100夜100漫

漫画の感想やレビュー、随想などをつづる夜

*

「 日別アーカイブ:2015年01月06日 」 一覧

第194夜 可憐な悪夢と、凄惨な現実を、その日記に…『アノネ、』

「誕生日にもらった鍵つきの日記帳は/秘密の扉みたい/床におくと鏡にもなるの/のぞきこむと/未来がみえる」「花子/花子/どうしてこんなことに」「太郎さん/太郎さん/あのね――」


アノネ、(上)

アノネ、今日マチ子 作、秋田書店『エレガンスイブ掲載(2011年2月~2013年4月)

 自由の国、邦照国(ネーデルランド)。しかし、宗主国である新制帝国は“東方狩り”と呼ばれる人種隔離政策を開始する。
 東方系である浅田花子(あさだ・はなこ)と姉の真子(まこ)、両親たちの一家もその対象となり、彼らは父親の会社の屋根裏に隠遁して生活することとなる。物音一つが致命的となる日々の中、花子は「あのね、」という書き出しで日記をつける。
 その鍵付きの日記帳に向き合う度、花子は扉の無い真っ白な部屋を幻視する。そこに閉じこもる少年、太郎(たろう)は、花子が闖入してくるたびに彼女を脅し、虐めるのだった。
 性の目覚め、同居することになった藤原一家の少年、浩(ひろし)との仄かな恋、そして姉との確執。しかし、それらは全て、ある日突然に霧散する。
 花子たちが移送された収容所は、夥しい死に満ちていく。それでも、女優の原麗子(はら・れいこ)と出会い、自らを“物語の主人公”と信じて、花子は懸命に生きようとする。
 一方、支配的な父親に虐待を受け続ける太郎は、暮らしの中で孤独を深める。それは、独裁者への道程へと繋がっていくのだった。
 角砂糖のように甘く白い部屋の中で続く、出逢うはずのない花子と太郎の逢瀬。そして、過酷な日々。解体された物語は、どこへ向かうのか。

(さらに…)

広告

広告

広告

広告