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【一会】『魔法陣グルグル2 9』……役者たち、秘境に集う

      2018/12/10

魔法陣グルグル2(9) (ガンガンコミックスONLINE)

 子どものような心の振幅が力となる、すこぶる不思議な魔法「グルグル」を操る魔法使いの少女ククリと、ちっとも勇者らしくない勇者ニケの冒険の続きを描いた『魔方陣グルグル2』。初代『魔方陣グルグル』が三度テレビアニメ化された、昨年の12月に9巻が刊行されました(現在10巻まで刊行中です)。ようやくという感じではありますが、その概要と思うところを書き留めておきます。

ふたりの夜間飛行

 謎の秘宝「マキニカ」を求め、秘境ズックニィを目指して冒険中のニケたち。前巻では、ズックニィを探して課金型石像モンスター・アケメレに翻弄され、地面から伸びるラッパ状のものを捉えたところで幕切れとなりましたが、今巻はその直後から。
 捉えたラッパ状のものは果たしてラッパで、いずれ天使になるという“ラッパ吹き”が姿を現しました。なんだか「尻使い」なる者に対して怒っているようですが、とりあえずニケ達は違います。誤解が解ければ、“ラッパ吹き”も魔王に困っており協力関係が成立。あとあと助かることでしょう。

 話は本線に戻りまして。トマの考察が的中し、一行は無事にズックニィに無事到着。ちょうど同じ頃に魔王とその配下もズックニィ入りしていました。
 ニケの龍化やら何やら、色々と事情が変わっていてトマは困惑しますが、彼による状況整理は読者にとっても分かりやすいです。特に気になる3点を拾うと、以下の通りです。

 ○魔王は描くのに22年もかかるグルグル「かみさまのもよう」を描ける
 ○邪神「征服ンチョ」の存在
 ○魔王によるニケ・月の呪いを解き、フリルを取り戻す

 ニケたちがズックニィへのルートを開いたことで、他の冒険者たちもわらわらとやって来ます。その冒険者たちの中に…いました“尻使い”が。ここで初代『グルグル』の有名な台詞「ただし魔法は尻から出る」に繋がったのには困惑混じりの驚嘆を禁じ得ませんが、とりえあず“ラッパ吹き”たちは烈火のごとく怒っています。
 それはそうと、自然の尖塔が立ち並ぶようなズックニィを探索するには、空でも飛ばない限り難しそう。色々と試したあと浮かんだのが、夜になって龍化したニケに1人ずつ抱えて飛んでもらう、という案でした。
 ただ、龍化したニケは言葉を理解しないので、一行は四苦八苦。そうしているうち、いかなる弾みか、ニケはククリをお姫様だっこした状態で夜空を翔けていきます。これにはククリも思わず状況を忘れてキュンキュンです。実際、月を背景に空を飛ぶこのシーンは、今巻で最も綺麗なシーンでしょう。
 足場には降りましたが、「悩みのタネと希望の光が同じ人」という事実にグッときたククリは浮かれ気味。ですが、これでパーティはニケ・ククリ組とジュジュ・トマ組に二分された恰好に。ズックニィ探索の先行きは長そうです。

 一方、ククリを付け狙う魔界の王子レイドと、闇の魔法使いカヤたちもズックニィに来ていました。そういえばニケ達の仲間デキルコは、ふとしたことから彼らの処に身を寄せています。魔王にクーデターを起こそうと画策する様子のカヤですが、確かに魔族のおじさんにフリルはキツいかもしれないですね。そしてコマ割的に、デキルコが重要な意味を帯びていそうです。
 それぞれの思いを包んで、夜は更けていきます。そんな中、例によってキタキタ親父もまたズックニィに到達していたのでした。

