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【一会】『乙嫁語り 8』……不器用娘に、春よ来い

      2015/12/25

乙嫁語り 8巻<乙嫁語り> (ビームコミックス(ハルタ))

 2月の7巻から10か月で刊行となりました『乙嫁語り』8巻。予想より少しだけ早く出たようです。19世紀中央アジア各地の民族の生活や乙嫁(美しいお嫁さん)について、物語的にも絵的にも丁寧に描かれた漫画です。

 今巻の大半は2巻から登場しているパリヤのエピソードですが、冒頭1話分だけは、前巻から引き続きペルシアのアニスとシーリーンの姉妹妻(しまいづま)2人のエピソードとなっています。相変わらず仲睦まじい2人(旦那さんも入れたら3人)ですが、どちらかというとシーリーンの方が主導権を取っている模様。
 それにしてもシーリーンの食べっぷりが気持ちいいですね。9ページに出ている茄子の野菜詰めみたいな料理が特に美味しそうです。
 軽く調べたところ、この料理は“イマム バユルドゥ”という料理のようですね。“(美味しくて)お坊さんも気絶”という意味だそうですが、一層興味をそそられるネーミングです。

 番外編「ガゼル」を挟んで、今巻のメインとなるパリヤのお話となります。
 パン作りは得意だけど、どちらかというと不器用なタイプで、人とのコミュニケーションはちょっと苦手なパリヤさん。2巻でアミルと友達になった彼女ですが、この時代・この地域での結婚適齢期を迎え、ちょっと焦っている様子が、これまでもしばしば描かれてきました。しかし、英国からの客人スミスさんが勘違いから囚われてしまった際(3巻)に知り合ったウマルとの縁談がとんとん拍子に進み、お互いもまんざらではない様子。
 けれども気になるのは、6巻でアミルの実家であるハルガルが街に攻め込んできたために、用意していた布が軒並み駄目になってしまったことでしょう。他の地域ならいざ知らず、嫁入り道具に刺繍した布を大量に持参するのが風習であるこの地域では、結構なトラブルと捉えられるようです。しかもパリヤは刺繍が苦手ときていますから、暗くなるのも無理ないかと。
 ちなみに、攻め込んで返り討ちとなったアミルの実家ハルガルの生き残りたちは、北方に半ば追放になった様子。それはそれで辛そうですが、ひとまず手打ちといったところでしょうか。

 悲観的になるパリヤをアミルは励ましますが、こういう時に何よりも心強い支えになるのはやはり年の功。カルルクの祖母バルキルシュが「ひとつ仕込んだろかい」と申し出てくれます。これまでも決めるべきところは決めてきたバルキルシュだけに、パリヤの刺繍への苦手意識を解いていくのは流石です。
 パリヤが頑張る一方、街の復興を手伝うため、父親と共にやってきたウマルも特技の算盤(そろばん)でいい仕事をしてくれます。算盤って最近はほとんど耳にしなくなりましたが、当時としては確かに画期的なものだったと思います(かつて自分も習っていましたが、モノにならないまま止めてしまったことを今になってちょっと後悔)。
 お互いの関係も悪くない感じですが、これまで幾度も縁談を失敗してきたパリヤさんはどうしても悪い方に予想してしまいがちな様子。思いつめた彼女はついに性格変革を決意、近所で評判の、ラヒムさんちのカモーラさんを見習おうとします。
 このカモーラさんですが、明朗快活、気立てもよくて家事もOK、歌や踊りも一級品という、アミルさんに勝るとも劣らない出来た人。それでも彼女は彼女でパリヤさんに見習いたいと思うところもあるようで、これから2人は仲良くなれそうです。

 そんなところで今巻は終わりとなりますが、語り残したカルルク・アミル夫婦の幸せそうな一幕についても一言を。第49話「ふたりで遠駆け」は、夫婦で馬に乗って出かけ、食事をしたり馬の駆けくらべをしたりして帰ってくる、というだけのお話ですが、しばらく見られなかった彼らの平穏な日常が嬉しいエピソードです。1巻の頃はアンバランスに見えた2人も、それなりに色々な苦難を乗り越え立派な夫婦になったなぁとも感じました。
 巻末の「あとがきオヨヨマンガ 春よ来い!」の、いつものテンションによる森先生の中央アジア旅行記に翻弄されつつ、来年秋頃と予想される9巻を楽しみに待ちたいと思います。

 - 一画一会, 随意散漫 , , , ,

 

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