【随想】あの頃の未来――2010年代が舞台の漫画を思う
2014/08/03
早いもので2014年も1週間が過ぎようとしている。いや本当に早い。
『ジョジョの奇妙な冒険』第5部(100夜100漫第21夜)は作中の現実世界が2001年を迎えたことについての康一君の感慨とともに始まっているわけですが、その時に彼がアーサー・C・クラークとスタンリー・キューブリックによる名作SF『2001年宇宙の旅』を思い起こしたのと同じような気持ちで、自分もかつてこの2010年代という“その時点においての近未来”を舞台にした創作に思いを馳せてみよう。
といっても『2001年』の続編『2010年宇宙の旅』については、「駄作だ」という父の感想を鵜呑みにして観ていなかったりするので、やはりもっぱら漫画作品について考えてみる。…が、“なんとなく未来のお話”というのはいっぱいある一方、明確に2010年代が舞台であると宣言している作品というのは意外と少ない。
安直に思い当たるのが、まずは大友克洋の『AKIRA』(劇中2019年)、貞本義行(というか庵野秀明とGAINAX)による『新世紀エヴァンゲリオン』(同じく2015年)の2作かな。大破壊の後に超現代的な都市が築かれるところとか、人と機械のボーダーレス化とか、アニメーションが有名だったりと、共通点も多いな。
…早くもネタ切れかと思いきや、ちょっと調べてみたところ楳図かずお『漂流教室』(100夜100漫第18夜)が2012年を舞台にしているというまさかの事実(作中に出てくる金環日食の日時を調べることで確定できるそうです。正確には2012年5月21日。日本の広範囲で日食が見られるということで、朝から空を眺めた憶えのある方もいるでしょう)! なんてことだ。当時の作者による想像の範疇では、もうとっくに、人間社会は滅んでいたのか…。
なんだか少し、暗い気持ちになった。逆境をそれでも生きていく人間の強さを描くのに、未来は荒廃している方が好都合なのは『北斗の拳』を読んでもわかることだけど、2014年という現実を生きている身としては、もうちょっとこう、まろやかな未来像もあっていいのでは? と思ったり。
というわけでもう少し調べる&思い出す…。うん、花沢健吾『ルサンチマン』(2015年)があった。手放しで明るい漫画でもないけれど、世界崩壊よりは、バーチャルの世界で愛を探す方がまだ明るいかな。
欲を云えばゆうきまさみ(というかヘッドギア)の『機動警察パトレイバー』(1998年、100夜100漫第45夜)の延長のような2010年代もあると嬉しいんだけど(そういえば今度の実写版は2013年が舞台らしい)。年代をシビアに設定することは、それだけリアル志向の作品になる、ということなのかもしれないですね。
というところで、今夜はこれまで。