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漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

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【一会】『いぬやしき 9』……束の間の平穏、そして迫る大災厄

いぬやしき(9) (イブニングKC)

 普通の人間だった初老男性と男子高校生が、異星人が起こしたアクシデントによって高性能のアンドロイド化。それぞれ極に振れた2人を対比し、人智を超えた能力を誇る機械となった男子高校生・獅子神皓(ししがみ・ひろ)の暴走を食い止めようとする初老男性・犬屋敷壱郎(いぬやしき・いちろう)の活躍を描く“おとうさん英雄譚”が、本作『いぬやしき』です。
 今秋アニメ化も決定しているこの漫画の9巻が、8巻の予告通り5月に出ました。今更ですが、読んだ感想を書いておきたいと思います。
 ちなみに、今巻にはカラーコミック付きの特装版が存在します。2年ほど前に『マガジン』に掲載された出張読切に着彩したもののようですが、内容的にはダークヒーロー皓のサイドストーリーといったところかと。

 それはそうと、今巻の話に入りましょう。
 皓が飛行機を落とし、さらに皓と壱郎が闘ったことで東京の街には甚大な被害が出ました。当然、命を落とした人もたくさん居るのですが、壱郎はそうした死者や怪我人たちを次々に治療していき、即座にネットで共有されて文字通り「神」と呼ばれることに。
 そんな彼の脳裏に去来するのは、これまでの人生でした。58年生きてきた意味は今この時のためにあったと彼は独白して涙を流すのですが、人の命を大切と感じる彼の性格は、どのように培われてきたのでしょうか。そこも気になりますし、もっと気になるのは彼の涙でしょう。その悲しそうにも見える表情からは、もしかしたら言葉とは裏腹に、自分の今の境遇(≒アンドロイド化してしまったこと)を強引に「よかった」と思い込もうしているようにも、思われます。
 ともあれ、事態は沈静化されました。ネット上で壱郎は有名人になったようですが、彼の家族は、直に壱郎の活躍を見た麻理以外はまだ何も知らない様子です。そして一方、壱郎にやられた皓の方も、完全に斃れたわけではありませんでした。

(さらに…)

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