漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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第20夜 闘いに臨む覚悟と、その果ての慈悲…『怪奇警察サイポリス』

「汝の魂に、幸いあれ…!」


怪奇警察サイポリス 第1巻 (てんとう虫コミックス)

怪奇警察サイポリス上山道郎 作、小学館『月刊コロコロコミック』掲載(1991年12月~1995年6月)

 新聞部の部長を務める中学2年生、鬼塚勇気(おにづか・ゆうき)。同級生の新聞部員、三原千夏(みはら・ちなつ)に押されつつも部を取り仕切る毎日だが、彼には別の顔があった。悪魔や妖怪を退治し人間を守る怪奇警察、サイポリス。勇気はその一員として戦う戦闘員なのだ。更に彼は鬼の血を引く半人半妖の身であり、敵との闘いにおいても鬼に現身(げんしん)することで超人的な戦闘力を発揮する。
 戦闘をサポートする金田博士、戦闘員の神和住京子(かみわずみ・きょうこ)らとともに幾多の妖怪と戦いを繰り広げる勇気。やがて彼の血筋が因縁となり、魔界をめぐっての闘いが始まる。

敵の幸いを願うということ
 1990年代前半の『コロコロコミック』において、比較的硬派なバトル漫画として本作は人気を博した。自分はそれをリアルタイムで読んでいたのだが、当事の『コロコロ』掲載作品としては垢抜けた画風で、ちょっと大人びたストーリー展開もあって引き込まれた。戦闘シーンには『ドラゴンボール』や『ジョジョ』の影響がみられるが、そうした点は当事のバトル漫画ならば別段珍しくもないし、当事20歳そこそこの若描きだった作者の試行錯誤とも取れて今となっては微笑ましい。
 独創的なのは、決め台詞にみられるように“倒した敵の幸いを願う”ところだと思う。妖怪や悪霊には救われない身の上の者が多い。そうした者をただ滅ぼすのではなく、その後の魂の救済を願うのだ。一歩間違うと独善的な物言いなのだが、主人公が持つ鬼(=超自然的な力の象徴)という属性によるものなのか、不思議と納得させられる。とはいえ、自分にとっての本作ベストバウトは関西弁の巫女風サイポリス京子VS無限の再生能力を持つ四柱王の西の将、夜玖沙(ヤクシャ)との闘いなのだが。

思春期の終わり
 主人公の勇気は鬼の血を引く強者として描かれるが、一方で純然たる人間でないことへの引け目を若干ながら感じている。これは古今東西の変身ヒーローに共通のテーマと云えるだろう。
 第1部の終盤では、このことがフォーカスされるのだが、彼の場合、このことについて考えるとき、そこには自分の鬼の力の源である親との決別ないし精神的独立という通過儀礼が必要となってくる。中学2年生といえば『新世紀エヴァンゲリオン』を引くまでもなく、自己の確立の時期である。『コロコロ』の読者層としてはいささか早いテーマだったのかもしれないが、やがて来る時の予感として、彼の懊悩とは少年たちの心の深層に残ったのではなかったか。
 本作は第2部の序盤で打ち切られてしまったようだが、第1部の結果として自己が固着した主人公に、読者はそれほど共感できなかったのだろう。もう少し読者の年齢層が幅広い媒体に載っていれば、続きが読めたのかもしれない。自分と同じように懐かしむ人が多かったのか、2010年に漫画復刊サイト「コミックパーク」から復刊が成されている。

*書誌情報*
☆通常版…新書判(17.4 x 11.4cm)、全9巻。絶版。
☆復刊版…復刊サイト「コミックパーク」にて購入可能。

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第19夜 ドタバタラブコメの舞台で、彼らは未来を掴む…『ラブひな』

「浪人したって/遭難したって/どんなひどい目に遭ったって/全部全部幸せだった!!」 『ラブひな』赤松健 作、講談社『週刊少年マガジン掲載(1998年10月~2001年10月)  大学受験に失敗し、あえなく二浪目に突入した浦島景太郎。勉強はだめ、運動もだめ、外見は冴……

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第18夜 泥濘に蒔かれた種が見出す“よすが”のかたち…『漂流教室』

「お母さん……ぼくの一生のうちで、二度と忘れることのできないあの一瞬を思う時、どうしても、それまでのちょっとしたできごとの数々が強い意味をもって浮かびあがってくるのです。」 『漂流教室』楳図かずお 作、小学館『週刊少年サンデー』掲載(1972年5月~1974年6月)……

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第17夜 二次ヲタにだって二次ヲタなりの家族愛…『おたくの娘さん』

 2013/05/21  100夜100漫,

「あのお父さん…/ひとつ聞いていい?/お父さんって…/『おたく』なの?」「ごめんね」 『おたくの娘さん』すたひろ 作、作者Webサイト上掲載(2005年2月23日~)→富士見書房『月刊ドラゴンエイジ』掲載(2006年11月~2011年10月)  守崎耕太(もりさき……

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第16夜 少女の言葉はふわふわと人の営みを映す…『ともだちパズル』

「もうヒミツなんか/どっちでもええわ/わたしみゆきちゃんやっぱりすき/だいだいだいすき」 『ともだちパズル』おーなり由子 作、集英社『りぼんオリジナル』掲載(1988年12月~1990年3月)  矢野ようこは関西で暮らす小学3年生の女の子。仲良しはみゆきちゃん。空……

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第15夜 日本の工場を担う“蟻んこ”の誇りに笑って咽け…『工場虫』

 2013/05/19  100夜100漫, ,

「オレたちの手で今の世の中ひっくり返してやるんだよ!」 『工場虫』見ル野栄司 作、e Book Japan『KATANA』掲載(2009年4月~10月)  株式会社アリンコハイテック横浜工場(といっても山の中)に勤める原成守(はらなり・まもる)は、製造部での仕事の……

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第14夜 個人VS個人、その最高水準の衝突…『グラップラー刃牙』

 2013/05/18  100夜100漫,

「強くあろうとする姿は――――かくも美しい!!!」 『グラップラー刃牙』板垣恵介 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(1991年9月~1999年6月)  東京ドームの地下には闘技場がある。そしてそこでは、各々の世界で現役を担っている格闘家たちが、夜な夜な真剣……

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第13夜 下衆な博士と幼女なロボの妙味…『無敵鉄姫スピンちゃん』

「まてよ…てことは…/エロボットのボディーが完成したら…/スピンがエッチな事するって事!?」 『無敵鉄姫スピンちゃん』大亜門 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(2004年3月~6月)  ロボットが社会に浸透しつつある21世紀。実家から離れたお嬢様女子高に進学……

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第12夜 欠ける月の下、優しい死とピアノの調べは歌う…『下弦の月』

「あの月が欠けてゆく2週間があたし達に定められた運命なら/あの夜見た月が満ちる事は永遠にないだろう」 『下弦の月』矢沢あい 作、集英社『りぼん』掲載(1998年3月~1999年5月)  女子高生の望月美月(もちづき・みづき)は、街中でギターを弾く不思議な白人、アダムと……

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第11夜 いにしえの倭国で、二人の視る夢は続く…『邪馬台幻想記』

「…そうだ/オレは伊予を高天の都へ連れていく……/倭国を統一するために…/そしてオレは見てみたい…/伊予が造る理想の国を…」 『邪馬台幻想記(やまとげんそうき)』矢吹健太朗 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1999年2月~6月)  幻想の時代――紀元3世紀。倭……

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