015年日めくりカレンダーが付いています。  今巻は、バンとメリオダスによる“大……

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【一会】『進撃の巨人 15』……それは誰が為の“選択”か

 考えてみたら、作品そのものについて言及するのは初めてです、『進撃の巨人』。  人類を脅かす強大な巨人が闊歩する“壁”の外と、母を殺され全ての巨人を駆逐せんと怒りに燃えるエレン・イェーガー、その幼馴染で卓越した戦闘能力を有すミカサ・アッカーマン、同じく幼馴染で体力的には……

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【一会】『3月のライオン 10』……今ばかりは、“読み”は不要だ

 17歳の少年プロ棋士、桐山零(きりやま・れい)と、彼が独り暮らしをしている「六月町」(東京月島あたりがモデルと思われる)の対岸「三月町」に住むあかり・ひなた・モモの川本家3姉妹との交流を中心に、それぞれの家族の事情とか、個性的なプロ棋士たちの描写が興味深い本作『3月のラ……

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第191夜 逆巻く風雪は、ふたりのために…『千年万年りんごの子』

「留まる力と/変わる力/それでも/すべてのものは無慈悲に終わる/小さな切欠によって/朝日/君だけが確かだ」 『千年万年りんごの子』田中相 作、講談社『ITAN』掲載(2011年12月~2014年2月)  1970(昭和45)年。一組の夫婦が誕生した。  東京の大……

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【一会】『ドリフターズ 4』……“武士”は、それと認めた相手の首をしか欲しがらない

 遅くなりましたが書きます。歴史上の英雄・豪傑たちがファンタジー世界で一堂に会し、地域も時代も越えて共闘あるいは対決するという、男子なら誰もが一度は妄想したことがあるだろうストーリーを、作者の前作(100夜100漫第39夜)同様の洋画チックな台詞回し&一線を超えたマッドネ……

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【一会】『七つの大罪 11』……“ただの言葉”が力になる時

 今月5日からのテレビアニメの影響がやはりすごい『七つの大罪』。勢いづいたところで11巻の刊行となりました。今巻を思い切り圧縮すると、王都での“七つの大罪”VS聖騎士の闘いに一応の決着が……と思いきや、魔神の血によって、事態は更に混迷を極めていく――といったところでし……

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【一会】『七つの大罪 10』……彼らの因縁と彼の罪状

 お盆休み明けと共に刊行された『七つの大罪』の10巻。今巻では前巻に引き続き、“七つの大罪”が侵入した王都でのキングVSヘルブラム、アーサー(&メリオダス)VSヘンドリクセン&ギルサンダーという2つの戦いが繰り広げられています。  しかし、なんといっても今回の主役は……

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