「神社は宗教だがビジネスなんです/そしてアミューズメントだ」 『神社のススメ』田中ユキ 作、講談社『月刊アフタヌーン』掲載(2004年4月~2006年6月) 大神社の宮司の次男、里見信二郎(さとみ・しんじろう)。実家の神社は兄に任せ、自分は好きな舞を仕事にしよう……
第41夜 豪華で特濃。中華をめぐる仁義なき戦い…『鉄鍋のジャン!』
「料理は勝負だ! 勝てばいいんだ!! 」
『鉄鍋のジャン!』西条真二 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(1994年12月~2000年3月)
国内最高峰といわれる東京銀座の五番町飯店に、謎の挑戦者がやってきた。飯店のものよりも美味しい炒飯を手際よく作った、まだ10代の挑戦者の名前は秋山醤(あきやま・ジャン)。“中華の覇王”と呼ばれた料理人、秋山階一郎(――・かいいちろう)の孫だという。既に世を去った階一郎の友人にしてライバルだった飯店オーナーの五番町睦十(ごばんちょう・むつじゅう)は、ジャンを五番町飯店に雇ったのだ。
祖父のライバルを前に、ジャンは「数か月のうちにあんたを追い越してみせる」と言い放つ。しかしその前に、“最低の性格と最高の舌”を持つ料理評論家の大谷日堂(おおたに・にちどう)を始め、国内外の中華料理界の曲者たちが立ちはだかるのだった。
「料理は勝負」と言い張り、勝つためには手段を選ばないジャンと、オーナーの孫娘で「料理は心」が信条の五番町霧子(――・キリコ)はことあるごとに衝突する。いがみ合う2人を中心に、若手料理人が参加するトーナメント形式の料理バトル、全日本中華料理人選手権大会が開会する。
誠実な悪童
まず断っておきたいのだが、本作の料理勝負におけるジャンのライバルには、まともな性格の人間がほとんど登場しない。金と名誉欲に溺れた評論家を皮切りに、金持ちで上から目線の御曹司、危険な効能を引き出したがる薬膳マニアなど、性格の悪い卑劣な人間ばかりである。それをさらに卑劣なやり方で屈服させるのがジャンのやり方だ。ここにある種のピカレスクロマン(悪漢小説)的なカタルシスを感じることができるだろう。
また、卑劣といっても、ジャンは料理そのものは真面目に作る。この“食べる人に最大限の美味いものを”という点においては、ジャンは誠実この上ないのだ。労力的に全く見合わず常人なら断念するような手法を、料理トーナメントでも迷わず選択し、それによって自ら手傷を負うこともある。また毒舌ではあっても暴力を振るうことはほとんどない。微妙なバランスながら、これによって本作はアウトロー的な作品によくある下品さを消し去ることに成功している。
この乱雑さが中華だ
キリコという清廉さを湛えた人物はいるものの、どぎつい人物が次から次へと群雄割拠する作品世界は、常に獄彩色に照り輝いているように見える。本物の中国や横浜などの中華街に行ったことがある人は分かるかもしれないが、このギラギラした感じが中華なのだと思う。宇河弘樹に『朝霧の巫女』の前日(前時代?)譚を描いた作品を収録した『妖の寄る家』という短編集があるが、その中に「龍門亭的姑娘」という掌編が収められている。ぎゃあぎゃあやかましい中華料理屋で観光客が料理を食べるというだけの話なのだが、まさにこの感じを全体でやっているのが本作と云えるだろう。あらゆるものが主張するカオスの中から、極上の美味が立ち上がってくる。それが中華料理というものなのだろう。
*書誌情報*
☆通常版…新書判(17.4 x 11.4cm)、全27巻。絶版。
☆MF文庫版…文庫判(14.8 x 10.6cm)、全13巻。電子書籍化済み(紙媒体は絶版)。
☆MFR(コンビニ)版…B6判(18.2 x 12.8cm)、全16巻? 絶版。
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「私にとって日の光は大敵ではない/大嫌いなだけだ」 『HELLSING』平野耕太 作、少年画報社)『ヤングキングアワーズ』掲載(1997年5月~2008年9月) 大英帝国王立国教騎士団。通称ヘルシング機関は、永くイギリスと王室を怪物――ことに吸血鬼――から守護し……
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第35夜 目を逸らさず、歩みを止めないということ…『るろうに剣心』
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第34夜 困惑も諍いも一時の旅情も乗せて、列車は行く…『鉄子の旅』
「列車を乗り降りして、久留里線の駅、すべてを見て回るんだ!!」「なんだそりゃーっ!!」 『鉄子の旅』菊池直恵 作、小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ増刊IKKI』→『月刊IKKI』掲載(2002年1月~2006年10月) 売れない女性漫画家キクチは、小学館の漫……
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第33夜 淋しさの記憶を抱え、彼らは奇跡と親和する…『浪漫倶楽部』
「だからこそ浪漫倶楽部の出番だろ!!/これから一緒に不思議な事件が起きたら一つ一つ解決していけばいーじゃないか!!」 『浪漫倶楽部』天野こずえ 作、エニックス『月刊少年ガンガン』掲載(1995年5月~1998年2月) 火鳥泉行(かとり・せんこう)は夢ヶ丘中学校の……
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第32夜 白球とバット(釘付き)にかけた青春…『たのしい甲子園』
「是非もない!」 『たのしい甲子園』大和田秀樹 作、角川書店『月刊少年エース』掲載(1998年5月~2000年9月) 県下一の不良高校、瓦崎工業高校。校舎内にバイクの改造屋があり、些細なことで乱闘が始まるワルの名門である。 瓦工をシメようと入学してきた桂ケン……