漫画のレビュー&随想 | 100夜100漫

――夜毎、お話ししましょう。貴方が私を縊(くび)らぬ限りは。

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「 オカルト 」 一覧

第97夜 不埒な欲望全開で悪霊退治…『GS美神 極楽大作戦!!』

「美神さんっ!!/ぼかあっ…ぼかあもうっ!!」「いーかげんにしなさいっ!!」


GS美神 極楽大作戦!!(1) (少年サンデーコミックス)

GS美神 極楽大作戦!!』椎名高志 作、小学館『週刊少年サンデー』掲載(1991年4月~1999年9月)

 悪霊を除霊し、霊的被害を未然に食い止める国家資格ゴーストスィーパー。そんな彼らの一員、美神令子(みかみ・れいこ)は、ボディコンスーツに包んだその美貌と実力、そしてお金への執着で有名な女性スィーパーだ。アルバイトでアシスタントをしている高校生、横島忠夫(よこしま・ただお)は、時給250円という超薄給ながら、美神の色香につられて足しげく事務所に通っている。
 金銭欲と色欲のおもむくままに生きる2人には、依頼人はおろか悪霊まで大困惑。唯一のブレーキ役で元人柱の幽霊、おキヌちゃんも、毎度2人の勢いに押されっぱなしだ。そんな彼らやゴーストスィーパー仲間の仕事と日常をドタバタコメディ時々シリアスに描く物語…だったが、いつしか人間界と冥界全体を巻き込んだ事件が巻き起こされ、彼らはその渦中に身を投じていく。

欲望≒希望
 タイトルからするとバブリーでセレブな活躍をする美神が主人公ということになりそうだが、実質的には、妄想の塊で極貧生活に耐えるアルバイト助手、横島とのダブル主人公と捉えてよいだろう。悪霊とのバトル中だろうが構わず巻き起こる、美神の守銭奴っぷり、横島の煩悩まみれっぷり、それに加えて美人揃いの上に曲者揃いの他のゴーストスィーパー達によるドタバタが本作最大の魅力だろう。
 そんなシーンでセクハラ的なモーションをかましては痛い目にあう横島がよく見せる笑い泣きの表情は、まさに青年の煩悩と悲哀を体現していて悲しいやら可笑しいやらで、複雑な笑いが込み上げてくる。高橋留美子調の擬音表現が、そんなコミカルな空気を更に高めていると云えるだろう。
 幾度ものピンチに、それでもそれぞれの現世的な欲望を捨てない彼らをみるにつけ、欲望と希望はニアイコールなのだと切に感じる。『ハーメルンのバイオリン弾き』(第75夜)にも通じる、こんなにも生への尽きない意志に溢れた人間たちが相手では、並の悪霊や悪魔では敵わないのも当然なのだ。

死を想う
 それでも、幽霊=死者を扱うゆえの厳粛さを、本作は隠し持っている。生前、人身御供として山に捧げられたという幽霊少女おキヌのエピソードを始めとして、軽妙なドタバタコメディの向こう側に隠された、人間のひたむきさが描かれるシーンは数多い。普段はがめつい美神も、下半身の欲求に正直な横島も、追い詰められた最後の最後で見せる姿は誇り高い。もっとも、すぐに元通りになってしまうけれど(作者はとっても照れ屋さんとみた)。極めてひねくれた形ではあるが、やはり本作は人間讃歌と云わなければならないだろう。
 特に横島には心が震わされる。何だかんだいっても、美神はプロのゴーストスィーパーで、悪霊や悪魔との闘いにおける心構えも覚悟もできている(そうした職業倫理的な部分も見所ではある)。一方で一介の高校生にすぎない横島には何もない。
 そんな彼が、いささか動機不純ながらゴーストスィーパーのアシスタントをこなし、少しずつでも成長していく姿は、『ダイの大冒険』(第90夜)の魔法使いポップと同じように読者を励ますだろう。ドタバタギャグアクション、人間賛歌といった側面だけでなく、そうした意味でもお勧めできる作品だ。

