【一会】『3×3EYES(サザンアイズ) 幻獣の森の遭難者 2』……「世界崩壊」の真相と、まだ知れぬ深遠
2018/07/21
アジアン・オカルティックな伝奇ロマン『3×3EYES』(100夜100漫第100夜)の12年ぶりの正統的続編『3×3EYES 幻獣の森の遭難者』、予告よりも気持ち早く、11月初旬の2巻刊行となりました。獣魔の卵の存在を掴んでやってきたパリで、八雲を捕獲しようとする謎の女子高生たちとベナレスの元配下に接触した第1巻でしたが、パリ地下での戦いがメインとなる今巻で、彼らの狙いがある程度は明らかになってきた印象です。
今巻の開幕は、八雲を狙う首謀者である片羽根のグリフィン、ノルマルテと、彼に協力する甲子美智瑠(きのえね・みちる)の過去と出会いのモノローグから。どうも美智瑠たちノルマルテに協力する女子高生たちは、みんな何らかの病気に罹っていた(美智瑠自身は今も罹っている)ところをノルマルテに救われたようです。対するノルマルテはベナレスの配下でしたが、獣魔術の台頭によって自分の存在価値を見失った苦い過去があるようで。
状況を整理すると、ノルマルテ達は八雲の不死性を利用して“世界の崩壊”を止めるべく動いているようですが、当初彼らと行動を共にしていたゲゲネイスとウコバクは別の狙いがある模様。それが表面化し、ゲゲネイス組VSノルマルテ組&八雲たちという構図になりつつあるということでしょうか。
対する八雲たちの行動も分散気味です。八雲は単独で美智瑠と接触して巨大な魔方陣を発見する一方、前巻でさらわれたパイはノルマルテとクロワッサン食べてるし、葉子にきつい言葉を放ってしまったハーンはまだ許してもらえない様子。意気消沈してる葉子のために仕事を放り出してパリに向けて飛んだ神山依子(かみやま・よりこ)も、飛行機のトラブルで世界をたらい回しにされてるみたいですし。
そんな中で何気に活躍するのは、元ベナレス配下、九頭龍将の紅一点にして今は“とりあえず味方”っぽい立ち位置の舞鬼(ウーカイ)。憎まれ口ばかりたたいている彼女ですが、対峙した相手に対して自分の過去を吐露し、「自分の好きなものを守る」と語る眼差しは真剣です。今巻末の与太番外でも相変わらずいじられてますし、愛されてますね。
そして、これで役者が揃ったわけでもありません。月面にいる現・鬼眼王(カイヤンワン)であるカーリーもまた、パリ地下の魔方陣が獣魔の女王エキドナを召喚しようとしているのを嗅ぎつけてやって来ます。
そんな四つどもえな状況の中、ゲゲネイスらの野望は成就間近となり、ノルマルテの云う“世界崩壊”の本当の意味が明かされます。まさに風雲急を告げるところで今巻は閉幕。
ゲゲネイスとノルマルテの真意が明らかになったことで、ある程度は溜飲が下がった思いですが、一方で八雲が抱く感情の希薄さの原因についてはまだ手がかりがない状態です。そしてもう1つ、今巻で気になった点が。ノルマルテの回想内での描写なのですが、どうしてもこれまでの描写とは辻褄が合わないように思えるコマがあるのです。これが何らかの伏線なのか、それとも単なる自分の深読みなのか、今は解りませんが、八雲の件を考え併せると、まだ伏せられた部分があるような気がしてなりません。
なぜかおにぎり勝負になった巻末与太番外「オニ1グランプリ」とカバー下の4コマ&「あとがきのようなもの」でクールダウンして、今巻の続きをウェブ連載(3×3EYES<サザンアイズ> 幻獣の森の遭難者 第37話から)で読みつつ、春先刊行と思われる次巻を待ちたいと思います。