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【一会】『七つの大罪 11』……“ただの言葉”が力になる時

      2018/07/20

七つの大罪(11) (講談社コミックス)

 今月5日からのテレビアニメの影響がやはりすごい『七つの大罪』。勢いづいたところで11巻の刊行となりました。今巻を思い切り圧縮すると、王都での“七つの大罪”VS聖騎士の闘いに一応の決着が……と思いきや、魔神の血によって、事態は更に混迷を極めていく――といったところでしょうか。

 今巻前半はメリオダスVSギルサンダー(&ヘンドリクセン・女魔術師ビビアン)の闘い。1対3という不利な状況下でもまだ若干余裕あり気なメリオダスは流石。けれど、やはり印象的なのは、この戦いの幕引きに繋がった、とある2つの言葉でしょう。
 他人にとっては何気ないように思える言葉(言葉だけでなく品物なんかも)でも、その人の経験や状況によっては、まさに心身を奮い立たせるものであったり、あるいは安心させるものであったりする。そういうことは現実でも結構あるんじゃないかと思います。騎士の教えと、ほんの小さなおまじないが決定打になった、熱くも痛快な幕切れと云えそうです。

 それと相並んで痛快なのが、やはり“紅蓮の豚”こと飽食の罪(ボア・シン)マーリンの初披露シーンかと。伝説通り、若きアーサーの助言者としてフードを被った姿で登場していましたが、ここで全身像が明らかになりました。
 伝説ではお爺さんとして描かれることが多いマーリンですが、“七つの大罪”としてのマーリンは、首筋に紅蓮の豚の文様が入った黒髪のすっきり系なおねーさん。服装もアヴァンギャルドでなかなかに扇情的(首回りにボアが付いているのはボア・シンとかけている?)です。もちろん、メリオダスやキングの例もあるし魔術師だし、見た目通りの年齢とは限りませんけどね。実のところ人間かどうかも。
 マーリンとアーサーの関係は友人にして師弟とアーサー自身が云っていますが、若輩の男子と年上女性という組み合わせは、初連載の『ライジングインパクト』(100夜100漫第58夜)のガウェインと霧亜を筆頭に、鈴木央作品ではしばしばみられる構図です。作者の鈴木先生がこの関係にどれほどのこだわりがあるかは、今巻と同時発売の短編集『七つの短編 鈴木央短編集』収録の「迷え子羊たち!2」あたりに如実に表れているかと。そんな鈴木作品のメインモチーフ(?)の最先端たる2人は、どんなやり取りを織り成していくでしょうか。

 さて、マーリンの涼しげな活躍もあり一件落着と思われつつも、魔人の血の力は物語に更なる悲劇を添え、冥府の女神の言はバンを突き動かします。
 残りの“大罪”はあと1人。傲慢の罪(ライオン・シン)エスカノールとはどんな人物か。そして10年前のマーリンがとった行動の真意は。まだ物語にかかった霧は深いようです。
 そういえば、今更ですがメリオダスという名前は、この漫画が下敷きにしているであろう『アーサー王の死』において、円卓の騎士の1人トリスタンの父王として登場しています(ちなみにバンとエレインも夫妻として登場)。しかし早逝しているとのこと。このことが本作に絡んでくるのか、こないのか、それは解りませんが、とりあえず主人公の命名の由来も分かったところで、今後の展開を楽しみたいと思います。

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