漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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「 歴史 」 一覧

【一会】『黒博物館 ゴーストアンドレディ 上下』……意思を貫く戦いと、絶望を望んで希望を成すということ

黒博物館 ゴースト アンド レディ 上 (モーニング KC)黒博物館 ゴースト アンド レディ 下 (モーニング KC)

 「100夜100漫」カテゴリにしようか迷いましたが、シリーズとしては続きがありそうなので「一会」にて書くことにします。藤田和日郎先生の新刊(といっても刊行からだいぶ経ってしまいましたが)『黒博物館 ゴーストアンドレディ』です。

あらすじ
 大英帝国で捜査されたすべての証拠品が収蔵されているという黒博物館。そこを訪れた老紳士と前作『黒博物館 スプリンガルド』でも登場した学芸員(キュレーター)の会話から物語は始まります。老紳士の正体は、ドルーリー・レーン王立劇場に出没する幽霊〈灰色の服の男(グレイマン)〉。かつて決闘代行人として有名だった男です。
 その幽霊グレイが、展示されている「かち合い弾」の由来を教える代わりに頼みを聞いて欲しいと語り始めたのは、とある女性と自らの関わりでした。
 1852年12月7日、劇場にいたグレイのもとに「私を取り殺してください」と言ってきた女性がいました。その女性フロー(フロレンス)は、人間の頭上に浮かぶ悪意の固まり〈生霊〉を見ることができ、自らの〈生霊〉が自分を苛むことに耐えかねて死を願うようになったといいます。
 それまでただ演劇を観るだけだったグレイは彼女の頼みを引き受け、舞台で演じられる悲劇のように最高の演出をしようと企てます。すなわち、どうせ取り殺すのなら、彼女が絶望のどん底に陥った瞬間であるべきだ、と。フローが絶望する瞬間を目の当たりにするため、彼女の“やりたいこと”が頓挫する瞬間を心待ちにするグレイは、彼女と行動を共にすることに。フローの〈生霊〉が彼女自身を苛む理由でもある、彼女の“やりたいこと”。それは、怪我や病気に苦しむ人々を救う、新たな看護法の確立でした。

(さらに…)

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【一会】『アルテ 3』……難仕事の顛末は、よく寝、よく食べ、よく鼻血

 ここでは初めて言及する『アルテ』。第3巻が先日発刊されたので語りたいと思います。  盛期から後期ルネサンスへと移りつつある16世紀初頭のフィレンツェを舞台に、貴族の少女でありながら“自分自身の力で生きる道”を目指し、偏屈な画家のおしかけ弟子となったアルテ。そんな彼……

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【一会】『白暮のクロニクル 4』……反逆者の来歴、カインと吸血鬼、彼の嫌悪の意味

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【一会】『純潔のマリア exhibition』……魔女マリアをめぐる、彼女や彼のイイハナシ

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第194夜 可憐な悪夢と、凄惨な現実を、その日記に…『アノネ、』

「誕生日にもらった鍵つきの日記帳は/秘密の扉みたい/床におくと鏡にもなるの/のぞきこむと/未来がみえる」「花子/花子/どうしてこんなことに」「太郎さん/太郎さん/あのね――」 『アノネ、』今日マチ子 作、秋田書店『エレガンスイブ掲載(2011年2月~2013年4月)……

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第190夜 海を渡った会津者たちの夢の果て…『White Tiger〜白虎隊西部開拓譚〜』

「黄金を夢見た者も/故国で行き場をなくした者も/覚悟して海を渡りここに行きついた/ここで生きていくほかないのだ/異国で生きるとはそういう事だ」 『White Tiger〜白虎隊西部開拓譚〜』夏目義徳 作、集英社『グランドジャンプ』→「GRAND JUMP WEB」掲……

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【一会】『シャーリー 2』……きっと沢山ある日々のうちの8片

 2003年に、まだ「1巻」という明記すらなく、初期作品集の趣きに近い1冊として刊行された『シャーリー』を、実は『エマ』(100夜100漫第60夜)よりも先に読んだ自分ですが、11年の時を経て2巻の刊行が成るとは想像していませんでした。もっとも『Fellows!』(のちに……

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第183夜 その苦界を愛した男の、稚気と危機と機知…『じょなめけ』

「癖かな……」「癖?」「俺ぁ子供の頃から茶屋で働いて/客が望むものをまず考えろとたたきこまれて育った/そういうのはもう抜けねぇよ/ずっと裏方でやってきたんだ/“板元”って稼業は世の中全部を客にした茶屋さ/だから俺はやれば最高の板元に……/日本一の裏方になる自信があるんだ」 ……

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第158夜 狂わざれば、その時代を生きること能わず…『シグルイ』

「士(さむらい)の命は/士の命ならず/主君のもの/なれば/主君のために死場所を得ることこそ/武門の誉れ/封建社会の完成形は/少数のサディストと多数のマゾヒストによって構成されるのだ」 『シグルイ』南條範夫 原作、山口貴由 作画、秋田書店『月刊チャンピオンRED』掲載……

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