100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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「 悲壮 」 一覧

【一会】『猫瞽女―ネコゴゼ― 2』……温泉地の勝負の行方はロシア式

猫瞽女 ―ネコゴゼ―  2巻 (コミック(ヤングキングコミックス))

 巫女に次いで猫耳という、ある意味で近年のヲタク界隈の要求を飲み込んだ上で、見事に渋み溢れる作品世界を描き出す宇河弘樹先生の『猫瞽女ネコゴゼ―』第2巻が先日刊行されました。
 描かれるのはパラレルな195X年。戦争に勝利したソ連によって支配され「日本自治ソビエト社会主義共和国」と呼称されるようになった日本の片隅で、人間たちと同じように、ある者は一途に、ある者は卑しく、ある者は苛烈に生きる、猫たちの渡世の物語です。
 中心となるのは、唄と三味線を表稼業にしながらも、仕込んだ刃を抜けば無二の遣い手である“はぐれ瞽女”夜梅(ようめ)と、ロシア正教に由来していそうな“機密”能力を行使する行者の鶯(うぐいす)の2匹の雌猫。当座の2匹の目的は、鶯の養い親を殺し、兄を収容所送りとした当局の秘密警察“必罰執行人”の何者かを追うことですが、仁義に篤い2匹のこと、権力を得た悪の前に涙を流す猫たちの力となって力を振るう展開となりそうです。

(さらに…)

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【一会】『いぬやしき 5』……それは、果たして贖罪なのか

 地球外生命体らしき存在たちの事故に巻き込まれ、現在の人類には不可能な能力を付与されたアンドロイドとして復活した、初老の犬屋敷壱郎(いぬやしき・いちろう)と高校生の獅子神皓(ししがみ・ひろ)の、それぞれの“生きている感じ”をめぐる活躍と殺戮を描く『いぬやしき』。先月後半に……

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【一会】『七つの大罪 17』……それぞれの試練の時

 ここのところ更新が刊行に追い付いていないで恐縮ですが、先月発刊の『七つの大罪』17巻を読みましたので書き留めておきます。ちなみに今巻の限定版には付箋ブックが付属。これはけっこう実用的かもしれません。  今巻はずばり、いわゆる修行の巻と云えるでしょう。メリオダス……

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第204夜 惑い彷徨ってこそ、救う世も在れ…『水使いのリンドウ』

「わからないよアッシュ…/いままでも何も知らずに間違いだらけだったんだ……/自分が正しい自信は何もない…」 『水使いのリンドウ』一色登希彦 作、集英社『ジャンプSQ.19』掲載(2010年8月~2012年6月)  竜と皇族(おうぞく)の間に交わされる百年契約で成り……

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【一会】『白暮のクロニクル 5』……研修のち悪意不在の罪、ときどきラブコメ

 吸血嗜好と長命性を持った“オキナガ”がいる世界を舞台に、厚生労働省夜間衛生管理課(通称やえいかん)の新人、伏木あかり(ふせぎ・――)と、古参の“オキナガ”雪村魁(ゆきむら・かい)を中心に描かれる、ファンタジック社会派公務員ミステリ(?)な『白暮のクロニクル』。予告通り4……

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【一会】『Pumpkin Scissors 19』……“人間”との戦いを、嘲笑うな

 “帝国”とフロスト共和国の戦争による大小の「戦災」からの復興を担うとして設置された、帝国陸軍情報部第3課、通称「パンプキン・シザーズ」。そのメンバーの活躍を描くこの漫画ですが、前巻からおよそ10か月をおいての19巻刊行となりました。  前巻に引き続き描かれてい……

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【一会】『猫瞽女―ネコゴゼ― 1』……猫耳による哀愁の唄と寂びた言葉

 実は最近、猫を飼い始めたのだけど、家の環境に慣れてくれるまでなかなかに大変でした。そんな折この漫画が刊行されたので個人的なタイムリー感を抱いたりしております。『朝霧の巫女』(100夜100漫第56夜)の宇河弘樹先生による新作『猫瞽女―ネコゴゼ―』です。  現実とパ……

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第202夜 血溜まりに“真の友情”を映して…『バトル・ロワイヤル』

「オレもだ……/オレもお前も少しずつ間違っていたんだ…/――だから俺とお前でだっ」「えっ!?」「オレの判断とお前の心(ハート)が一つになって……/本当の正解だっ」「………/……………ありがとう/川田」「――ったく………/お前ってヤツは涙腺の涸れねえ男だなっ」 『バト……

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第200夜 かつての罪と命の重さ、抱えてなお歩け…『鋼の錬金術師』

「目に見えない大きな流れ――/それを「世界」と言うのか「宇宙」と言うのかわかんないけど/オレもアルもその大きい流れの中のほんの小さなひとつ/全の中の一/だけどその一が集まって全が存在する/この世は想像もつかない大きな法則に従って流れている/その流れを知り/分解して再構築する…/そ……

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第194夜 可憐な悪夢と、凄惨な現実を、その日記に…『アノネ、』

「誕生日にもらった鍵つきの日記帳は/秘密の扉みたい/床におくと鏡にもなるの/のぞきこむと/未来がみえる」「花子/花子/どうしてこんなことに」「太郎さん/太郎さん/あのね――」 『アノネ、』今日マチ子 作、秋田書店『エレガンスイブ掲載(2011年2月~2013年4月)……

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