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【一会】『少女ファイト 14』……順調な勝ち上がり、不穏な場外戦

      2018/04/27

少女ファイト(14) (KCデラックス イブニング)

 最強レベルの実力と弱いメンタルを兼ね備えた女子高生バレーボール選手・大石練(おおいし・ねり)と、彼女の所属する黒曜谷高校女子バレー部が、ヒール的役どころを甘んじて引き受けて活躍する様を描く『少女ファイト』。ほぼ13巻時の予告どおり、昨年7月に14巻が刊行されています。大幅に遅れましたが、語りたいと思います。
 今巻の表紙は、通常版は春高優勝世代の黒曜谷チームの一角で、今は延友厚子(のぶとも・あつこ)の継母になっている知花さん。特装版は今巻前半で練たちと試合をしている小岩素(こいわ・もと)です。ちなみに特装版の付録は、カラーイラストの線画24点を収録した「ぬりえブック」(入手できませんでした…)。ついでに、巻ごとに異なる各話サブタイトルのネーミングは、今回は種々の広告の名キャッチコピーから…といった感じでしょうか。

 本編に入りましょう。目下、高校バレーの一大イベントである“春高バレー”こと全日本バレーボール高等学校選手権大会に出場中の黒曜谷高校。前巻で山吹矢を下して1回戦を勝ち抜き、自分たちの鏡像のような人物たちで構成される福岡の墨日野高校と試合中です。
 黒曜谷が若干リードしてはいますが、名前も何だか練に似ている墨日野のレフト・小岩素がチームプレーに覚醒し、黒曜谷を脅かします。墨日野のお互い遠慮のないコミュニケーションは黒曜谷から見たら異質なものですが、そういうのがハマるチームもあるということですね。
 そんな墨日野の中心である素ですが、彼女が置かれた境遇もまた練と鏡映しのよう。思わず共感した練は、彼女を敵として戦うことを一瞬だけ戸惑いますが、さすがにもう、そこで立ち止まる彼女でもありません。例え負けたとしてもそれが相手の利益になるわけではありませんし、ここはただ、全力でぶつかるのが礼儀というものでしょう。真剣なプレーは観ている者の真剣さも呼び起こすということを、試合が決した瞬間の素の表情が物語っているように思いました。

 試合が終わって、素と家族たち、観戦に来ていた全日本メンバーたちにもそれぞれの人間模様が展開されます。中でも深刻さを帯びていたのは、黒曜谷女子バレー部の伊丹志乃(いたみ・しの)と男子バレー部の三國智之(みくに・ともゆき)の甘い(?)やり取りを見ていた三國の弟・広之でした。
 三國の家は、黒曜谷高校すら傘下に持つ大財閥。財閥の実権を握っている祖母は、智之と黒曜谷の理事長の娘であるキャプテン・犬神鏡子(いぬがみ・きょうこ)を結婚させ、その子をオリンピック選手に育てる場として黒曜谷に肩入れしてきたという経緯があるようです。しかし、智之は志乃と良い感じですし、鏡子は黒曜谷男子バレー部主将の千石と相思相愛の仲。いずれもこの目論見に反します。
 意に沿わない場合、強引な三國の祖母は黒曜谷高校そのものを潰すだろう。それを回避するため、しばらくのあいだ犬神たちと共同戦線を張りたい。広之の提案は、そういうものでした。広之もまた、黒曜谷の厚子に惹かれているにもかかわらず、自分は兄の代わりに政略結婚を引き受けるつもりのようで。今まで余裕を湛えた冷ややかな様子でいることが多かった広之が、ここまで覚悟を決めたのは、厚子のためもありますが、それ以上に黒曜谷女子の小田切学(おだぎり・まなぶ)の弟・明の友情に応えるため、のようです。

 かように場外では秘密協定が結ばれていますが、春高の戦いは続きます。3回戦に勝ち進んだ黒曜谷の次なる相手は、その徹底された生活管理から「刑務所」の異名をとる金糸雀(かなりあ)高校。
 ですが、その前に、同じ3回戦である琥珀学園と青磁学園の試合をめぐる出来事が描かれます。詳述は避けますが、青磁学園の雨宮摩耶(あまみや・まや)こそが、この漫画全編を通して最大の黒幕と云って、もう間違いないかと思います。
 摩耶はまた、三國の祖母にして三國財閥の現会長・芽衣子ともパイプを作っていますし、金糸雀にも策謀の手を伸ばしている様子。折悪しく金糸雀高校女子バレー部では、代替わりに際して「刑務所」じみた現体制を維持するか改めるかを争点とした部長選挙が予定されているようで、不穏な感じが漂っています。
 黒曜谷の頭脳になりつつある学の考察によれば、そもそも練が置かれた今の境遇すら、小学校時代の摩耶の手によるものという可能性も。練に対する摩耶の底知れぬ執着が恐ろしいですが、その執着の原因も気になります。

 そして迎えた3回戦。ある意味で大荒れとなった青磁対琥珀の試合に怒った厚子は、琥珀学園の鬼瓦に問い質します。が、その直後、試合観戦に訪れた厚子の継母・知花の体調が悪化。妊娠中の彼女を病院に送り届けるため、鬼瓦が一肌脱いでくれます。
 自分がこの時の厚子のような状況に置かれたら、やっぱり彼女も喋った通り「試合どころじゃねーだろ」と云って、そのまま何もできないんじゃないかと思います。それだけに、知花の「やるべきことをやるのよ」は胸に響きました。もちろんTPOは考えないといけませんが、心配事があっても、やるべきことはちゃんと出来るようにしたいですね。
 青磁対琥珀戦の結果が各人に納得のいかないものを残しながらも、知花の運ばれた病院から戻ってきた厚子を加え、黒曜谷の準備は万全。部員・堂夏(どうなつ)の行動に金糸雀の内部も動揺していますが、次の試合の時が迫っています。
 …といったところで、今巻のメインストーリーはここまで。練の姉・真理たち“最強世代”の試合映像を探しに、黒曜谷の面々が旧部室へ忍び込む、ちょっとホラーな挿話「そうだ、旧部室棟に行こう」を挟み、次巻へと続きます。
 次巻は恐らく8月くらいの刊行になるでしょうか。試合も場外での展開も、ともに楽しみに待ちたいと思います。

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