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第191夜 逆巻く風雪は、ふたりのために…『千年万年りんごの子』
「留まる力と/変わる力/それでも/すべてのものは無慈悲に終わる/小さな切欠によって/朝日/君だけが確かだ」

『千年万年りんごの子』田中相 作、講談社『ITAN』掲載(2011年12月~2014年2月)
1970(昭和45)年。一組の夫婦が誕生した。
東京の大学の理学部で優秀な成績を収めながらも、寺の拾われ子として育てられたゆえの孤独感を抱える伊岡雪之丞(いおか・ゆきのじょう)と、青森のりんご農家に生まれ、その跡継ぎのために入り婿が欲しい長内朝日(おさない・あさひ)。ある意味で利害の一致がもたらした縁組だった。
雪深いりんごの国で、大家族が紡ぐ慌ただしくも平穏な日々。それは、移ろう時の流れと共に雪之丞の孤独を埋めていく。
しかし、黒森に佇む“おぼすな様”のりんごをめぐる雪之丞のほんの小さな気まぐれで、生活は一変する。
それは、因習か、神威か。妻のための夫のあらがいは、大きな力の前に余りにも微小だった。
りんごの品種更新の忙しさの中、それでも雪之丞はあがき続ける。やがて彼の覚悟は朝日の想いと逢瀬し、一つの約束が実を結ぶ――。
