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第106夜 湯を介し、癒しで繋がる彼方と此方…『テルマエ・ロマエ』
「浴場の中で心安らげるかどうかは/共に浸っている人間にかかる部分が大きい…/湯に対して全身全霊を捧げる平たい顔族は/一緒に風呂に入るのに最高の人種ではないか!?」

『テルマエ・ロマエ』ヤマザキマリ 作、エンターブレイン『月刊コミックビーム』掲載(2008年1月~2013年3月)
西暦130年周辺、古代ローマはハドリアヌス帝の時代だった。軍事よりも、内政や哲学、ことに建築に関心と才能を有したこの皇帝の治世による都ローマで、浴場専門の設計技師、ルシウス・モデストゥスはふて腐れていた。新進的な時勢を必ずしもよしとしない彼の設計思想は受け入れられず、事務所と喧嘩別れして失業状態になってしまったのだ。
鬱々としたまま友人と公衆浴場に入ったルシウスは、ふとしたことから浴槽の内壁に空いた穴を見つけ、足をとられて吸い込まれてしまう。湯から顔を出すと、そこは現代日本の銭湯だった。ローマ人のルシウスから見れば“平たい顔”をした民族の、奇妙でありながらも超進歩的な技術と様式を備えた浴場にルシウスは感銘を受け、そのエッセンスを何とかローマに持ち帰ることに成功する。
以来、難題にぶつかるたび、何かに導かれるようにローマの浴場から“平たい顔族”の浴場(家庭の浴室・銭湯・温泉・ショールームなど)へと転移し、新たなインスピレーションを得ていくルシウス。そうした仕事に対する評価は上がり、私生活では挫折も味わいつつも、皇帝からも重用されるようになっていく。
度重なる“平たい顔族”の世界への転移の中、ルシウスは古代ラテン語を解する才媛、小達さつき(おだて・さつき)と出会う。その出会いが、ローマ帝国とルシウスの人生を変える転機であることに、その時の彼はまだ気付いていなかった――。
