「運命−−−−これほど反逆し甲斐のある相手もいねーーな/そう思うだろ? あんたも!!」 『スクライド』黒田洋介(スタジオオルフェ) シナリオ、戸田泰成 漫画、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(2001年6月~2002年4月) 21世紀初頭、神奈川県横浜を中心……
「 近未来 」 一覧
第145夜 非現実への色欲に隠した、承認への欲望…『ルサンチマン』
「まだ現実に未練があるのか?」「あっ、あたりまえだ。/大体、そんな話/信じられっかよ。」「お前が、/現実の何に期待してるかわからんが、/あきらめろ。現実に期待するな。」「ぐっ、よ、余計なお世話だ。」「30年生きて、お前もわかっているはずだ。現実世界でおれ達に勝利はない!/おれ達は生まれた時点で、/敗北者だったのだ!!」
『ルサンチマン』花沢健吾 作、小学館『ビッグコミックスピリッツ』掲載(2004年1月~2005年2月)
西暦2015年、東京。坂本拓郎(さかもと・たくろー)は零細印刷会社に勤める三十路間近の冴えない男だ。実家暮らしで肥満ぎみ、頭髪も淋しく分厚い眼鏡をかけた彼の唯一の楽しみは、ボーナス後のソープ通い。当然のごとく、女性と付き合った経験など皆無である。
そんな彼の30歳の誕生日。旧友たちと酒を飲んだ際に、自分の同類のはずの越後大作(えちご・だいさく)が「女にもててしょうがない」と云うのを聞いて驚き焦る。
しかし、よくよく聞けば、それはいわゆる“ギャルゲー”のことだということが判る。呆れる拓郎だったが、越後のアパートで体験した最新のギャルゲーは、高度な技術を駆使したまさに“もう1つの現実”だった。
葛藤するものの、些細なことから現実を諦める決心をし、貯金をはたいてギャルゲーのための設備を整えようとする。その時、仮想現実世界での恋人として、拓郎が偶然みつけた人格AIソフトが、「TUKIKO(月子)」だった。
はやる気持ちを抑えつつ、月子との仮想現実ライフを始める拓郎だが、初手から月子に拒絶され、つまずいてしまう。ただのギャルゲーヒロインのAIとしてはあり得ない挙動をする月子は、何なのか。
彼女を中心に、大作、拓郎の同期で営業の長尾まりあ(ながお・――)、仮想世界で台頭する武闘派ギルド「第9帝国」総帥の江原らを巻き込み、仮想現実と現実は混濁していく。
広告
-
第117夜 地に澱む神代の穢れに抗うは、筋肉質な純情か…『天顕祭』
「木島/戻って来いよ/たった1年だけどよ/お前のいねェ足場はさみしいもンだ」 『天顕祭』白井弓子 作、同人誌発表(2006年2月~2007年8月)→サンクチュアリ出版より単行本 かつて、この国は「汚い戦争」を経験し、フカシとよばれる毒物に汚染された。そこかしこが……
-
第91夜 鈍く終局する世界を見て歩くもの…『ヨコハマ買い出し紀行』
「この数年で世の中も随分変わったわ/時代の黄昏が/こんなにゆったり来るものだったなんて/私は多分/この黄昏の世をずっと見ていくんだと思う/私には/時間はいくらでもあるからね」 『ヨコハマ買い出し紀行』芦奈野ひとし 作、講談社『月刊アフタヌーン』掲載(1994年4月[……