「剣は凶器 剣術は殺人術/どんな綺麗事やお題目を口にしても/それが真実――けれども拙者はそんな真実よりも、薫殿の言う甘っちょろい戯れ言の方が好きでござるよ」 『るろうに剣心』和月伸宏 作、集英社『週刊少年ジャンプ』掲載(1994年4月~1999年9月) 明治初期……
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第49夜 愛のため正義のため、少年達は神々に挑む…『聖闘士星矢』
「いくぞ!!/地上の愛と正義のために!!/命と魂のすべてをそそぎ込んで!!/今こそ燃えろ黄金の小宇宙よ!!/この暗黒の世界に…/一条の光明を!!」

『聖闘士星矢』車田正美 作、集英社『週刊少年ジャンプ』→『Vジャンプ』(完結編のみ)掲載(1985年12月~1990年12月)
遠い神話の時代より、星座の加護のもと女神アテナに仕え、世が乱れる時には自らの肉体のみでこれを治めて愛と正義を示してきた戦士たち、聖闘士(セイント)。天涯孤独の少年、星矢(セイヤ)もまた、聖闘士となるべく幼い頃から厳しい修行の日々を過ごし、晴れて天馬星座(ペガサス)の青銅(ブロンズ)聖闘士となる。
正体の知れぬ陰謀による聖闘士同士の諍いを経て、星矢は竜星座(ドラゴン)の紫龍(シリュウ)、白鳥星座(キグナス)の氷河(ヒョウガ)、アンドロメダ星座の瞬(シュン)、鳳凰星座(フェニックス)の一輝(イッキ)たち青銅聖闘士と固い絆で結ばれる。やがて戦いは、アテナと敵対し、地上を我が物にしようと考える神々との戦いへと局面を移していく――。
力の発露の正統性としての神話
前にも少し書いた(『宙のまにまに』参照)が、自分は幼少時から星空を見るのが好きで、子ども向けの星座の本などもけっこう持っていたのだが、それが当時テレビアニメが放映されていた本作に影響されたのか、それともそれ以前から興味があったのか定かではない。それはともかく、小学校に入った年あたりは本作は大ブームといっていい人気ぶりだった。自分も本作へはアニメから入り、原作をしっかりと読んだのは10代も後半になってからである。
新鮮だったのは、聖闘士が繰り出す技や、戦闘装甲である聖衣(クロス)の多くに、しっかりとしたモチーフが付与されていることであった。主人公である星矢の技こそ連載初頭に決まっていたためか、その傾向は薄いが、仲間の聖闘士たちの技や装備には、「王女アンドロメダが岩場に繋がれていた鎖を用いた攻撃」だとか「廬山(ろざん)の大瀑布に打たれ続けたため全聖衣中最硬度」といった、“その力を持つに至った経緯”がある。前半では敵役として出てくる白銀(シルバー)や黄金(ゴールド)の聖闘士、後に戦うことになる聖闘士以外の闘士たちも、戦いの最中にその手を休め、丁寧にその力が何に根源を持ち、それを行使する闘士としての正統性をしっかりと教えてくれる。このくだりを皮肉ではなく本心として、非常に面白く感じた。古の戦士や武士同士の戦いでも、同じように自分の振るう武器の来歴など披露しあって、それから刃を交えるといった、野蛮にして高貴な作法があったかもしれないと空想させてくれる。
常時の人間<機械<神<瞬間の人間
自分は、上の見出しのような不等式を信じている。本作のような人間賛歌は、これを裏付け、神と人間との関係を考える手がかりを示してくれるように思う。
中盤以降、少年たちは神々との戦いに身を投じていく。常識的には、定義的に神に人間が敵う道理はない。実際、作中でも神の名を冠する存在は圧倒的な力で星矢たちを苦しめる。しかし、「変化し得る」という、ただその一点において、人間は神を凌駕する。少年達が苦難をのり超えて成長し、それまで無かった絆が人々の間に芽生える時、一瞬であるにせよ神をたじろがせることができる。本作の、多く熱血漫画を手がけてきた作者による台詞回しには、読者にそれを信じさせてくれる力がある。
ギリシア神話を中心とした世界観を説明する広範な設定と、人間の可能性を信じさせてくれる展開は、少年漫画の1つの王道と云えるだろう。
*書誌情報*
☆通常版…新書判(17.4 x 11.4cm)、全28巻。電子書籍化済み(紙媒体は絶版)。
☆愛蔵版…四六判変形(19 x 13.8cm)、全15巻。絶版。
☆文庫版…文庫判(15.2 x 10.7cm)、全15巻。
☆完全版…A5判(21 x 14.6cm)、全15巻。連載時カラー原稿再現。絶版。
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