100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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第100夜 手を携え共に歩もう…『3×3EYES(サザンアイズ)』

「ヤクモ!! …大丈夫ナノ?」「へへっ/行こう香港!!/必ず君を人間にしてあげるよ」


3×3EYES(1) (ヤンマガKCスペシャル (123))

3×3EYESサザンアイズ)』高田裕三 作、講談社『『ヤングマガジン増刊海賊版』→『ヤングマガジン』掲載(1987年12月~2002年9月)

 東京新宿。親の都合で一人暮らしをしている高校生、藤井八雲(ふじい・やくも)は、バイト先のオカマバーに出勤する途中、中国少数民族風の薄汚れた衣服に身を包んだ少女、パイに出会う。彼女こそは、消息不明の八雲の父親にして民俗学者の藤井一(――・はじめ)教授が追い求めた、人類とは異なる聖なる力を持つ三つ目の存在、三只眼吽迦羅(さんじやんうんから)の最後の生き残りだという。
 パイから父の死を伝えられるとともに、その遺書によって、人間に憧れるパイの望みを叶え人間にして欲しいと懇願され、困惑する八雲。しかし事態に猶予はなく、三只眼の力を狙ってやってきた妖怪により、八雲は致命傷を負ってしまう。その時、パイの閉じられていた額の目が開き、もう1つの人格“三只眼”が目覚める。彼女は八雲を不老不死の「无(ウー;「無」を意味する)」と化し、己のボディガードとすることで命を救うが、それは八雲の命がパイに取り入れられたことを意味していた。
 自分達が人間になるためには“人間の像”なる祭器が必要だと知った八雲とパイによる、アジアを股にかけた冒険が始まる。だが、彼らの行く手には、自らの野望のために“人間の像”を求める強大な存在が立ちはだかるのだった。その者の野望とは何か。人間になりたい2人の物語は、やがて人類全ての終末の兆しへと繋がっていく。

疾走するアジアンバトル
 中学2年生の頃、成績が低迷していたので親によって予備校の夏期講習というものに参加させられた。ちょうどその頃に小遣いを貰うようにもなって、恐らく初めて自発的に購入した漫画作品が本作である。夏期講習という現実世界に貼り付けられた自分は、その反動として、エキゾチックな雰囲気が香る、妖しくも魅力的な本作を貪るように読み、けっきょく講習中に当時の最新刊までを読み終えてしまった。
 当時としても青年誌では珍しい、ストレートなバトル漫画である。女性キャラはあくまで麗しく、男性キャラは誰もが格好よく描かれている。体感では本作の少なくとも50%以上を占めるバトルシーンでは、主人公が不死身の「无(ウー)」ゆえに、血や内臓が飛び散る、かなり凄惨な戦いが繰り広げられる。にもかかわらず、それほどスプラッタに感じないのは、そう感じるぎりぎりのところでデフォルメしている作画の巧みさによるのだろう。
 加えて八雲やライバルの用いる獣魔術(使用者の精気で生きる魔獣を召喚し、様々な効果を得る魔術)の応酬が、肉弾戦に僅かながら『ジョジョ』にも通じる能力バトルのニュアンスを付与している。勿論それ以外にも、パイの別人格である三只眼や、その他の妖怪、秘術使いに異能力者といった面々が戦いを盛り上げ、アジアンオカルティックなバトルシーンを創り上げていると云えよう。連載時は週ごとにバトルの流れが中断されてやきもきさせられもしたが、完結した今ならば疾走感を保って読み進められる。

失敗して、強くなる
 『シャーマンキング』(第30夜)の時に少し触れたように、本作に流れるチベット密教、ヒンドゥー教的なモチーフは物語の味付けに留まっていると云えなくもない。ただ、それらとは違った地平で味わい深いテーマを内包しているのも確かだ。
 普通の(とはいえ親にネグレクトされていたが)高校生として登場した八雲は、パイと出会い、彼女を護りながら共に人間になるために戦うことを決意する。段々と力を着けてはいくものの、強大な敵を前に苦戦を強いられ、失敗したり敗北したりすることも多い。トータルで云えば、成功よりも恐らく失策の方が多いくらいだ。
 この失敗続きの八雲が、己の無力を痛感し、周囲の事物とのつながりに気付くことで人間として成熟していく様は、素朴な展開ではあるが、それだけに誰が読んでも勇気付けられる。人は必ず失敗する。その時に人はどう生きるのか(どう生きねばならないのか、ではない)を示してくれているように思えるのだ。
 作者が精神的に追い詰められていた(文庫版の巻末「あとがきのようなもの」に詳しい)事情もあり、連載時は中盤が冗漫な印象を持っていた。が、いま再読してみると意外とまとまっているという印象を受ける。「わざと引き延ばすようなそんな構成力は持ち合わせ」ず、「できるだけ前に描いたことと違うことを描かなくては、と苦しんでいた」という作者の言(『ヤングマガジン緊急増刊 3X3EYES 完結記念 THE LAST PARTY』インタビュー)にも納得がいく。
 恐らく作者の心的不調は、物語に対して誠実過ぎた故ではないだろうか。創作者として危険な状態だったに違いないが、それを抱いたまま15年に及ぶ連載を駆け抜けた作者には敬意を表したい。誰もが笑顔を見せる大団円は、やはりいいものだ。
 本編の連載は終了したが、不定期に後日譚が発表されているようである。文庫版最終巻では、その一部を垣間見れるし、コミック・小説投稿サイト「E★エブリスタ」とヤングマガジン編集部の共同企画として創られたWebコミックレーベル「ヤングマガジン海賊版」では、「3×3EYES 外伝」としても数編(恐らく全て)が公開されている。作者の肩の力が抜けた様子が後日譚とリンクして快いものとなっている。
 なお、2014年12月26日から、同じく「ヤングマガジン海賊版」にて続編的新エピソード「幻獣の森の遭難者」が連載を開始している。獣魔術や特殊能力を駆使したアクション要素の多い展開となっており、正統的続編と云っていいだろう。

