漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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「 大人 」 一覧

【一会】『月影ベイベ 7』……なのに、心に沁み入るのは彼の言葉で

月影ベイベ 7 (フラワーコミックスアルファ)

 富山県八尾を舞台に、高校生の佐伯光(さえき・ひかる)と峰岸蛍子(みねぎし・ほたるこ)、光の伯父にあたる佐伯円(――・まどか)の3人による淡い三角関係を中央に置き、八尾の伝統舞踊“おわら”をめぐる人々を描いた『月影べイベ』。一時休載もあったようですが無事に再開され、ひと月ほど前に7巻の発刊となりました。
 現実世界とは少しずれて、作中の季節は8月。9月の本番「おわら 風の盆」が迫ってきます。

 そんな今巻の内容は直球勝負。前巻ラストで、ついに光は蛍子に想いを告げたのですが、その後の光と蛍子、そして円という3人のエピソードで、ほぼ占められています。
 蛍子にとって光の告白は全く予想外だったようで、戸惑いが先に立ちます。何しろ彼女の気持ちは円の方を向いているのですし。ただ、里央に相談することで、恋とは違う意味で、光に対する好意を抱いていた自分を発見したようです。一方、秘めたる想いを口にした光の方ですが、表面上はさっぱりとしつつも、やはり蛍子を意識して過ごしています。
 専能寺という立派お寺で、雨音を聞きながら、蛍子は自分の気持ちを光に伝えます。「だらやな俺」と自嘲して笑う光の笑顔が、笑顔なのですが、やっぱり哀しげです。自分も経験がないではないですが、こういう時って、確かにその場では笑うしかないと思います。雨が降っていたのは、光にとって幸いだったかもしれません。

(さらに…)

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【一会】『白暮のクロニクル 8』……1600歳超えの純情

 不老不死に近い吸血鬼っぽい種族“オキナガ(息長)”が存在する世界。見た目は少年ながら88歳の“オキナガ”雪村魁(ゆきむら・かい)と、彼らを管理する厚生労働省夜間衛生管理課(通称やえいかん)の新人・伏木あかり(ふせぎ・――)が、12年に1度、未年ごとに若い女性を殺す「羊殺……

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【一会】『3×3EYES(サザンアイズ) 幻獣の森の遭難者 3』……龍皇顕現。さらに思惑は絡み合う

 アジアン・オカルティックバトルを繰り広げつつ、バブル期からゼロ年代という日本の精神性の変容を背景に置いて描かれた伝奇ロマン『3×3EYES』(100夜100漫第100夜)。12年ぶりの発表となった正統的続編『3×3EYES 幻獣の森の遭難者』の3巻が先ごろ刊行となりまし……

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【一会】『アップルシードα 2(完)』……新世界は素敵ですか?

 2巻の発刊から早や2か月ほど経ってしまいましたが、じっくりと読みましたので書いておきましょう。『茄子』(100夜100漫第1夜)の黒田硫黄先生による、士郎正宗先生の未完の代表作『アップルシード』のリブートという異色作『アップルシードα』の2巻にして最終巻です。  ……

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【一会】『プリンセスメゾン 2』……シャンソン人形とヘドバンと

 居酒屋「じんちゃん」に勤める年収250万円ちょっとの沼越幸(ぬまごえ・さち)。彼女の“運命の物件”探しを中心に置きつつ、それ以外の女性の“住まいと孤独”についてのエピソードも散りばめた池辺葵氏の『プリンセスメゾン』の2巻が、先ごろ発刊されました。物件探しの実際的なポイン……

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【一会】『白暮のクロニクル 7』……迫る未年の終わり、まだ視えない真相

 非常な長命と不死性を有する“オキナガ”と、それを管理する厚生労働省夜間衛生管理課(通称やえいかん)が存在する世界。夜衛管の新人・伏木あかり(ふせぎ・――)と、88歳にして外見は少年な“オキナガ”雪村魁(ゆきむら・かい)の2人が、未年ごとに若い女性を殺害する連続殺人者“羊……

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第205夜 ディスプレイに躍る意地と愛と魂と…『大東京トイボックス』

「…それは/直さずにすめばその方が効率がいいからに決まって…」「もうやめろ/効率? プロ? まるでガキだな」「…なんだと?」「そんなのは大人じゃねえ/ただの聞き分けのいい子供だ」 『大東京トイボックス』うめ(小沢高広…企画・シナリオ・演出担当/妹尾朝子…作画・演出担……

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【一会】『アルテ 4』……想いを残し、新天地へ

 16世紀初頭のフィレンツェを舞台に、貴族出身ながら画家を志望する元気少女アルテの修行の様子と、師匠であるレオへの淡い恋心、当時の人々の生活描写がそれぞれに興味深い『アルテ』。先ごろ4巻が発刊されましたので、書き留めておきましょう。  前巻では重労働のフレスコ画の助……

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【一会】『3×3EYES(サザンアイズ) 幻獣の森の遭難者 2』……「世界崩壊」の真相と、まだ知れぬ深遠

 アジアン・オカルティックな伝奇ロマン『3×3EYES』(100夜100漫第100夜)の12年ぶりの正統的続編『3×3EYES 幻獣の森の遭難者』、予告よりも気持ち早く、11月初旬の2巻刊行となりました。獣魔の卵の存在を掴んでやってきたパリで、八雲を捕獲しようとする謎の女……

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【一会】『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記 3(完)』……原子炉建屋へ。そして一旦の中締め

 2月発刊の2巻から8か月。この10月に竜田一人先生の『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』のとりあえずの最終巻となる3巻が刊行となりました。前巻について書いた時は、発刊予告があまりアテにならないかも、と書きましたが、思いがけず予告通りのリリースでした。  作中の……

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