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第115夜 江戸前の七兄弟、親を偲んで旅路かな…『虹色とうがらし』
「つまりなにか?/おれたちは一人の男があっちこっちの女に手をだして産ませた子どもってわけか?」「人ぎきが悪いな、それぞれみんな本気で愛しあった結果じゃ。/それが証拠に同じ年のやつは一人もおらん。」「ふざけるない!」
『虹色とうがらし』あだち充 作、小学館『週刊少年サンデー』掲載(1989年12月~1991年4月)
はるか未来のその昔。地球によく似たとある星の、江戸という町でのお話。
火消しの少年、七味(しちみ)は、片親だった母を亡くし、その遺言で龍神堀柳町(りゅうじんぼりやなぎちょう)に赴く。そこに建つからくり長屋には、七味と腹違いの兄弟が暮らしているのだという。
父親のことを最後まで教えず逝った母の言葉をそれでも信じ、ほどなく長屋に行き着いた七味を迎えたのは、同じように母のない胡麻(ごま)、芥子の坊(けしのぼう)、菜種(なたね)、陳皮(ちんぴ)に山椒(さんしょう)の5人の異母兄弟。聞けば、もう1人、旅好きで不在の麻次郎(あさじろう)がいるという。
長屋の大家、彦六(ひころく)から、この7人全員、母親が違うと聞かされた七味は「どこのどいつだ、その助平親父は!?」と憤るものの、煙に巻かれて長屋暮らしを始めることに。
とはいえ、兄弟は落語家、坊主、発明少年に忍術幼児と曲者ぞろい。紅一点ですぐ下の妹、菜種は何かと七味に食ってかかるし、兄弟だけに打ち解けるのが早かった分、平穏な日常とはいかない按配だ。
やがて兄弟は、せっかく揃ったのを節目に、それぞれの故郷を巡り、母親の墓参りをする旅に出ることに。しかし、仄見えていた陰謀が動き出し、兄弟達は命を狙われる破目になる。
いったい刺客の狙いは何なのか。そして、まだ見ぬ兄弟達の父親の正体は。兄弟達の旅は続く。