*書誌情報*
☆通常版…新書判(17.8 x 11.4cm)、全39巻。電子書籍化済み(紙媒体は絶版)。

☆ワイド版…B6判(17.8 x 12.8cm)、全20巻。絶版。

☆コンビニ版…B6判(18 x 12.8cm)、全14巻。絶版。

☆文庫版…文庫判(15.4 x 10.6cm)、全23巻。各巻に作者による各人物へのコメント、「寄稿エッセイ&イラストレーション」あり。

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第94夜 陰惨な謎に挑むのは1人?2人?…『人形草子あやつり左近』

「人形遣いは人間遣い/腹話術は読心術/真似るのは声色だけでなく内なる声」 『人形草子あやつり左近』写楽麿 原作、小畑健 漫画、集英社『週刊少年ジャンプ増刊』→『週刊少年ジャンプ』掲載(1995年4月[読切掲載]~1996年4月)  引っ込み思案で気弱な性格の橘左近……

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第93夜 仮想ロボバトルと男の娘の惑い…『バーコードファイター』

「そのゴーグルを通して見た物は、ゲーム世界での現実なの。/烈ちゃんは今、パイロットスーツに身を包んで愛機のコクピットに座る……、/バーコードファイターなのヨ!」 『バーコードファイター』小野敏洋 作、小学館『月刊コロコロコミック』掲載(1992年3月~1994年6月……

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第83夜 縁(えにし)の物語は出雲に始まり出雲に果つ…『八雲立つ』

「“気”よ…!/大いなる気よ…!!/我に応えよ!/我に依り憑きてその力を貸せ!!」 『八雲立つ』樹なつみ 作、白泉社『LaLa』掲載(1992年5月~2002年7月)  東京の大学生、七地健生(ななち・たけお)は、先輩に押し付けられた劇団の舞台取材のアルバイトとし……

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第64夜 人と妖(バケモノ)とが綾なす陰陽の絵巻…『うしおととら』

「行っくぞーっ、とらーっ!」「うるっせーんだよ、うしおーっ!!」 『うしおととら』藤田和日郎 作、小学館『週刊少年サンデー』掲載(1990年1月~1996年10月)  寺に住む少年、蒼月潮(あおつき・うしお)は、住職の父に虫干しを命じられた蔵の地下で、古びた槍に張……

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第43夜 視線の先の異形達は、己の異形の合わせ鏡…『ホムンクルス』

「波は落ぢづぐなあ……/波は俺(わぁ)を映(うづ)さねえ。」 『ホムンクルス』山本英夫 作、小学館『ビッグコミックスピリッツ』掲載(2003年4月~2011年3月)  新宿西口から程近い場所に建つ一流ホテル。道路を挟んだ向かいの公園には、ホームレスの暮らすテント村……

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第39夜 化物と人の野蛮な高貴さに酔いしれろ…『HELLSING』

「私にとって日の光は大敵ではない/大嫌いなだけだ」 『HELLSING』平野耕太 作、少年画報社)『ヤングキングアワーズ』掲載(1997年5月~2008年9月)  大英帝国王立国教騎士団。通称ヘルシング機関は、永くイギリスと王室を怪物――ことに吸血鬼――から守護し……

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第30夜 霊とも敵とも共に歩む姿こそが強さ…『シャーマンキング』

「そのなんでも知ってる“精霊の王”って奴と友達になれば!!/なんの苦労もしないで毎日のんびり楽に暮らせるんだろ…!!」「ドバカモン」 『シャーマンキング』武井宏之 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1998年7月~2004年10月)→完全版にて完結(2009年4月) ……

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第27夜 宵闇に燦然と燃えさかる“人間の姿”…『からくりサーカス』

「何かあったら心で考えろ…/今はどうするべきか…ってな。/そうして…笑うべきだとわかった時は…/泣くべきじゃないぜ。」 『からくりサーカス』藤田和日郎 作、小学館『週刊少年サンデー』掲載(1997年7月~2006年5月)  両親の都合で中国で暮らしていた青年、加藤……

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第20夜 闘いに臨む覚悟と、その果ての慈悲…『怪奇警察サイポリス』

「汝の魂に、幸いあれ…!」 『怪奇警察サイポリス』上山道郎 作、小学館『月刊コロコロコミック』掲載(1991年12月~1995年6月)  新聞部の部長を務める中学2年生、鬼塚勇気(おにづか・ゆうき)。同級生の新聞部員、三原千夏(みはら・ちなつ)に押されつつも部を取……

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