漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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「 熱い 」 一覧

第90夜 勇者は誰か…『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-

「なんでもできる反面なんにもできないのが勇者って人種さ…/だが…勇者にも一つだけほかの奴には真似できない最強の武器がある…」「えっ!? な…なにそれ!?」「決まってんだろ/勇者の武器は/“勇気”だよ!」


DRAGON QUEST―ダイの大冒険― 12 (ジャンプコミックスDIGITAL)

『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』堀井雄二 監修、三条陸 原作、稲田浩司 作画、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1988年12月[読切掲載]~1996年11月)

 かつて勇者は魔王を討ち、世界に平和が訪れた。魔王に従っていたモンスター達も邪気を失い、南海の孤島、デルムリン島で穏やかな日々を送っていた。
 少年ダイは島でただ一人の人間。赤ん坊の頃、島に流れ着いたところを島の長老格ブラスに拾われ、育てられた。
 異変は突然に訪れる。魔王ハドラーは復活し、世界は再び危機に陥った。島にやって来た自称「勇者の家庭教師」アバンに手解きを受け、勇者の道を歩み出すダイ。兄弟子の魔法使いポップと共に世界へと漕ぎ出していく。
 それは、幾多もの戦いと出会いと別れ、そして自らに備わった未知の力の意味を知る旅の始まりだった。

王道の人間賛歌
 自分がファミコンの類に接するようになったのは比較的遅く、小学校卒業の間際くらいだった。それ以前から本作は連載されており、その頃の自分はまだドラクエを知らなかったにも関わらず、友人宅などで少しずつ読んでいた。
 ドラクエの世界観を用いて創作されたオーソドックスな(『魔方陣グルグル』(第28夜)などのような変格でない)漫画作品としては、他に藤原カムイの『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』シリーズが有名だが、このジャンルに先鞭を付けた(『ロトの紋章』は本作の2年後に開始)という意味でも、自分は本作を推したい。
 既に多くの作品で言及したところだが、人間ではない存在が登場する作品では、逆に人間の素晴らしさが描かれている。本作も同様で、魔王を筆頭とするモンスターに対する人間の強さ、貴さが高水準な画力と演出で語られている。端役的なキャラクターにもそうしたエピソードがあり、作者が思い入れを持って仕事をしたということが垣間見れる。
 しかし、物語は手放しで人間を賛美してはいない。作者は、モンスターへの恐怖によって人間が陥ってしまう、醜い部分もきっちりと描いてみせる。そうした醜さを描いた上で、それでも人の素晴らしさを訴える姿勢は、既に古典的ですらある。が、“勇者を描く”というテーマも相まって、まさしく王道的な魅力を湛えた作風として結実していると云えよう。

勇者ポップと英雄ダイ
 さて、そのような人間賛歌の作品という前提に立つと、既に多くの人が指摘しているように、本作の真の主人公は魔法使いのポップなのだと思う。それなりの出自がある仲間たちに対し、彼はただの武器屋の息子である。そんな彼が、臆病な性根を克服し仲間のために戦い強くなっていく様は、本作の主たる読者である少年たちを、いたく勇気付けるだろう。冒頭に掲げた名台詞のように「勇者の武器は勇気」で、仲間を鼓舞し奮い立たせるのがその役割であるのなら、ポップこそ勇者なのだ。
 ポップが勇者であるのなら、ダイは何者なのか。人を超えた力を宿し、それゆえ疎まれることすらあり、それでも人間を愛す彼はきっと、ギリシア悲劇が云うところの「英雄」なのではないだろうか。終盤、ポップとダイがそれぞれ直面し、乗り越えていかなければならない“壁”は、彼らが勇者や英雄となるための通過儀礼という見方もできよう。
 あまり小難しく書くと二の足を踏まれる読者も多いと思うが、心配は無用である。ポップもダイも、それぞれ自分の言葉で素朴に葛藤し、語ってくれる。単に大団円なだけでない、読者に力を与えてくれる終章となっている。胸のすく大冒険に、仲間たちと旅立たれたい。

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第80夜 目指せ最強…『陣内流柔術武闘伝 真島クンすっとばす!!

