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【一会】『七つの大罪 37』……打倒と解散と別れ。しかし暗雲は晴れず

      2020/02/27

七つの大罪(37) (講談社コミックス)

 人間、魔神族、女神族の3勢力の関係を背景に、巨人族や妖精族も交え、魔力と剣技、友情と恋心が彩を添える古英国バトルファンタジー『七つの大罪』。色々あって、サイト更新自体、随分と間が空いてしまいましたが、昨年6月刊行の37巻から展開を追っていこうと思います。

決着の時…か?

 騎士団〈七つの大罪〉および人間・女神族の連合が魔神族に抗う戦いはクライマックスに。世界を脅かす魔神族の首魁にして、主人公メリオダスの父親でもある魔神王が顕現し、現実世界では「強欲の罪(フォックス・シン)」のバンと、精神世界ではメリオダスと、両局で激しい戦いを繰り広げています。
 苦戦するメリオダスを支えるため、「色欲の罪(ゴート・シン)」ゴウセルの力により、王女エリザベスと〈大罪〉メンバーたちが精神世界に駆け付けたところまでが前巻の内容だったかと思います。
 思えば久しぶりに顔を合わせることになったメリオダスと仲間たち。〈大罪〉メンバーはもちろん、想い合うエリザベスとの再会には込み上げるものがあります。仲間との再会はメリオダスが再び戦う力となったようです。

 現実世界では、精神世界に行った仲間たちの肉体を守るため、バン、四大天使のリュドシエルとマエルが応戦しますが、魔神王の超魔力の前に防戦一方。ここで彼らに加勢してきたのが、元〈十戒〉の一角だったメリオダスの弟、ゼルドリスでした。
 メリオダスと同じく実の父にあたる魔神王に、ゼルドリスは自分のかつての恋人・ゲルダの処刑について問い質します。“恋人を救う”という目的だけに突き動かされていた彼は、ここに至って魔神王の考えとやり方と完全に対立することとなったようです。
 精神世界ではメリオダスが凝縮された闇の力で、現実世界ではゼルドリスとバンの連携で、それぞれ魔神王を圧倒し始めます。さしもの魔神王も劣勢となり、ついに現実世界での決着を待つ形に。エリザベスの“聖櫃(アーク)”、「暴食の罪(ボア・シン)」マーリンの“完全なる立方体(パーフェクト・キューブ)”、「怠惰の罪(グリズリー・シン)」キングの「花粒園(バレン・ガーデン)」による三重結界に捉えられた魔神王に、ホークが、そして「嫉妬の罪(サーペント・シン)」ディアンヌが追撃し、さらにバンの最後の一撃が深々と突き刺さりました。
 そうして、ついに魔神王は斃れ、彼が宿っていた肉体は元の持ち主――メリオダスに復帰しました。

危機は去ったけれど

 同刻、エリザベスの実家でもあるリオネス城付近に来襲していた魔神族たちも撤退を開始します。
 力を使い果たしたリュドシエルは天に召され、他の者とて1人も無傷ではありません。が、〈七つの大罪〉と女神族、そして聖騎士たち――人間たちの勝利です。
 しかし、エリザベスとメリオダスにかけられた呪いは解かれていません。このままでは、王女エリザベスはあと1日で命を落とすことになるでしょう。本来はどうにかして魔神王に呪いを解かせるということでしたが、いざ戦いが始まってしまえば、そんな余裕はありませんでした。
 もはや打つ手無しということで一同は悄然とします。が、メリオダスはあっけらかんと「方法はある」と言い放ちました。
 半信半疑で面々が見守る中、マーリンの助力を得て、メリオダスは可視化された「永遠の生と永劫の輪廻」の呪いを打ち砕きます。メリオダスはこともなげにやっていますが、それを見るバンやマーリンの表情は硬いもの。手放しでは喜べないということがうかがえます。