*書誌情報*
☆通常版…B6判(18.2 x 12.8cm)、全40巻。電子書籍化済み(紙媒体は絶版)。

☆文庫版…文庫判(14.8 x 10.6cm)、全24巻。巻末に新規「あとがきのようなもの」、作者インタビュー記事「3×3EYESを振り返って」掲載。最終巻には「フルカラーmini画集」つきの特装版あり。

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第99夜 破滅に挑む、人の悲しみと儚さか…『百億の昼と千億の夜』

 2013/08/11  100夜100漫, , , ,

「神と戦うのか」「おお そうとも/わたしは相手がなに者であろうと戦ってやる/この わたしの住む世界を滅ぼそうとする者があるのなら/それが神であろうと戦ってやる!」 『百億の昼と千億の夜』光瀬龍 原作、萩尾望都 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(1977年7月……

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第98夜 モノの言葉を知るための魔法…『まじかる☆タルるートくん』

「そうか/タルが魔法をかけなくても…/グローブにも魂があって/火にも心があって…/風や水や土………/みんな生きているって…/生きて…」 『まじかる☆タルるートくん』江川達也 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1988年8月~1992年9月)  江戸城本丸(えどじ……

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第97夜 不埒な欲望全開で悪霊退治…『GS美神 極楽大作戦!!』

「美神さんっ!!/ぼかあっ…ぼかあもうっ!!」「いーかげんにしなさいっ!!」 『GS美神 極楽大作戦!!』椎名高志 作、小学館『週刊少年サンデー』掲載(1991年4月~1999年9月)  悪霊を除霊し、霊的被害を未然に食い止める国家資格ゴーストスィーパー。そんな彼……

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第96夜 戦国系変態ギャグに仄見える純情…『こいつら100%伝説』

「きみのいってることは/バカバカしさの中にも/きらりと光るものがあるが/やっぱり大バカモノと呼ばせていただきたいっ」 『こいつら100%伝説』岡田あーみん 作、集英社『りぼん』掲載(1989年4月~1992年8月)  時は戦国、世は地獄。忍術の達人である先生は、そ……

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第95夜 野望を貫き、護ることこそが悪の流儀…『はじめてのあく』

「悪の組織が世界を獲ろうとする理由――わかるか来栖?」 『はじめてのあく』藤木俊 作、小学館『週刊少年サンデー』掲載(2009年1月~2012年5月)  神奈川県の藤沢で暮らす高校生、渡キョーコ(わたり・――)は、ある朝とつぜん体の自由を奪われる。従兄弟の阿久野ジ……

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第94夜 陰惨な謎に挑むのは1人?2人?…『人形草子あやつり左近』

「人形遣いは人間遣い/腹話術は読心術/真似るのは声色だけでなく内なる声」 『人形草子あやつり左近』写楽麿 原作、小畑健 漫画、集英社『週刊少年ジャンプ増刊』→『週刊少年ジャンプ』掲載(1995年4月[読切掲載]~1996年4月)  引っ込み思案で気弱な性格の橘左近……

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第93夜 仮想ロボバトルと男の娘の惑い…『バーコードファイター』

「そのゴーグルを通して見た物は、ゲーム世界での現実なの。/烈ちゃんは今、パイロットスーツに身を包んで愛機のコクピットに座る……、/バーコードファイターなのヨ!」 『バーコードファイター』小野敏洋 作、小学館『月刊コロコロコミック』掲載(1992年3月~1994年6月……

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第92夜 優しさ、ゆえに精神を壊す…『MIND ASSASSIN』

「この平和な時代で/ボクの力が本来の意味で使われることは もうないと思ってた……/でも それは…自分が勝手にそう望んでいただけなのかもしれない…」 『MIND ASSASSIN』かずはじめ 作、集英社『週刊少年ジャンプ』→『週刊少年ジャンプ増刊号』→『月刊少年ジャン……

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第91夜 鈍く終局する世界を見て歩くもの…『ヨコハマ買い出し紀行』

「この数年で世の中も随分変わったわ/時代の黄昏が/こんなにゆったり来るものだったなんて/私は多分/この黄昏の世をずっと見ていくんだと思う/私には/時間はいくらでもあるからね」 『ヨコハマ買い出し紀行』芦奈野ひとし 作、講談社『月刊アフタヌーン』掲載(1994年4月[……

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