100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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第122夜 血まみれの少女が焦がれた明日は…『キリエ 吸血聖女』

「神様…どうして私なんかを生かされたのですか…/私なんかを…/私は/あの子達の為に泣いてあげる事もできないのに…」


キリエ 1―吸血聖女 (少年チャンピオン・コミックス)

キリエ 吸血聖女杉村麦太 作、秋田書店『週刊少年チャンピオン』掲載(2000年8月~2002年8月)

 1870年、アメリカ西部。そこでは狂血病という謎の疾患が流行していた。発症者は発作的に人の血を欲し、やがては理性を破壊され人間性を失っていく。すなわち吸血鬼になるのだ。いつ人外のものになるとも知れぬ患者たちは、それ故に差別を受け、発作前でも無条件に殺されることもしばしばだった。
 そんな西部をさすらう1人の小柄な少女がいた。ライフルの仕込まれた黒い日傘に黒髪、黒ずくめの服、不自然に白い肌。そして血のように赤い瞳をした彼女の名はキリエ。人間を母に、旧大陸より来たりし吸血鬼の王「黒衣の者」を父に生まれた“半分”の子だ。色濃く受け継いだ吸血鬼の血に苛まれながらも、狂血病を治療する唯一の手段、自らの父親の純血を求めての旅路は続く。
 自称製銃技師のラーラマリアと道連れとなった彼女の行く手には、血の雨が絶えない。虐げられる狂血病患者たちを庇い、合衆国政府より狂血病とキリエ浄滅の命を受けた防疫修道会(ゲヘナ)との銃撃戦は激しくなる一方だ。
 封じられた「黒衣の者」が防疫修道会の本拠地である西海岸の聖地ソリアに移管されたことを受け、キリエ達はソリアを目指す。必ず「黒衣の者」を倒し、狂血病が撲滅されることを願いながら――。

(さらに…)

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第121夜 舞台で融け合う笑いと真剣のエチュード…『犬神もっこす』

「…1か0かなんですね/でも/その間にも割り切れない多くの感情が広がっているって思いませんか/1と0の間に広がる/感情の豊穣の/海……」 『犬神もっこす』西餅 作、講談社『モーニング』掲載(2011年10月~2013年2月)  幼い頃から喜怒哀楽の感情が表に出ず、……

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第120夜 甘々な見た目に隠されたほろ苦さ…『シュガシュガルーン』

「覚えてる…?/ずっと前…/約束したよね/「あたしたちは/ずっと親友」 『シュガシュガルーン』安野モヨコ 作、講談社『なかよし』掲載(2003年9月号~2007年5月号)  魔界に住む2人の小さな魔女、伝説の魔女シナモンの娘で元気者のショコラ=メイユールと、現女王……

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第119夜 伝説の大和型4番艦、起つ!…『新海底軍艦 巨鋼のドラゴンフォース』

 2013/10/26  100夜100漫, , ,

「アネット拉致サルトノ報ニ接シ/海底軍艦ラ號ハ直チニ出動/コレヲ救出セントス/本日天気雨天ニシテ波高シ」 『新海底軍艦 巨鋼のドラゴンフォース』飯島ゆうすけ 作、角川書店『月刊少年エース』掲載(1995年9月~1996年11月号)  第二次世界大戦末期、各国は、……

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第118夜 卑屈者に贈る、洒脱で過激な虚飾術…『メイキャッパー』

 2013/10/23  100夜100漫, ,

「ここ一番/オトしたい男がいるとき言って来な/キリストも欲情するイイ女にしてやる」 『メイキャッパー』板垣恵介 作、(スタジオシップ[現 小池書院])『ヤング・シュート』→『コミック・シュート』』掲載(1989年7月~1991年9月)  例えどんな容貌であろうとも……

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【探訪】コミティア106参加記録…冷たい雨だけど熱かった

 2013/10/22  漫事探訪

 コミティアに参加するのは二度目(ちなみに前回については以下をご参照下さい)。  【探訪】コミティア105(自主制作漫画展示即売会)に行ってきました  前回買った本の続きが出ているか、あるいは新しい作品との出会いがあるか、など楽しみにしていたのだが、当日は生憎の雨。気温も低く……

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第117夜 地に澱む神代の穢れに抗うは、筋肉質な純情か…『天顕祭』

「木島/戻って来いよ/たった1年だけどよ/お前のいねェ足場はさみしいもンだ」 『天顕祭』白井弓子 作、同人誌発表(2006年2月~2007年8月)→サンクチュアリ出版より単行本  かつて、この国は「汚い戦争」を経験し、フカシとよばれる毒物に汚染された。そこかしこが……

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第116夜 喜怒哀楽を一緒くたに、画稿に叩きつけろ…『燃えよペン』

 2013/10/17  100夜100漫, ,

「一、命がけで描け/一、限界を超えて描け/一、夢を見て描け/一、自信をもって描け/一、思い切って描け/一、食うのを忘れて描け/一、よく寝てから描け/一、明日も描け/一、最後まで描け/一、失敗したら新しいのを描け」 『燃えよペン』島本和彦 作、竹書房『月刊シンバッド』……

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第115夜 江戸前の七兄弟、親を偲んで旅路かな…『虹色とうがらし』

「つまりなにか?/おれたちは一人の男があっちこっちの女に手をだして産ませた子どもってわけか?」「人ぎきが悪いな、それぞれみんな本気で愛しあった結果じゃ。/それが証拠に同じ年のやつは一人もおらん。」「ふざけるない!」 『虹色とうがらし』あだち充 作、小学館『週刊少年……

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第114夜 決して相容れず、けれどもかけがえのないもの達…『蟲師』

「蟲……?」「ああ/陰より生まれ/陰と陽の境にたむろするモノ共のことだ/それが見える者は少ないが/この世界の隅々にまで/それはいる」 『蟲師』漆原友紀 作、講談社『アフタヌーンシーズン増刊』→『月刊アフタヌーン』掲載(1999年1月(読切)~2008年8月)  蟲……

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