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第170夜 千々に乱れる世界にその死を想え…『さよならもいわずに』
「昨日現像に出した写真を取りに行く/いつもの道/いつもの駅前/何故……/一体 何故/何故キホが!?/何故 あなたではなく………」

『さよならもいわずに』上野顕太郎 作、エンターブレイン『月刊コミックビーム』掲載(2009年7月~2010年4月)
「ヒマだからな!」をキャッチフレーズに、ナンセンス&シュールな作風のギャグ漫画家として歩んできた作者、上野顕太郎(うえの・けんたろう)。一部の作品から透けて見えるように、プライベートの彼は、少女時代から鬱傾向があり喘息持ちでもある妻の希穂(キホ)と、小学4年生の一人娘、華凛(カリン)を愛する家庭人だった。
しかし、2004年12月、日付が10日に変わった直後に、途方もない喪失が彼を襲った。キホが呼吸をしていない。
自分が自分でないような感覚の中、しかし現実は確実に妻の死を突きつける。家族や知人への報告、仕事の調整、葬儀の準備、矢継ぎ早に訪れるそれらのさなか、あるいはその後で、彼に去来したものは何だったのか。
妻の言葉、姿、声、物腰、記録――。それらを求めてやまず、それ故に深まる喪失感と絶望。ただそのままに、日々は過ぎ行く。
