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第110夜 少年よ、選択肢を切り抜けろ…『Doする!?パラダイス

      2013/10/03

「ど ど ど どうするよ/オレ~~~……!?」


Doする!?パラダイス(1) (講談社コミックスデラックス コミックボンボン)

『Doする!?パラダイス』玉越博幸 作、講談社『コミックボンボン』掲載(2005年8月~2006年10月)

 クラスのアイドル、腐れ縁の幼馴染、ちょっと近寄り難かったはずの委員長……。そんな彼女たちに、気付けば少しだけ大人になり始めた少年達は心惹かれる。
 もっと彼女に近づきたい。そんな思いとは裏腹に、上手くいかないのが現実というものだったり。ファーストコンタクトはどんな態度で? トラブった時の対応はどうやって? そして、一世一代の告白はいつどこで?
 連続する「どうする?」を切り抜けて、少年達の想いは成就するのか。それぞれの恋模様をオムニバスで描く、ほろ苦くも甘酸っぱい恋愛ストーリー。

ゲームブック的選択肢
 ローティーン(定義的には13~14歳を指すらしい)の頃というのは、不思議だ。異性と付き合うことにとても羞恥を感じるようで、他人に少しでも恋の予感が兆しただけで大々的に冷やかしてしまう。その一方で興味しんしんでもあって、つい「彼女(彼氏)が欲しい」と口走る。自分が現役ローティーンだった頃も、人がちょっと同級生と話しただけで冷やかしていた男子が、知らないうちに女子と付き合っていて、その変わり身の早さに驚いたし腹も立った。
 この漫画を知った時、その時の感情を思い出して少し複雑な気持ちだった。加えて、掲載誌は『ボンボン』である。
 自分の知る『ボンボン』は、ライバル誌『コロコロコミック』より少し色っぽい描写が多いものの、SDガンダムやテレビゲームの漫画化など、小学校高学年の男子を対象としたホビー系の漫画がメインの雑誌で、だから本作のような恋愛を主題にした連載があったことに衝撃を受けた(どうも2006年辺りに大きな路線変更があったようだ)。
 そんなわけで、この漫画には二重に意表を突かれたのだが、かつて『少年マガジン』で同路線の『BOYS BE…』を連載していた作者だけあって、安定感のある作風だ。少年誌らしからぬ綺麗さを全面に押し出した作画で、ローティーン男子目線による、女の子への恋慕から恋の成就までを1話完結で描いている。
 つまり形式的には初期の『BOYS BE…』(後期は続き物として展開)を踏襲しているのだが、毎話「どうする?」の言葉とともに幾つかの“選択肢”が提示され、次ページで選択の結果が示されるという趣向が為されている(大抵の場合、正解は1つだけで他の選択肢を選ぶと即座にバッドエンドを迎えるのだが)。
 恋愛で“選択肢”というと“ギャルゲー”を連想するが、本作のそれは、むしろ懐かしのゲームブックを髣髴とさせる。漫画では中々お眼にかかることのない、この“選択肢”の大半は他愛ないものだが、「告白は電話か直接か」など、ふと胸を突く二択があり侮れない。それは、読む者が現実で感じた、切実な「どうする?」を脳裏に浮かばせるからなのだろう。

放課後の彼ら
 それにしても、登場する男子たちの日常描写がいい。ローティーン男子の恋愛というのも稀有なテーマだと思うが、自分としては、このローティーン男子の日常こそが、本作の最も特徴的な要素ではないかと思う。
 ローティーン男子が漫画で描かれる場合、それは(バトルにせよスポーツにせよホビーにせよ)勝負の連続だったり、異世界からの来訪者と一緒に暮らして相同に巻き込まれたりで、普段の彼らが紙幅を割いて描かれることはあまりない(これが少女だったり、男子でも他の年代であれば、少女漫画や“日常系”作品によってカバーされるところが大きいだろうと思う)。
 一方この漫画は、多少SF・オカルト的要素が入ることもあるが、大体のエピソードにおいて普通の恋愛を描いている。それによって浮かび上がってくるのは、学校で委員会活動をしたり、部活で補欠だったり、塾に行ったり、ちょっと人に言えない趣味があったりという、等身大の男子の姿なのだ。それでも惚れた女子を前に、自分にできる精一杯を振り絞る様は格好いい。自分が“現役”の頃に読んでいたら、どんな感想を抱いたのか気になる一作だ。

*書誌情報*
☆通常版のみ…新書判(16.8 x 11.4cm)、全3巻。各話ヒロインプロフィール記載あり。同じ作者の『ガチャガチャ』のヒロイン桜庭ユリカの塗り絵あり(2巻)。

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