「世界最強の格闘家(オトコ)の夢はどうした――!?」 『陣内流柔術武闘伝 真島クンすっとばす!!』にわのまこと 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1995年2月~1998年1月月)  戦国時代に発祥し、仙台藩御留流(せんだいはんおとめりゅう;門外不出はもちろん、……

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第78夜 戦後復興期の日本が牌に映る…『哲也-雀聖と呼ばれた男-

「…そうさ/俺達は汚ねえ世界にいるんだ/だけど俺達 玄人は/ここでしか生きられねえのさ…/なァ…/房州さん…」 『哲也-雀聖と呼ばれた男-』さいふうめい 原案、星野泰視 作、講談社『週刊少年マガジン』掲載(1997年33号月~2004年12月)  太平洋戦争での日……

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第75夜 魔曲とギャグは希望の別名…『ハーメルンのバイオリン弾き

「“馬鹿”は/苦しさの/裏返しのようだな」 『ハーメルンのバイオリン弾き』渡辺道明 作エニックス『月刊少年ガンガン』掲載(1991年4月~2001年2月)  強大な魔族に人々が脅え暮らす時代。辺境の勇者ハーメルは魔王が住む北の都、ハーメルンを目指して旅をしていた。……

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第73夜 みせろ昭和魂! 全力のケンカ大活劇…『あまいぞ!男吾

「質問!/巴男吾にとって奥田姫子とはなんですか?」「ライバルってとこかな…。」「アリガト、男吾くん!」 『あまいぞ! 男吾』Moo.念平 作、小学館『月刊コロコロコミック』掲載(1986年4月~1992年7月)  巴男吾(ともえ・だんご)は元気とケンカの強さが自慢……

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第70夜 シリーズ屈指の異色作に宿る勇気の力…『ジョジョの奇妙な冒険Part4 ダイヤモンドは砕けない

「この人は35年間 この町のおまわりをしてきた/出世はしなかったけど 毎日この町を守るのがこの人の仕事だった/今さっきもアンジェロの仕業と思われるニュースをきいたとき/この人は『町を守っている男』の目になった/……/おれが この町とおふくろを守りますよ/この人の代わりに……/どん……

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第69夜 人が挑む神との闘い、奇跡の前世代譚…『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話

「何かに命を張って生きることは/約束に似てるな/誰と交わしたわけじゃない/自分の中の約束」 『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』車田正美 原作、手代木史織 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(2006年8月~2011年4月)  18世紀の……

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第64夜 人と妖(バケモノ)とが綾なす陰陽の絵巻…『うしおととら

「行っくぞーっ、とらーっ!」「うるっせーんだよ、うしおーっ!!」 『うしおととら』藤田和日郎 作、小学館『週刊少年サンデー』掲載(1990年1月~1996年10月)  寺に住む少年、蒼月潮(あおつき・うしお)は、住職の父に虫干しを命じられた蔵の地下で、古びた槍に張……

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第52夜 誰も彼も汗にまみれて一生懸命にバカだった…『柔道部物語

「「「俺ってストロングだぜぇ~!」」」 『柔道部物語』小林まこと 作、講談社『週刊ヤングマガジン』掲載(1985年9月~1991年7月)  地元の岬商業高校に入学した寿司屋の息子、三五十五(さんご・じゅうご)は、中学では吹奏楽部でサックスを吹き、成績はトップクラス……

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第49夜 愛のため正義のため、少年達は神々に挑む…『聖闘士星矢

「いくぞ!!/地上の愛と正義のために!!/命と魂のすべてをそそぎ込んで!!/今こそ燃えろ黄金の小宇宙よ!!/この暗黒の世界に…/一条の光明を!!」 『聖闘士星矢』車田正美 作、集英社『週刊少年ジャンプ』→『Vジャンプ』(完結編のみ)掲載(1985年12月~1990年……

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