「もし傷つくのなら/最初の相手は/有馬がいいわ/……/その日/“彼氏”“彼女”になりました。」 『彼氏彼女の事情』津田雅美 作、白泉社『LaLa』掲載(1996年6月~2005年3月) 神奈川県内トップの進学校、県立北栄高校に入学した宮沢雪野(みやざわ・ゆきの)……
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第68夜 古流VS剣道にみる“強さ”…『チャンバラ 一撃小僧隼十』
「…なにをビビッちょるんかオレは…/戦を挑むんやったら怖いのは当たり前やろ…/それでも戦った男がそこにおる!!/…ふるえなんち…/噛み砕け!!/オレも“鷹津”やろうが!!!」

『チャンバラ 一撃小僧隼十』山田恵庸 作、講談社『週刊少年マガジン』掲載(2002年10月~2003年2月)
九州の剣道大会に再三乱入してはつまみ出される少年、鷹津隼十(たかつ・はやと)。彼には、剣道部に所属できない理由があった。“一太刀に己の全てを賭ける一撃剣”を旨とする、400年の歴史を持つ古流剣術、鷹津派一刀流(たかつはいっとうりゅう)。彼はそのただ一人の後継者なのだ。
剣道を始め他流試合は禁じられ、門下生もいない道場で、祖母のサエからひたすらに型を伝授され育った隼十は、どうしても自分の力を試したい。それに反対する祖母の厳しさには理由があった。隼十の父、光太郎は10年前に剣道の試合に敗れ、失踪しているのだ。隼十はそれを慮りつつも、自らの気持ちに抗えず家出を決意する。
行き先は、たまたま見つけた父宛の葉書の差出人、鵜飼源十郎(うかい・げんじゅうろう)が住まう東京。父の「剣友」を名乗る源十郎と、その息子の剣道使い、春海(はるうみ)との出会いが、隼十を駆り立てる。
古流剣術対現代剣道、いざ尋常に、勝負――。
古流の面目躍如
自分が某古流剣術を修行したのは一昔前のことだ。漫画や格闘ゲームへの興味が高じての動機不順な入門だったが、意外と同類も多く、楽しい一時期を過ごした。
剣道場を時間を区切って借りての稽古だったので、剣道家たちと顔を合わせることもあった。お互い大人の集団だったから特に何もなかったが、やはり我々の奥底には、勝負してみたいという気持ちはあっただろう(向こうがどうだったかは知らないが)。
前ふりが長くなったが、本作は、かつての自分のそんな溜飲を下げてくれる。ありそうでなかった古流剣術と剣道の勝負は、『セスタス』(第59夜)の日本版とも云うべきコンセプトだ。ただし、本作においては古の技の方に分がある。剣道が生まれ、研鑽されることによって失われた動きや概念が、主人公が振るう鷹津派一刀流においては鮮やかに実践される。その武技が剣道と丁々発止を演じるところはそれだけで痛快だ。
ましてや、鷹津派一刀流の信条は「一太刀に己の全てを賭ける一撃剣」。恐らくは薩摩の古流剣術である示現流をモチーフにしたこの流派の、全身全霊を一撃にかけるという、“少年漫画性”が勝負のクライマックスを否応なしに盛り上げてくれる。剣道経験者からは「こんなの剣道じゃない」という意見もあると思うが、猛々しい古流の技がそこを補って余りあると云えないだろうか。
強さと剣友
本作のような“勝負もの”において、強さの探究はお定まりとも云えよう。無論、それは悪いことではない。本作の主人公である隼十も、当初こそ戦えること自体にのみ価値を見出し喜ぶが、次第に強さとは何かについて考え始める。参加した剣道の試合を通し、仲間に支えられる強さと、孤立する強さという、対立する価値観が提示される。剣道との勝負の果てで、隼十が選んだのはどちらだろうか。
解釈の別れるところと思うが、自分としては、いずれでもないのだと思う。味方との絆だけで相手に勝てるほど、勝負は甘くない。緋村剣心(第35夜)の云うように剣術は殺人術であり、古流においては試合は死合である。一方で、相手不在では勝負自体が起こり得ない。隼十は、1人で型稽古を繰り返す相手不在の淋しさから、故郷を発って上京したのだ。
独りで、己の全力を剣に賭して戦い、同じく死力を尽くし戦っている、まさにその相手との縁を感得する。それができるということが、隼十の至った強さなのではないか。そんな強さをもつ者同士が、敵と仲間という相反する関係性を同時に体現するのが、本作で再三云われる「剣友」なのではないか。自分にはそう思われるのだ。
本作のコミックスは全2巻。恐らく商業的には成功とは云えなかった作品だろう。しかし、荒々しく鮮烈な古流剣術の動き、剣の勝負による心の交感といった要素を、真正面から描いた作風は稀有なものだと思う。
*書誌情報*
☆通常版…新書判(17.2 x 11.8cm)、全2巻。絶版。
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第60夜 いまは遠ざかりし、優雅と峻別の時代の恋情を想う…『エマ』
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第59夜 真の自由を問いかける、古代の拳闘…『拳闘暗黒伝セスタス』
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