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【一会】『ゾンビ取りガール 2』……あれ? 「成功」してるし恰好いい…?

      2014/10/19

就職難!! ゾンビ取りガール(2) (モーニング KC)

 1巻もよかったのですが、2巻でぴたりと軸が決まった気がするので書き留めます。
 ゾンビが出る世の中、全国区では知らない人の方が多そうな東京都下(田無とか小平あたり?)を舞台に展開する、ゾンビ的事象に対処する零細企業「ゾンビバスターズ」の物語も2巻目。1巻が出たのが昨年2月なので、刊行はかなりゆっくりペースです。

 やや非モテの匂いのする主人公の「先輩くん」と、折からの就職難で当初アルバイトとして入社した颯爽系美人の「後輩ちゃん」。彼女を「いいな」と思う主人公と、「強いゾンビと戦いたい」という割とイカれた願望を抱く「後輩ちゃん」の、お互い考え過ぎなモノローグを散りばめた不器用な関係も独特ですが、何といっても「ゾンビに噛まれた人間もゾンビになる」というお約束を踏まえたアクションに、やはり手に汗握ります。
 1巻では若い男5人が一気にゾンビ化して、かなりきわどい捕獲作業でしたが、今巻でも強力なゾンビが発生。「先輩くん」「後輩ちゃん」はもちろん、「後輩ちゃん」のお姉さんにまでキレのいいアクションシーンがあって、『僕の小規模な生活』等だけで福満先生を知った気になっていると見事にいい方向に裏切られる迫力に満ちています。これまでの作品では「失敗」がある意味でのキーワードだったとしたら、この漫画のそれは、むしろ「成功」なのかもしれません。
 また、既に1巻でもそうでしたが、うだつの上がらない中年に見えて実はロープ術の名手な「社長」の格好よさも光ります。再三持論を繰り返しますが、おっさんが格好いい作品は名作の可能性が高いのではないでしょうか。

 そうしたゾンビと捕獲者の立ち回りが、もちろん第一の見どころですが、背景として描かれている“ゾンビという超常現象が日常に浸透してきている様子”の本当らしさも見逃せなかったり。テレビでコメンテーターが云っていることとか、イケメンな都の職員と「社長」との密談とか。同時に、「怖いのはゾンビだけじゃない」という社会の複雑さについても、形を変えて幾度も示されていると思います。
 こうした、「もしもゾンビが現代社会に実在したら」という「If」の扱いには、ある種の藤子不二雄やゆうきまさみ的なものを感じます。現実からの地続きとして夢想する、と云うような。

 作者の福満先生については、『僕の小規模な生活』などのメジャー誌掲載作によって今では“漫画家の日常生活モノ漫画の人”という認識が一般的かもしれません。が、デビュー当初は暗めで黒めな作風で、かなり筋金入りのゾンビフリークでもあるようです(先生がホラー小説[角川ホラー文庫『紗央里ちゃんの家』]の表紙イラストを手がけているのを見つけた時は「何故この人が?」と疑問が湧きましたが、この漫画1巻の「長いあとがき」を読んで合点がいきました)。
 ともかく、そんな有り余るゾンビ愛(プラスその他の執着心とかリビドーとか)を、惜しげもなく投下しているのが本作なのでしょう。何だか今秋から始まるテレビ東京のドラマが、本作の設定を盗用したのではないかと先生ご自身も指摘されているようですが、安らかに解決されることを祈りつつ(同時に「いろいろ「うわ………」みたいな状況」(今巻あとがきより)の打破も祈りつつ)、続きを楽しみにしています。

 - 一画一会, 随意散漫 , , ,

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