漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

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――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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【一会】『七つの大罪 24』……情を知った弱さ、それを捨てた強さ

七つの大罪(24) (講談社コミックス)

 騎士団〈七つの大罪〉を筆頭とする人間側と、〈十戒〉の率いる魔神族との戦いを描く鈴木央的アーサー王物語『七つの大罪』。昨年12月に24巻が発刊されました。3か月遅れとなりましたが、色々と書いてみたいと思います。
 ちなみに今巻の限定版付録である「いろはかるた」は、今年のお正月は遊べずじまい。カードを眺めて満足してしまいました。来春には遊べるでしょうか…。

 今巻では、大きく分けて2つの戦いが描かれています。まずは前半、〈憤怒の罪(ドラゴン・シン)〉メリオダスとデリエリ&モンスピートの戦いから見ていきましょう。
 復活したメリオダス。いつもの調子でエリザベスにセクハラチックな絡み方をしていますが、〈傲慢の罪(ライオン・シン)〉エスカノールたちの活躍で数体には勝利したものの、まだまだ〈十戒〉には健在な者も多く、形勢は依然として不利と云うべきでしょう。
 なんにせよ、いまメリオダスの眼前にいるのはデリエリとモンスピートです。ザラトラス達が苦戦したこの2者を相手に、しかしメリオダスは終始優勢に戦い続け、そのまま決着をつけます。デリエリとモンスピートの生死は不明ですが、相当な痛手を受けたことでしょう。
 気になるのは、やはりメリオダスの変わり方でしょうか。以前は飄々として、かつ慈悲深かった彼ですが、魔神の力が色濃く発揮されるようになり、敵に致命傷を与えることを躊躇しなくなりました。

 メリオダスが圧倒的な勝利を収める一方、リオネス城では〈強欲の罪(フォックス・シン)〉バンやヘンドリクセンを含む聖騎士達と、ドレファスの身体を乗っ取っているフラウドリン、そしてグレイロードの戦いが始まらんとしていました。
 そもそも分が悪めな戦いなのですが、捕らえた人間を魔神化させるというグレイロードの能力と、「不殺」の戒禁のために攻撃もままならず、状況は更に悪化します。ギルフロストのまさかの正体が明らかになり、ギルサンダーが何処かへと連れ去られたりもしますが、この絶望的な戦況をひっくり返したのは、ガランの戒禁で石と化したはずの〈暴食の罪(ボア・シン)〉マーリンでした。
 彼女の魔力は「無限(インフィニティ)」。敵からも味方からも反則呼ばわりされるほどの超高性能な魔力です。しかも戒禁も効かないようで、バンからの「人間じゃねえのか?」との問いは否定しているものの、真の名が人間には発音できないようですし、その出自からして、やっぱり普通の人間ではないのだと思います。己の刻すら止める「無限」の魔力は、世界の総てを識りたいという彼女の欲求から生じたもののようです。そういう意味で彼女は「暴食の罪」なのだと思いますが、どうでしょうか。

 ともあれ、マーリンの活躍でグレイロードは無力化。残るはフラウドリンです。逃げるフラウドリンにヘンドリクセンが追いすがり、駆けつけたザラトラスとともに2対1の戦いになりますが、分は悪そう。「浄化(パージ)」も効果がありません。
 まさかの助太刀となったのは、偶然にも魔神の肉を食べて赤色魔神化していた変身豚ホークの一撃(一息?)。つづくザラトラスの捨て身の「浄化」により、ついにフラウドリンをドレファスの肉体から引き離すことに成功します。
 更にドレファス渾身の一撃がフラウドリンを襲い、ここに、ザラトラス、ヘンドリクセン、ドレファスの3人が実に十数年ぶりに相まみえることとなりました。かつて敵に心を奪われ、ザラトラスの命を奪い、国と世界の危機すら招いたヘンドリクセンとドレファスに、悔恨が無いわけがありません。しかし、それだけで社会に出た大人の責任が果たされるというわけでもないでしょう。自分の仕事を果たし、再び消える刹那にザラトラスが2人にツッコミを入れたのは、そういうことだと思います。ふわっとした性格ですが、間違いなくザラトラスは聖騎士長に相応しい人物だったと云えるでしょう。