グルグルへの、とある疑義

 翌朝、ククリは「おともだち召喚」の魔方陣でジュジュとトマを呼び寄せようとしますが、不発。ククリが「2人きりでいたい」と思っているので当然ですね。ニケは“魔物のカン”でククリを誘導しているようですし、とりあえずこのまま2人で探索が続くようです。
 残されたジュジュとトマも、トマの装置によって探索を開始します。他の冒険者たちもそれぞれ侵攻しているようですが、とある冒険者たちは「マキニカ」が何であるか知っているようです。彼らの言葉によれば、「マキニカ」とは「魔力と物質をひとつにする技術」。語感的に、「Magic」と「Mechanical」を組み合わせたような言葉ですし、かなり信憑性が高い説だと思います。魔力と物質といえば初代『グルグル』から登場している具象気体もそんな感じですが、「マキニカ」は切り札のように描かれていることから、また違うものなのでしょう。
 冒険者が増えすぎ、にわかに村のようになったズックニィで、ニケ達を探すジュジュとトマですが、ここで唐突に魔王が出現。フリルが可愛いかどうかという、しょーもないやり取りで怒った魔王が魔方陣「かおあらってでなおせ!」を発動すると、冒険者達とともに、ジュジュ達は遥か彼方へ飛ばされてしまいます。この魔方陣の効力は、「冒険のスタートポイントまで強制ワープ」というもの。実家まで戻された2人はそれぞれ、地元の祭りごとやら親の干渉やらでしばし冒険の中断を余儀なくされます(ある意味ではとても恐ろしい魔方陣です…)。
 魔王はといえば、相変わらず価値判断の尺度が「可愛いかどうか」で、部下の謀反にも気付かなかった様子。大物と云えば大物ですが、それだけでは魔王陣営も収まらなさそうです。
 龍となったニケがククリを運んだ先にいたのは、猫の仮面を付けたような小人の一群。彼らはアラナモ族といい、ニケ達にそう教えてくれたのは、自らを「ちゃん」付けするミグミグ族の女性・パルでした。
 やたら明るいパルは、ここで魔方陣を描きながらアラナモ族と暮らしているとのこと。ニケ達が魔王関係で動いていると知ると、関わりを拒絶しようとした彼女でしたが、結局は手助けしてくれることに。キタキタ親父が邪魔に入ったりしますが、パルとの出会いは、ククリをまた1つ成長させてくれたようです。
 それにしても、パルはけっこう根本的な疑問を提示していたりします。それは、ククリやパルなど、本来は子どもにしか使えないグルグルを、大人になっても使える者が割と存在することへの不審です。「大人になりたくないってコが増えてる」のが理由だとパルは考えているようですが、それだけなのでしょうか。割と本作の根幹に関わることだと、自分には思えます。

 パルの助けで、ニケが龍になる夜を待たずとも空中移動が可能となった2人(とキタキタ親父)。ほどなく、初代『グルグル』以来の登場となる、魔法使いデリダと再会することができました。
 デリダの云う「ここでは“目に見えていることがすべてではない”」は、前巻で魔界の老人コウバクも口にしたことでした。ともかくケムリの塔に至るには、小細工抜きで流れに任せるしかなさそうです。結局、ニケの龍としての力とククリの乙女心(?)により、煙でできた不思議な塔、ケムリの塔は2人の前に姿を現したのでした。

スモーキィな塔の奥へ

 目的地に着いたので、実家暮らしを余儀なくされているジュジュ、トマを呼び出そうとしたククリ。ですが、「おともだち召喚」の魔方陣で呼び出されたのは、あろうことか魔王でした。魔王の気持ちを理解したククリにとって魔王は「おともだち」に近い存在になりつつある一方、魔王にとってのククリは今のところ利用できる存在、ということでしょうか。
 キタキタ親父の強引な闖入によって魔王との直接対決は避けられましたが、どうもククリにも魔王の呪いはかかってしまったようです。ようやく呼び出せたジュジュとトマがもたらした事実は、ククリを崩れ落ちさせるに充分な衝撃でした。
 ジュジュ曰く「すごい実害はないけどどうしようもなくイヤな呪い」によって、ククリはグルグルを“使おうと思えば使えるけど、このままでは使いたくない”状況に追い込まれた形です。
 とはいえ、立ち止まってはいられません。デリダが分かり難いながらも激励してくれましたし、何よりニケたち仲間がいます。「マキニカ」と、そして魔王が待つケムリの塔は目の前。レイド・カヤ・デキルコの一行もケムリの塔に迫る中、パーティは先へと進みます。
 というか、カヤも口にした邪神「征服ンチョ」、ネーミング的に実在が疑われていましたが、どうやら本当に存在する上に、本作のラスボスの可能性すらあるようです。。

 モコモコとしたファンシーな感じのケムリの塔ですが、モンスターも出るし謎解きもあります。しかし、メンバーも充実した一行を阻むものではありません。それっぽい扉を開いた、その向こうに待つものは――というところで、今巻の本編はお開き。次巻へと続きます。
 昨年の、通算3度目となったアニメ化の話題や、いつもの猫話の「オマケマンガ」で心をほぐし、既に今年9月に刊行されている10巻へと読み進みます。

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