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【一会】『七つの大罪 27』……憂心去らぬ、再集結

      2018/07/20

七つの大罪(27) (講談社コミックス)

 魔の血を受け継ぎながら平和を願ったメリオダスを団長に、様々な種族が集った7人の騎士団〈七つの大罪〉の戦いと、過去の因縁を解き明かし、アーサー王の伝説へと連なる前日譚『七つの大罪』。27巻が出たのは去年7月です。既に29巻まで出ている本作ですが、まずは今巻から、読んで思ったことを書きたいと思います。
 今巻の限定版は特製Tシャツ付き。鈴木先生の描き下ろしイラストが背面にあしらわれたデザインはもちろん、綿100%という点も、なかなかいいと思いました。

 大まかに云って、今巻は再集結と再出撃の巻ということになるでしょう。まず描かれるのは、3000年前に飛ばされていた〈怠惰の罪(グリズリー・シン)〉キングと〈嫉妬の罪(サーペント・シン)〉ディアンヌの、現在への帰還です。
 そもそも〈十戒〉として対峙した初代妖精王グロキシニアと巨人王ドロールにより、「試練」として過去に送り込まれた2人。どうやらその「試練」には揃って合格のようです。
 合格の条件は、過去のグロキシニアやドロールとは違った選択をすることだったみたいですが、「どうしても、こうしなければならない」と思うことも、他の人からすれば割とそうでもない、ということは有り得ます。特にディアンヌの選択は、ドロールには無理でも彼女にとっては自然なものだったということでしょう。
 かくして、試練を乗り越えた2人はひと回り成長し、お互いの関係も一歩前進。彼らの行動は、グロキシニアとゲラードの兄妹関係も修復することとなったようです。

 現在に戻ったキング・ディアンヌを含め、〈七つの大罪〉は再集結します。キングとディアンヌが驚いていますが、そういえばメリオダスが復活したことを、キングとディアンヌはまだ知らないんでしたね^^;。
 ところで、キングとディアンヌの過去への旅は、もう1人の団員の過去を描き出してもいました。〈色欲の罪(ゴート・シン)〉ゴウセルです。彼のなくした心を取り戻す。それが、ディアンヌが3000年前の世界で約束したことでした。
 〈七つの大罪〉七つの掟その四『仲間の危機は団員一丸 全員で助ける』ということで、ディアンヌだけでなく、団員全員がゴウセルのために協力します。その結果、長らく続いたゴウセルの自己という存在をめぐる苦悩は、ひとまず解決した様子(まぁメリオダスとバンとエスカノールは出番なしでしたが)。
 無表情・無感動で、飄々とした強者ゴウセルも魅力的でしたが、微笑を湛えた今の方がいい感じです。それに感情を取り戻しただけで、言葉の切れ味は以前よりも増したようですし。

 これにて〈七つの大罪〉は集結完了。時を合わせたように、メリオダスのお店だった〈豚の帽子〉亭もリニューアルして落成しました。移動できる待機場所という感じで、団員たちの部屋もあるようです。そしてその一室には、キングの妹にしてバンの恋人、既に死者となりつつあるエレインの姿もありました。
 彼女のことも心配ですし、3000年前の世界でディアンヌ達が見たエリザベスそっくりの女神族のこと、マーリンすら手を焼きそうな、残った〈十戒〉「敬神」にして魔神族としてのメリオダスの弟でもあるゼルドリスの実力など、気がかりはまだ山積みですが。ともあれ、再集結と新〈豚の帽子〉亭の完成を祝して宴会が催されます。世界が窮地に陥る中、彼らが集ったことは希望です。が、それにしても不安は拭い切れません。
 メリオダスによれば、目下の〈七つの大罪〉としての目的は、ゼルドリスの戒言によって虜となったリオネスの住人たち・聖騎士の救出とキャメロットの解放です。しかし、マーリン個人の目的はそうではないようで。彼女の第一目的は、王国の民を救うことでもキャメロット解放でもゼルドリス打倒でもなく、「アーサーを護ること」。
 この漫画は鈴木先生なりの“『アーサー王物語』の前日譚”ですから、そう驚くことではありません。彼女にとって「希望そのもの」だというアーサーが、この先どう物語に絡んでくるのか、楽しみです。

 魔女ビビアンによって行方の知れない想い人・ギルサンダーを追って旅立つ姉マーガレットを見ながら、エリザベスはメリオダスと語らいます。16年前にも3000年前にも、自分そっくりな人間が存在していた。そのことについての疑念をエリザベスは口にしますが、メリオダスはまだ何も云う気は無い様子。しかし、マーリンにかかった呪いを解こうとするエリザベスは、そこに介入を試みることで呪いをかけたゼルドリスと対峙、真実の一端を知ることに。彼が語ったことは、エリザベスの心に大きな波紋を拡げます。
 行き違う幾つかの思いを内包しつつ、〈七つの大罪〉はキャメロット解放へと向かいます。まずは、キャメロットへの侵入を拒む結界「次元のひずみ」を解除するため、その発現地点・城塞都市コランドを目指します。ゴウセルは寄り道したいみたいですが。
 エレインが憂うのは、かつてバンが打倒したあの〈十戒〉が待ち受けているということ。確かにとどめを刺したはずなのに――という驚きとともに、メリオダスたちの強さが際立つ巻末の「番外/祭壇の王⑥」を挟んで、物語は次巻へと続きます。
 続く28、29巻は既に刊行済み。明かされるメリオダスとエリザベスの因果がどんなものか、震えて読み進みたいと思います。

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