 ひとまずこれで一息と思いきや、自らの魔力「巨大化(フルサイズ)」を用いたフラウドリンはまだ健在。満を持してやって来たメリオダスとの戦いとなります。
 死から蘇り、恐らくはそれだけかつての魔神としての存在に近づいたメリオダスの力は圧倒的です。ですが、やはり以前の彼にあった“情け”のようなものが欠落している様子。最後の手段に出たフラウドリンによって王国は消滅の危機に瀕することになりますが、それを止めようともしないのは、絶対の自信があるからか、あるいは王国と生き残った人々のことなど眼中にないのか、どちらでしょうか。
 結果的にピンチを救ったのは、ドルイドの里での修行中に何故か子どもに戻ってしまったグリアモールでした。
 フラウドリンは、ドレファスに成り代わっている間ずっと自分の息子としてグリアモールを見ていたわけで、何かしら親子の情めいたものが芽生えていたのかもしれません。親子の愛情を知り、結果的に弱くなったフラウドリンと、情をかなぐり捨てて強さを取り戻したメリオダス。両者の対比は皮肉で、ほろ苦いです。

 戦いは、ひとまず終わりました。バンがメラスキュラ、エスカノールがゼルドリスとエスタロッサ、マーリンがグレイロード、メリオダスがデリエリとモンスピート、そしてフラウドリンを退けた(全員を消滅させたわけではないですが)この戦い、勝敗は〈七つの大罪〉を始めとする聖騎士、ひいては人間たちの勝利として間違いないでしょう。
 しかし、失ったものも数限りなかったように思います。マーリンによって城や建物はすぐに復旧したものの、人の命は還ることはありません。デリエリの「連撃星(コンボスター)」で強化された一撃を受けて倒れたホークママが健在だったのは、ほぼ唯一の明るい報せと云えましょう。
 ドレファスとヘンドリクセンに対しては、手放しで復帰を喜べないということもあります。殉職した聖騎士たちの葬送の席で、彼らをめぐって諍いが起こりますが、バルトラ王の云う通り、生き残った人々は心を1つにしないとならないところです。
 そしてもう1つ、大きな喪失が。敵とはいえ、害意を無くしたフラウドリンを容赦の無い一撃で葬ったメリオダス。彼は、蘇るごとに感情を無くし魔神に逆行していく、とマーリンは云います。リズの敵を討ち、エリザベス達を救うために取り戻した力は、それゆえに彼の孤独を深める結果となりました。廃墟で独り、酒を飲む彼を見つけたエリザベスに、メリオダスは涙を流します。
 そんな彼の側に居るとエリザベスは云い、バンもエスカノールも、それぞれのやり方で友情を示します。キャメロットを新たな根城とした〈十戒〉残党との戦いをひかえ、魔神の力を用いざるを得ない現在の状況に、変わりがあるわけでもありませんが、今のメリオダスには何より有り難いことでしょう。

 新たな聖騎士長にまさかの抜擢劇、ここまでの不穏な行動によって囚われていたらしい〈色欲の罪(ゴート・シン)〉ゴウセルの釈放、そして再会した〈怠惰の罪(グリズリー・シン)〉キングと〈嫉妬の罪(サーペント・シン)〉ディアンヌ。気になる展開が色々と巻き起こったところで、本編はお開きです。番外編の「大罪Vavcation」で軽くクールダウンして(といいつつマーリンの秘めた思いが垣間見えたりしていますが)、次巻へと続きます。

 今巻について書くのが遅れたため、次巻25巻は3/17に既に刊行済み。刊行日順に読んで書いていますので、記事になるのはしばらく後になります。すぐに手を伸ばしたいところですが、ぐっとこらえておきましょう。



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