100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

*

「 SF 」 一覧

第145夜 非現実への色欲に隠した、承認への欲望…『ルサンチマン』

「まだ現実に未練があるのか?」「あっ、あたりまえだ。/大体、そんな話/信じられっかよ。」「お前が、/現実の何に期待してるかわからんが、/あきらめろ。現実に期待するな。」「ぐっ、よ、余計なお世話だ。」「30年生きて、お前もわかっているはずだ。現実世界でおれ達に勝利はない!/おれ達は生まれた時点で、/敗北者だったのだ!!」


ルサンチマン 1 (ビッグコミックス)

ルサンチマン花沢健吾 作、小学館『ビッグコミックスピリッツ』掲載(2004年1月~2005年2月)

 西暦2015年、東京。坂本拓郎(さかもと・たくろー)は零細印刷会社に勤める三十路間近の冴えない男だ。実家暮らしで肥満ぎみ、頭髪も淋しく分厚い眼鏡をかけた彼の唯一の楽しみは、ボーナス後のソープ通い。当然のごとく、女性と付き合った経験など皆無である。
 そんな彼の30歳の誕生日。旧友たちと酒を飲んだ際に、自分の同類のはずの越後大作(えちご・だいさく)が「女にもててしょうがない」と云うのを聞いて驚き焦る。
 しかし、よくよく聞けば、それはいわゆる“ギャルゲー”のことだということが判る。呆れる拓郎だったが、越後のアパートで体験した最新のギャルゲーは、高度な技術を駆使したまさに“もう1つの現実”だった。
 葛藤するものの、些細なことから現実を諦める決心をし、貯金をはたいてギャルゲーのための設備を整えようとする。その時、仮想現実世界での恋人として、拓郎が偶然みつけた人格AIソフトが、「TUKIKO(月子)」だった。
 はやる気持ちを抑えつつ、月子との仮想現実ライフを始める拓郎だが、初手から月子に拒絶され、つまずいてしまう。ただのギャルゲーヒロインのAIとしてはあり得ない挙動をする月子は、何なのか。
 彼女を中心に、大作、拓郎の同期で営業の長尾まりあ(ながお・――)、仮想世界で台頭する武闘派ギルド「第9帝国」総帥の江原らを巻き込み、仮想現実と現実は混濁していく。

(さらに…)

広告

広告
thumbnail

第141夜 今は昔、天の月より下りし皇女、王道を示す…『月華美刃』

「国のため?/考えてるか/んなモン!!/私はそんな難しい事はよく分からん!!/だが/私は知ってる/母様が命をかけて守ろうとしてきた物が何なのかを知ってる/それを奪われるのは/たまらなく腹が立つのだ!!/それだけだ!!/悪いか!!」 『月華美刃』遠藤達哉 作、集英社『……

thumbnail

第139夜 陰鬱でも絶望ではない…『なるたる 骸なる星 珠たる子』

 2014/01/12  100夜100漫, ,

「あーーー図工ってキライ〜〜/あたしのこのあふれる夢を/こんなちっぽけな紙の上に描かせようなんて/絶対!!/ムリ!!」「じゃあその夢ってもんは/どれだけの大きさがあれば作れるんじゃろ」「  地球」 『なるたる 骸なる星 珠たる子』鬼頭莫宏 作、講談社『月刊アフタヌー……

thumbnail

第136夜 エイリアンたちと、黒く楽しく異文化交流…『レベルE』

「現在 地球には数百種類の異星人が飛来している/気づいていないのは地球人だけなのだ/彼らの目的は様々で 国家レベルの策略から個人レベルの研究・犯罪まで多岐にわたる/なかには/何のために地球に来たか忘れてしまった奴も いるだろう」 『レベルE』富樫義博 作、集英社『週……

thumbnail

第128夜 流れる涙は、狂おしい郷愁のゆえか…『地球(テラ)へ…』

 2013/12/06  100夜100漫, , ,

「みんな聞け/ミュウは弱い!/傷つくとショックを受け/仲間たちの死に気をとられる/だがこれは戦闘だ!!/勝つことだけを考えろ!!/我々はただひとつのことだけを考えるんだ!/この戦いに勝って地球(テラ)へ…/地球へ行くと!」 『地球へ…』竹宮恵子 作、朝日ソノラマ『月……

thumbnail

第126夜 ≠アニメ、もう1つの“反逆”に熱くなれ…『スクライド』

「運命−−−−これほど反逆し甲斐のある相手もいねーーな/そう思うだろ? あんたも!!」 『スクライド』黒田洋介(スタジオオルフェ) シナリオ、戸田泰成 漫画、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(2001年6月~2002年4月)  21世紀初頭、神奈川県横浜を中心……

thumbnail

第119夜 伝説の大和型4番艦、起つ!…『新海底軍艦 巨鋼のドラゴンフォース』

 2013/10/26  100夜100漫, , ,

「アネット拉致サルトノ報ニ接シ/海底軍艦ラ號ハ直チニ出動/コレヲ救出セントス/本日天気雨天ニシテ波高シ」 『新海底軍艦 巨鋼のドラゴンフォース』飯島ゆうすけ 作、角川書店『月刊少年エース』掲載(1995年9月~1996年11月号)  第二次世界大戦末期、各国は、……

thumbnail

第117夜 地に澱む神代の穢れに抗うは、筋肉質な純情か…『天顕祭』

「木島/戻って来いよ/たった1年だけどよ/お前のいねェ足場はさみしいもンだ」 『天顕祭』白井弓子 作、同人誌発表(2006年2月~2007年8月)→サンクチュアリ出版より単行本  かつて、この国は「汚い戦争」を経験し、フカシとよばれる毒物に汚染された。そこかしこが……

thumbnail

第115夜 江戸前の七兄弟、親を偲んで旅路かな…『虹色とうがらし』

「つまりなにか?/おれたちは一人の男があっちこっちの女に手をだして産ませた子どもってわけか?」「人ぎきが悪いな、それぞれみんな本気で愛しあった結果じゃ。/それが証拠に同じ年のやつは一人もおらん。」「ふざけるない!」 『虹色とうがらし』あだち充 作、小学館『週刊少年……

thumbnail

第99夜 破滅に挑む、人の悲しみと儚さか…『百億の昼と千億の夜』

 2013/08/11  100夜100漫, , , ,

「神と戦うのか」「おお そうとも/わたしは相手がなに者であろうと戦ってやる/この わたしの住む世界を滅ぼそうとする者があるのなら/それが神であろうと戦ってやる!」 『百億の昼と千億の夜』光瀬龍 原作、萩尾望都 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(1977年7月……

広告

広告