酌み交わす一夜

 ともあれ、戦いは終わりました。リオネス城に集った皆の前で国王バルトラが聖戦終結を宣言し、久々に穏やかな時間が訪れました。ギルサンダーやハウザー、グリアモールら若き聖騎士たち、ドレファスとヘンドリクセンの元聖騎士長コンビ、ギーラとジェリコの女聖騎士と妖精族や巨人族たちと、それぞれに人間関係が紡がれていきます。
 そんな中、メリオダスとバンは、自分は戦力外だったと意気消沈するホークに話しかけていました。弱くても勇気あるホークを尊敬するというメリオダスらの言葉は、心からのものでしょう。加えて、煉獄で出会った兄・ワイルドが口ずさんでいた子守唄が、ホークの滂沱を誘います。この兄弟にはぜひ再会して欲しかったのですが、叶わなさそうなのが悲しいところです。
 メリオダスが営んでいた酒場〈豚の帽子亭〉も新装開店し、種族の分け隔てなく大勢が集って酒を飲み交わします。その様子を描いた、誰もが微笑んでいるp.98~99の見開きが秀逸です。
 こんな平穏が続けばいいのに、と思ってしまいますが、やっぱりそうはいきません。
 いまやメリオダスは魔神王と同等の存在。その強すぎる力は、この世界に長く存在していられない。バンが恋人エレインに説明したことを要約すると、そうなります。

買い出し、そして

 翌朝、すっかり〈豚の帽子亭〉従業員になった〈七つの大罪〉一同は、飲食物や備品の仕入れに赴きます。が、わくわくする半面、どこか淋しい雰囲気が漂うのは、別れの時が近いことに皆が気付いているためでしょうか。
 やっぱり、エリザベスは気付いている(そして受け入れるつもりの)ようですし、他の面々も何となく察していました。避けられない別離の予感が、場の空気を重くします。この世にいられないメリオダスは、近いうちに魔界に去らねばならないようです。
 ところで、買い出しからの帰り、メリオダスが寄り道したのはエジンバラにある大きな縦穴でした。その最奥でメリオダスは、かつて自ら封印した吸血鬼の少女を解き放ちます。少女の名はゲルダ。ゼルドリスが求めてやまなかった恋人です。
 「賭けをしていた」と語る彼女ですが、その勝負によらず、心はまだゼルドリスにあるようです。いずこかへと消えた彼を探し、ゲルダもまた虚空へと飛び立ちます。
 去り際のゲルダの言葉は、エリザベスに決意をもたらしたようでした。「娘エリザベスを娶り、国王になってくれ」という、バルトラからメリオダスへの願いは、その娘自身によって拒絶されます。これからメリオダスが向かう魔界への同行。それが、エリザベスの出した答えでした。

魔神王潰えず

 周囲の人々(特にバルトラ)はもちろん驚きますが、エリザベスの決心は揺るぎません。メリオダスもまた、これまでの3000年――転生し続けるエリザベスを求め続けた3000年を総括し、万感を込めて〈七つの大罪〉解散を宣言しました。
 かくして、別れの日が訪れました。メリオダスとエリザベスは魔界へ。ホークもまた、亡き兄のお墓を作るために煉獄に赴くと言います。
 別れを惜しみつつ、2人がマーリンの出現させた門をくぐろうとした刹那、エリザベスに降りかかる災厄がありました。
 マーリンの機転でエリザベスは命拾いしましたが、メリオダスが消滅させたはずの「永劫の輪廻」の呪いが健在であることが明らかに。混乱する一同をよそに、再度メリオダスが破壊を試みますが、それは叶いません。
 このことが示す事実はひとつ。呪いの術者たる魔神王――正確には魔神王の力を有した「戒禁」を一手に所持している者――が健在だということです。
 メリオダス以外にそれができる人物はひとりだけです。〈原初の魔神〉として戦い、敗れた最上位魔神キューザックが偶然みつけた10の「戒禁」。それを埋め込まれたゼルドリスが、本作のいわゆる“ラスボス”ということになるのでしょうか。
 もはや望んではいなかった魔神王への変貌を果たしたゼルドリスと、再び表情の引き締まるメリオダスたち。戦いはまだ終局ではないようです。

 というところで、今巻は幕引き。新展開に惹きつけられ、既に入手済みの38巻に進みたいと思います。

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