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第174夜 現代に咲く古式ゆかしい心地よさ…『チマちゃんの和箪笥』
「名前って……/私は和久井朝子ですが」「じゃあよく聞いて/朝子さん/朝子さんが この道を望んでるんじゃなくて/朝子さんの中の童(わらべ)が この道を望んでるの/その童が入部したのよ/敬意をはらって命名させてもらったわ」

『チマちゃんの和箪笥』佐野未央子 作、集英社『コーラス』(付録「和コーラス」にて読切掲載)→『ココハナ』掲載(2011年7月~2012年10月)
面倒くさがりの大学生、和久井朝子(わくい・あさこ)は、ある朝ふいに着物で暮らしてみたいと思う。何となく周囲に合わせた服を買って生きてきたことを無駄と感じたのだ。
何かに導かれるように朝子が門を叩いたのは、風変わりなサークル「和ノ道倶楽部」。和服美人な部長、高岡文子(たかおか・ふみこ)に「自分の中の童」を「チマ」と名づけられ、朝子=チマは和の道を歩み出す。
数年後、大学を卒業し、幾つかの経験を積んだ朝子は、祖母の照子(てるこ)が住む東北のとある小さな城下町で、着物を扱う「千麻や」を営んでいた。商売としてはかつかつではあるものの、祖母や近所の人々とのおしゃべり、訪れるお客との交流を通じて朝子の忙しくも穏やかな日々は流れていく。
そんなある日、彼女は「和ノ道倶楽部」の先輩で部長と親密だった光本真祥(こうもと まさき)と再会する。今は紡績会社の若き経営者となった光本は、朝子にある提案を持ち掛ける。
旧い習慣の残る城下町で、朝子の戸惑いは続く。彼女の中のチマは、まだ何も云わない——。
